【制作日記】左ききのエレンHYPE 第一話
本日からHYPE連載スタートしました。
ツイッタートレンドにも入り、出演権もめっちゃ買って頂き(また数量限定で追加販売するかも知れません。その時はnoteやツイッターで事前に告知しますのでフォローしておいて下さい。)好調な滑り出しな気がしてます。本当にありがとうございます…!!
映画のDVDについてるオーディオコメンタリーが好きで、たまに勝手にツイッターなどで「ここを描いてる時は、こういう事を考えてた」みたいな「セルフ解説」する事があったんですが、誰でもご覧頂ける場所であんまり言うとネタバレとか、そもそも作者の解説をノイズと感じる方もいらっしゃるかと思うので、noteで毎話まとめて書いた方がいいかもと。
ですので、今回からなるべく毎話、ゆるくやろうと思います。ご興味がある方は、ぜひご覧下さい!
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1P目
「天才になれなかった全ての人へ」の文言。これ入れるか地味に悩みました。実は第一部の連載で入ってないんですよね。これ入ってるのって書籍だけで。cakes連載の方は、本編の上にあるあらすじで入れてただけ。そもそもこの文言は、第一部の第一話を公開する直前に「誰に読んで欲しいか」って考えて、思いついた言葉でした。読者の方も、よくこの言葉を使って下さるので、広告コピー的な言い方をするなら「よく流通した言葉」と言えます。なので、これはエレンの作品コピーとして機能していると考え、第二部の冒頭に改めて入れた次第です。
2P目
カツ丼です。何か突拍子も無い、想像していなかった入り方を考えていました。とにかく今回は「第一部の第一話をなぞらえて、その変化を出す」が裏テーマだったので、光一がハッと会社で目を覚ますシーンもいいかなって思ったんですが、この時の光一ってむやみに徹夜しないし、もうエレンの夢を見ない時代に入ってしまっているなと思い。ですので「エレンの夢」は1話の後半、フラッシュバックする形で入れました。皮肉なもので、あの頃は実際の夢に見ていたのに、現代では白昼夢でしかエレンを見る事は無い。それも後ろ姿で。
ぼくの好みで「どこまで物語を遠くに飛ばせるか」って発想があるんですが(時系列を数十年飛ばすのも、その性癖から)カツ丼は突拍子もなくていいなって思いました。あと、お箸の文字。これはnifuniさんが考察してくれた通りです。第一部と第二部の間を「はし」渡ししてくれたのは、nifuniさん。
3p目
ここから本編って感じですね。まず最初は光一をドンと出したいと。でも、ここも裏切りが欲しいというか、普通に働いてる光一じゃ退屈なので、事情聴取のシーンにしました(笑)これも好みの話で「なんでこうなった?」から始めるのが好き。海外ドラマ「ブレイキングバッド」が好む手法です。あと余談も余談ですが、ここで初登場する白髪の刑事は、描いてる途中に「冬月に似過ぎてる」って思って、慌てて前髪を足しました(笑)おっさん描き分けるの難しい…。冬月くらいの準レギュラーキャラは、手癖で描くと描きやすい造形に慣らされて行ってしまうい、結果似てきてしまうので、準レギュラーこそ、久々に描く時は必ず初登場の時を見直して描きます。そうそう、この顔だって。
4P目
この顔に寄っていく手法が好きで。エレンもいわゆる「顔漫画(画力が足りない場合に陥る顔のアップばかりの漫画)」って呼ばれる事も多いんですが、ぼくは顔漫画でOKタイプで。それも映画とかが好きなので、映画って別に役者に寄るシーン良いじゃ無いですか。演技が問われる手法なので、その点で難易度は高いと思う。ぼくは逆に、ここぞと言う時に顔アップを逃げる表現が好きでは無いです。顔漫画って案外ムズイよって思う。で、この顔に寄っていく手法は「ケーンバーンズ」って呼ばれてて、元々映画監督の名前なんですが、一番有名なのはimovieのエフェクト名かな。じわっと寄っていくエフェクト。この監督が好んだ手法が語源です。表情で演技させてる時は、その演技の変化を見せたくてこれ多用してます。
5P目
「どこまで言えば読者が思い出すか?」は結構毎回悩みます。今回は「あの皆既月食の夜」とか言葉を足そうかとも思ったんですが、さすがに読者はここまでで分かるかなとか。これ以上やると説明口調になるなと思って。説明口調、極力避けたいので。たぶん、さすがに日付では思い出さないかもしれないので、光一が「横浜のスタジオで撮影がありました」と言ってる。顔色が変わった」と言うセリフは、もう完全に隠喩というか「ここでトーンが変わります」という合図です。「雨が上がった」と言えば、状況が好転する合図というのと同じ。
ちなみに、漫画に限らず創作物って必要ない情報って出さないですよね。作者のエゴからすると「2010年12月21日」で全てを思い出してくれる読者が超理想で。どこまで読者とツーカーになれるかが勝負だなと思ってます。エレンに出てくる日付に全部意味があるので、特に現代編は「この日って何かあった日だっけ?」って思い出すと展開が読めたりするかも?
6P目
ここは共犯感覚を狙いました。「(一部の)登場人物が知らなくて、読者だけ知っている事」って、にやにや出来るというか、光一側に立つ事になるので共感が生まれる。光一がなぜ困っているか読者には分かってるって、やっぱり第一部を読んでくれたからこそで、この共犯気分ってエモいなと。
7P目
ここで「食いなっせ」と熊本弁を出す刑事。これは急に下の名前で呼ばれるとどきっとする感じに似た(古谷局長が雄介!ってよんだシーンも)落としのテクです。刑事のベテラン感を出したくてやりました。緊張と緩和が好きで、緊張感あるシーンに抜けた事をぶっ込みたくなるので「昼食ってきちゃった」は気に入ってます。
8P目、9P目、10P目
ここは読者に「これまでの左ききのエレン」を思い出してもらうためのページです。これ普通にやると解説っぽすぎるので、このための取り調べシチュエーションって言っても良いくらい。
11P目
「三つめの事件」ここで初めて、読者が知らない出来事がぶっ込まれます。今回の第二部は、この事件から始まるんだと読者に伝えるための。どうでもいいんですが、この建物は渋谷のヒカリエです。描くのめんどうな形してる。ぼくが広告代理店で最後にやった仕事が渋谷の都市開発系の仕事で、ヒカリエ関連の仕事だったので思い入れがあります。ここの商業施設シンクスのショップバックとかぼくのデザインです。まだ変わってないはず。
12.13P目
「グラフィティはより上手い人だけが上書きできる。」これが左ききのエレン全体の世界観というか、鋼の錬金術師の等価交換みたいな。上位上書みたいな、そういう世界のルール。なので、このセリフは第一話に再登場させたかった。
14P目
今回の物語が「業界全体」が舞台な事を伝えます。これまで、光一は「VS同級生」「VS上司」「VSカメラマン」などの個人戦しかやってなくて、神谷視点で「VS経営陣」「VS競合」などといった組織戦が出てきます。この差が「ADとCDの差」だと思ってて。光一に降りかかる新しい事件は、その規模か、それ以上なんだよと。
15P目、16P目
「二人目、シーズン2」という話で、一度終わった物語を再開するにあたり新しい主人公が存在してる事を読者に伝えたいと。こいつ(第二部)が、エレンの単なる模倣犯(焼き直し)なのかどうか、とかも。
※後半は有料部分になります。これからも解説を定期的にやるので、良かったら会員になってください!記事は、漫画の事が多めです。
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