インフレを必要以上に煽る理由は?:❸インフレの元々の原因を追及していない
はじめに
”3歳児神話”が誤りだったと分かった理由をご存知ですか?私が妊娠中にいろいろ調べていた内容(15年以上前)ですので、今は再び、”誤りが誤りだった”なんて可能性もありますが。
まず、昔信じられていた”3歳児神話”というのは、子どもが3歳になるまでは母親が子どもと一緒に過ごす方が良いというもので、子どもが小さいうちに母親が仕事をしていると、子どもに悪影響があるというものです。ところが、その研究結果を出したデータを、もう少し丁寧に見ていくと、母親が働いている背景に”貧困”があった場合に、影響があったということがわかったというものでした。
ファウチ博士のように”科学は絶対”とか、”数字は嘘つかない”という人もいますが、データを解釈する際には主観が入るものですし、そのデータ自体がその時々の”最高の技術”で算出されたに過ぎないものですから、”最高の技術”が更新されれば、全然違う結果が出る可能性もゼロではないかと思います。
”だから、科学は無意味”なんてことを言いたいわけではありません。
だからこそ、自由な議論が重要であり、その自由な議論を検閲し、政府が”科学的な事実”と決めたことのみを正解とするのは、おかしな話です。ましてやその検閲に科学者が賛成するようなことは、”科学”の視点からも、非生産性で、無意味なことだ思います。
というわけで、今回が3回目となる米国インフレに関してのコラムは、あくまで自由な議論の中の1つの意見にすぎず、現在のインフレを否定するものではありません。急激なインフレは事実です。とはいえ、本当のインフレ原因に触れることなく、不要に煽り続けることで、インフレをより悪化させようとする報道や政府のあり方に疑問を呈するものです。
ガソリン価格5年間チャート
下記は2017年5月から現在に至る前の5年間のガソリン価格のチャートです。GasBuddyが提供しているチャートアプリの都合上、3都市分の同時表示が可能ですので、ガソリン価格の報道で取り上げられることの多いカリフォルニア州と、私の地元のテキサス州、それにアメリカの平均のデータを比較しています。
青:アメリカ平均
赤:カリフォルニア州平均
緑:テキサス州平均
報道による不要な煽り
まず、ここでも触れさせていただきたいのが(前2回のコラムでも触れた点ですが)、コロナ開始後にガソリン価格は過去5年間で最低まで急落していたという点です。インフレ報道で賑わった昨年(2021年)の11月の価格をみると、その1年前の2019年に比べ、ガソリン価格が回復していない状況です。物価について解説するときに、前年度比較するのは通常の方法ですが、その前年の数字がコロナの影響を受け、通常ではないものであったということには触れるべきかと思います。実際、観光分野等の報道では、「2020年よりも○%増加したが、2019年のレベルにまでは回復していない・・・」のような説明をしているものもありました。
インフレは事実です。とはいえ、2020年のデータというものが、世界的な異常事態が起こった年のものであることに触れず、2021年のデータを前年度比較により評価するのは、適切な分析といえるのでしょうか?
