遊覧船Moby Dick
2010年ベルリンTegelにて、コンデジで撮影。今でも走っているので、いくらでもチャンスがあったろうに、その後ちゃんとしたカメラでは撮っていないらしい。
Moby Dick(モビィ・ディック)という名前でピンとくる人もいるかもしれない。この名前はドイツ人には愛されている。1972年に造られた大きな口と尾ひれがついたこの船は切手のデザインにまでなっており、有名な船らしい。
この名前の由来は1966年まで遡る。Duisburgあたりのライン川で一頭のシロイルカが泳いでいるのが発見された。河口から450km以上も川上の内陸の地である。このイルカはハーマン・メルヴィルの小説『白い鯨』に登場する巨大クジラから名をとり、Moby Dickと名付けられた。
Duisburg動物園の園長がこのシロイルカをあの手この手で捕獲しようと試みたが、それが議論を巻き起こした(もちろん園長は自分の園で展示するつもりだった)。反対する人による動物保護運動、当時シロイルカが泳ぐには水質の悪かったライン川、ルール地帯の環境汚染など、政治家も加わってこのシロイルカを巡り様々な議論が繰り広げられた。ドイツの環境対策のキッカケになった大きな出来事だったのだ。
そのあたりの顛末は、「2014年7月 Tierpark」でも紹介したこの本に詳しい。
ほかにも下のようなリンクでも紹介されている。それぞれ2016年、2020年の記事で、近年になっても話題になっていることには驚かされる。それだけインパクトのある出来事だったのだろう。
船のMoby Dickは今もベルリンで遊覧船として働いている。こんな歴史にも思いを馳せつつ、乗ってみるのもいいかも。