”インフレは需要が供給を上回ることで起こる現象”であることを鑑みれば、2021年秋ごろに行われていた報道は、不要な煽りでしかないように思います。実際、2021年の11月15日頃、ガソリン価格は一度ピークアウトしています。
5年間の価格の推移から推測できること
2017年5月から現在に至るまでの、全米とテキサス州、カリフォルニア州の平均ガソリン価格を見てみると、大方、同じような波の形が描かれています。価格差はあるにせよ、ガソリン価格は、アメリカ全土に影響を与えるような要素により、上下しているという推測ができます。
ただし、全米平均とカリフォルニア州、全米平均とテキサス州の価格差を、グラフ開始の2017年5月と、現在時点で比べると、前者の方が大幅に広がっています。
アメリカのガソリン価格について、価格を変動する要素としては、全土に影響を与えるような大きな要因がありつつも、州ごとに受ける影響が異なる(もしくは、全国的な要因に加え、州ごとの要因による影響も多少反映される)という風に考えられます。
ガソリン価格上昇、細かく見ると・・・
ガソリン価格の高騰化理由として、2022年5月初め頃の報道では、その要因を1)コロナ対策のための制限緩和により急増した需要に、再開されたばかりの経済:供給が追いついていない、2)ウ国危機による影響とされています。ざっくりいえばそうかもしれません。しかし、細かく見ていくと、この分析に?が飛び出します。
今回はアメリカの平均ガソリン価格で見ていきたいと思います。
まず、ガソリン価格が5年間で最低となった2020年4月18日まで遡ります。コロナ政策は州によって異なるとはいえ、この頃は、制限が他州に比べて緩めのテキサス州でもエッセンシャルワーカー(コロナ治療に関わる業種、最低限の生活を支える業種、スーパー、運輸等)以外は自宅勤務か、一時休暇対応になっていました。もっと厳しいロックダウン政策を行なっていた州はたくさんありましたので、基本的に自動車での移動量が激減していた時期です。工場もエッセンシャルではないとされる業種は、閉鎖されていたようでした。
ガソリン価格はその後、2ドルを少し超えたくらいまで回復し、低い水準で推移しています。最初の変化が見られたのは2020年11月末、グラフに”A”と記載された部分です。A〜Gはグラフの動き(角度)に変化があったところを起点としています。A:大統領選挙はB:新政権誕生に引き継がれた出来事ですので、AはBまでで終了していますが、ガソリン価格に影響を与えたと思われる出来事の影響が今日に続いていると考えられる場合、その終点は現在としています。
AからFまでの期間、ガソリン価格に影響がありそうなものをピックアップしてみました。考察しながら、まとめていったものですので、細かいことは気にせず、結論にという方は、”Key Takaways”のところへ飛んでください。
A:2020年11月頃
大統領選挙(バイデン政権誕生)
新政権の政策より予想される石油価格の上昇を見越した対応が始まる
*アメリカは日本よりも、政治により経済が動くため(と、考えられているため)、新政権が誕生しそうな局面では、政策転向による悪影響を避けるための行動を早めに取る人が多いようです。この期間のガソリン価格の上昇は、バイデン政権になれば石油価格は確実に上がると考えた層が価格上昇の要因になっていると考えられます。
B:2021年1月21日
バイデン政権発足。
就任当日に30くらいの大統領令発令。”キーストーンXL”の許可を取り消したり等、基本的には、トランプ政権が力を入れていた政策を全て中止する形。
*政策をひっくり返すこと自体は、トランプ政権時代も行われたことで、オバマ政権に優遇されていた外国太陽光パネル会社(主に中国)が大打撃を受けています。今回は、オバマ政権が中止させ、トランプ政権が復活(許可)させていた、カナダと米国を結ぶ原油パイプライン建設プロジェクト”キーストーンXL”を、バイデン政権が再び禁止しました。
バイデン政権に限らず、世界的に共産系政権は、太陽光をはじめとする自然エネルギー利権と密な関係にあり、必然的に化石燃料産業は縮小される方向にあります。余談ですが、この利権の中には、日本のエンジンにどうしても勝てないため、電気自動車へのゲームチェンジを願う自動車業界も入っていると言われています。
実際のところ、バイデン政権の石油関連政策は、環境問題を考慮したものではありません。というのも、国連が「世界の気候が危機にある」と発表した直後、バイデン 政権はオペック・プラスに石油増産を要請しています。それにこのパイプラン建設の目的は、そもそもタンカートラックを減らすという環境への配慮があったはずですが、パイプライン を止めることにより、不足する分は、タンカートラックを増やして運ぶ方向にあるようです。
C:2021年5月頃
バイデン政権(CDC、ファウチ博士)、”ワクチン接種完了者から元の日常が戻る”キャンペーンを実施。
コロナ規制・州ごとに(段階的)緩和=経済再開。公衆衛生政策は、州単位に行われます。最も早かったテキサス州がコロナ規制緩和を行った(経済を再開させた)のが2021年3月半ば。政府のワクチン政策を受け、多くの州が規制緩和に動いた。
夏休み開始時期にあたるため、2021年春休みと同様、TSA通過量は急増。
長距離移動車数が増加
*上記は別のコラムで使った表です。TSA通過量は、空港で検査場を通過した数量で、飛行機での移動量を調べるときに使われるデータです。2021年の春休み期間にあたる3月頃から、TSA通過量が一気に増加しています。同年5月にはワクチン接種完了者は、元通りの生活ができるキャンペーンが行われていました。
ここでもう一度、先ほどのグラフを見ていただきたいのは、Cの期間、ガソリン価格は上昇していますが、他の期間に比べれば緩やかであるという点です。
現在、報道では、ガソリン価格の上昇やインフレの原因の1つを、「コロナが落ち着いたことを受けて強くなった需要に対して、供給が追いつかない」と説明しています。もし、その説明が正しければ、この期間にもう少し急な上昇をしていたはずです。というのも、この時期が最も新規感染者数が減少していた時期であり、政権が”ワクチンを打ちさえすれば、コロナ前に戻る”というキャンペーンを行なっていたからです。
WHO同様、バイデン政権のコロナ政策が失敗したことは上記のグラフからも明らかですが、インフレ政策についても、課題が適切に理解されていないのではないか?という疑念があります。
2020年4月のガソリン価格の急落には、コロナ政策が関係しているかと思います。しかし、新規感染者数が増減しているグラフと、ガソリン価格のそれと比べると、その後のデルタ株やオミクロン株の猛威(?)がガソリン価格にはあまり関係がないように思います。これはあくまで私の感想レベルのことですが。
D:2021年9月〜11月
8月〜9月年に始まる新学年より、基本的に対面授業(通学)が再開。州により事情が異なるものの、車社会のアメリカは、自動車通学・通勤が多いため、学校が通常に戻ったことで、ガソリン消費が大量に増加。
大量のコンテナ船が入港待ちになる等、アメリカ西海岸での貨物混雑が深刻化。悪影響が東海岸にも出てきたと言われ始めた頃。
メディアのインフレ報道が加熱していた時期。
*ここで注目したいのは、インフレ報道が加熱していた11月半ばごろには一度、ピークアウトしていることです。11月末のサンクスギビングとその後のブラックフライデーは消費量も移動量も、年間で最も加熱するはず時期の1つです。にもかかわらず、わずかではあるとはいえ、ガソリン価格が下降しています。この辺りもメディアの報道に違和感があった理由の1つです。
E:2021年12月〜
クリスマス休暇付近は、移動が増加する時期だが、過去のグラフをみると、急増していない年もあり、クリスマス休暇がガソリン価格に与える影響が必ずあるとはいえない状況(ただし、コロナ後、初のクリスマスではある)。
年明け後、バイデン政権が「露がウ国を侵攻する」という発言をひたすら繰り返していた。1月末には在露米国人外交官に帰国命令があり、露関連の株価やFXには影響があったという説も。
アメリカ東部では1月末、急速に発達した低気圧の影響で、ここ数年間で最大級の暴風雪に。
「連邦政府のサステナビリティ活動による米国のクリーンエネルギー産業と雇用の促進」に関する大統領令第 14057 号に署名(12 月 8 日)。
北京オリンピック前、ジェノサイドとオリンピック参加をめぐり、米中対立の悪化。
インフレ率(CPI)が過去40年間で最高に。
ワクチン接種義務化をめぐる闘争と、義務化による労働力不足問題に陥る業界も。フリーダムコンベイによる物流のストップ。
*11月半ばにピークアウトしていたガソリン価格がなぜこの期間に再び上昇したのか、関係のありそうなことを上に羅列してみましたが、正直なところ、あまりピンときません。そのためもう少し詳しい日にちを見てみようと、グラフを拡大してみると、2021年の12月31日くらいから徐々に上がり始めているようです。
12月25日−31日のニュースを拾ってみてみたのですが、上記以外では「マックスウェル(エプスタインのパートナー)が〜」「100歳目前のベティ・ホワイトが〜」という話題が目立つのですが、これらはあまり関係ないかと・・・。
1つ、リストを見ていて「あったねぇ」と思ったのが、クリマス前後のニュース番組で視聴者が現大統領とオンラインで会話するような(番組の詳細を忘れてしまったのですが)番組があったのですが、この中でこの視聴者が「Let's Go Brandon(2021年に事故的に流行った”F○ck You B○den”を意味する、誰もが知っている隠語)」を本人を前に発言した出来事。この頃には、すでに過去にあり得ないくらい政権”不”支持率の高さになっていたかと思います。
G:2022年2月〜
ウクライナ危機
露からの禁輸措置等の政策導入により、短期間に価格が急上昇。
中国ゼロコロナ政策による、製造業・物流の混乱
*ここはご存知の通りです。
Key Takeaways
ガソリン価格の動きを細かく見ていくと、上昇したきっかけとなったのには、下記のような要因が考えられます。ただし、Eに関しては、自信を持って言えるような出来事は見つかりませんでした。
A:大統領選
B:新政権誕生
C:コロナ規制の緩和
D:メディアのインフレ報道過熱
E:ワクチン義務化に伴う人手不足と人件費上昇、露のウ国侵攻を煽る現政権等々
F:ウ国危機
ガソリン価格の急騰の原因
短期間に急激な上昇させる要因となった、ウ国危機の影響は大きい
報道で触れられていないが、バイデン政権誕生はガソリン価高騰の大きな要因
価格上昇幅をみると、バイデン政権とウ国危機のインパクトは同じくらい
長期的な視点で見れば、バイデン政権誕生が与えたインパクトの方がウ国危機よりも大きい
報道では、「インフレを抑えきれないバイデン政権に責任追求する声が〜」とか「このままインフレが続けば中間選挙が〜」とされています。この報道も厳密に言えば、適切な表現ではないと思います。現政権の責任は、”インフレを抑えきれない”ではなく、”インフレを起こした”ことにあるからです。
コロナやウ国危機等、インフレ要因があたかも避けることができない外的な要因であるような言い方がされていますが、消極的な言い方をすれば、「現政権の対応のまずさ」、厳しい言い方をすれば、「オバマ政権から抱えてきた米国共産党の失策ーー”危険なバイオ研究を海外で継続””ウ国における米共産党利権の拡大”ーーの悪影響が今になって出てきてしまったに過ぎない」のが実際のところだと思います。
「こんな分析をするのは、トランプ・サポーターだからだろう」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私は、積極的なトランプ・サポーターというわけではなく、トランプ政権時代は経済的にうまくいっていたため、それはぜひ続いて欲しいと思っていました。そして、バイデン政権になれば、トランプ政権時代の政策をひっくり返すことは目に見えていたことでしたので、こうなることは明らかでした。だから、トランプ大統領を応援したわけで・・・。
ガソリン価格急騰の責任は、政権にあります。
というお話を次の章でシェアさせていただきたいと思います。
ガソリン価格、”引き”で眺めてわかる、最大の原因
次に、もっと引いたところから、ガソリン価格を眺めてみます。2006年から現在に至るまでのガソリン価格です。
グラフ下のX軸に、その期間の政権を入れてみました。環境保護活動家を支援者に抱え、環境関連利権を持つ民主党は、環境保護を優先するため、石油産業に不利な政策を行います。一方、石油産業を支援者に抱える共和党は、環境よりも安定した石油供給のための政策を優先させます。また、グローバリスト政策を行う民主党と、エネルギー資源を国防政策の1つと考える共和党では、石油政策についての考え方が全く異なります。
というわけで、これはある意味当たり前の結果ですが、グラフでも、ガソリン価格は政策の影響を受けることが確認できます。
重要なことは、アメリカの場合、ガソリン価格をめぐる政策は日本が行うものと立場が全く異なります。それはアメリカの場合・・・
化石燃料は枯渇したわけではなく、地下にはあり、掘削するかしないかだけ
からです。
製造や輸送等、様々な場面で必要とされる、ガソリンをはじめとする燃料の価格は、物価に大きな影響があります。本気でインフレを止めようとするならば、現政権が大統領令でひっくり返した政策を一旦白紙に戻せば、良いだけではないでしょうか。
それを行わない現政権は、インフレを止める気はないのではないのではないでしょうか。大きな政府を作っていくためには、現状がデストピアである方が人々の賛同を得やすいからではないか?と、邪推してしまいます。報道も、社会不安がある方が人々の注目を得やすいですしね。
先日、トランプ大統領が「もし、自分が大統領だったらガソリン価格は、2ドル台をキープさせることができた」という発言をしたとのことでした。変に露を煽ることもなかったでしょうから、おそらくウ国危機も起きなかったはずで、高騰しても、2ドル台に収まったかもしれません。
・・・というわけで、インフレの件で、現政権を批判するのであれば、インフレが止められないことではなく、止める気がないことを問題にしなければ、インフレ率を健全なレベルに戻すことはできないと思います。