金融所得課税はいずれ引き上げられる、どう備えればいいのか?
2025年は日経平均4万円台定着かというときに、また浮上した「金融所得課税の引き上げ」の話。現行の金融所得課税は所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%が適用されています。その税率を25%や30%に引き上げようというのです。
そこで今回は金融所得課税引き上げについての勝手な自分の考えと、引き上げに備えた投資戦略について書いてみようと思います。
発端は国民民主党の税制改正案
騒動の発端となったのが、国民民主党の「金融所得課税30%」案でXでは袋叩きに遭っています。参考までに2024年12月時点での国民民主等が掲げる「金融所得課税改革」は以下の通りです。
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あくまで「令和 7 年度税制改革と財源についての考え方」をまとめた改革案に過ぎません。総合課税(※1)を選択できるようにするならそんなに悪い話ではないと個人的には思いますが、誰だって増税の話なんて聞きたくないでしょう。しかし、世の中は自分の思い通りに動くわけではなく、「増税は嫌だー、反対だー」と狂ったように騒ぐだけなら子どもでも出来ます。
※1 国税庁│No.2220 総合課税制度を参照
NISA恒久化は金融所得課税引き上げとセット
金融所得課税は遅かれ早かれ引き上げられると予想しています。
そもそもなぜ2023年にNISAの恒久化と非課税枠の拡大が決められたのでしょうか? これまでの政権のやり方と言えば、まず財務省主導で「財政が厳しいから、これだけお金が必要」と負担増の話を持ち出し、社会保障とセットで増税を決めるというものでした。
ところがNISAの制度改正のときは、増税を封印して先にNISAの恒久化と非課税枠の拡大が決まりました。私はこれを将来的な税率引き上げとのバーターだと考えています。同時に税率を引き上げなかったのは、「貯蓄から投資へ」の流れを作るのを優先したからでしょう。つまりNISAの恒久化と金融所得課税引き上げはセットだということです。
過去を振り返ると旧NISA制度は2014年に「配当・譲渡益の10%軽減税率」廃止=税率20%への引き上げとセットで導入されています。
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私たちは先に「新NISA」という飴玉を先に貰っています、だから増税の話が出ても文句は言えないわけです。
誰だって増税は嫌、世論がどちらを支持するか
それでも株クラでは「こっちはリスクを取って投資しているんだ、増税なんかするな!」と感情的な反対意見が大半です。誰だって増税は嫌だし、自分で稼いだお金の一部が税金で持っていかれるなんて想像するだけで不愉快です。
しかし、日本の税制を決めているのは自民党税調や政府税調です。ラスボスと言われる宮沢税調会長は多大な力を持っているらしいですが、最終的には国会で法案が通って成立するので、民主的な手続きを踏んで決められています。感情的になって反対したところで増税が決まるときは決まるのです。金融所得増税は国民民主党だけではなく立憲民主党も「25%への引き上げ」を主張しています。
もちろん国会議員を選ぶのは有権者ですから、「増税するような議員は選挙で落とす」ことも可能です。しかし、消費税の引き上げ反対なら世論の支持を集められても、金融所得課税引き上げに反対する世論はどれくらい居るのでしょうか? 新NISAで国民の投資熱が高まったとはいえ、まだまだ投資に前向きな人は少数派です。
結局のところ、「格差是正のための増税」と「投資家に配慮して増税見送り」のどちらの意見に世論の支持が集まるのかが重要です。株クラで反対意見が噴出したところで、所詮は日本で株をやっている人なんて少数派だからです。
引き上げ前の利益確定が増えるが影響は一時的
気になるのが金融所得課税引き上げの影響です。まず起こると考えられるのが、引き上げ前の駆け込み的な株の売却で、税率が上がるならその前に利益を確定させておきたいと考えるのが普通で株価は下がりそうです。
過去はどうだったのでしょうか? 実は税率が10%→20%に引き上げられた2014年の日経平均株価はアベノミクス相場の追い風があったとはいえ7.1%上昇しています。
日経平均の月足チャート
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下がったとて影響は一時的ではないでしょうか? 株を売却して、そのお金をどこに移すのでしょうか? 債券? 銀行預金、そのどちらも金融所得課税引き上げの影響を受けます。日本はゼロ金利時代が長く続いたため、あまり意識することはありませんが、銀行の利息からもきっちり20.315%の税金が引かれています。(※2)
であるなら結局はまた株式市場に資金が戻って来ることになります。日本のインフレが続く限りは、預金よりも株のほうが有利だからです。
※2 どうして預金するだけで利息がつくの?税金は申告しなくていいの?
金融所得課税引き上げに備えた投資戦略
遅かれ早かれ金融所得課税が25%ないし30%に引き上げられるとしたら、いまのうちに投資戦略を練って、準備しておいたほうが良さそうです。
新NISA制度をフル活用する
まず行いたいのが新NISA制度のフル活用です。2024年の税制改正でNISA制度は恒久化され、非課税枠が年間360万円、最大で1800万円、そのうち個別株が買える成長投資枠は年間240万円、最大で1200万円に拡大されました。しかも枠を使って売却しても翌年には復活し、旧NISAからすごく使いやすくなっています。せっかく与えられた非課税制度ですから活用しない手はありません。
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新NISAだけでも資産形成はできる
1800万円では足りないようという人も居るでしょうが、それは簿価で考えるからです。株式投資は積立預金ではないので、簿価よりも時価が重要です。100円で買った株が1000円になれば1000円の価値があります。100万円投資すれば1000万円になります。
ということはこういうことです。
1800万円投資して
2倍になる=資産3600万円
3倍になる=資産5400万円
5倍になる=資産9000万円
10倍になる=資産1億8000万円
1800万円の非課税枠では資産形成できないなんて大嘘です。新NISAだけで金持ちになることだって夢ではありません。ただしデイトレや短期のスイングトレードで1年間の枠を使ってしまう人にはまず不可能であり、長期投資が前提になります。また信用取引を活用して資産を増やしたいという人は非課税枠の恩恵を受けることができません。
無理だと思った人はS&P500やNYダウが10年間でどれほど上昇したのか調べて見ましょう。米国株ほどではありませんが日経平均株価も10年で2.3倍になっています。個別株なら5年ほどで2倍3倍になった銘柄をたくさん見つけることができます。
成長投資枠で高配当株に投資する
私が考える新NISA最大の魅力は、永久に配当金を非課税で受け取れることです。旧NISAではロールオーバーしない限り5年しか非課税で配当金を受け取ることができませんでしたが、恒久化されたことで売却しない限りずっと非課税では配当金を受け取ることができます。
つまり成長投資枠で高配当株を買い、貰った配当金を再投資していけばそれだけで資産を増やすことができるのです。もちろん減配リスクが低い銘柄を選ぶことが大切です。銘柄選びさえ間違わなければ、増配するたびに株価も上がり、配当金も入るので、安定的に資産を増やすことができそうです。
いくら投資したかではなく何株買えたかが大事
最後に新NISAで資産を増やすうえで重要なことは「出来るだけ安い株価でたくさん株数を買いつける」ことです。言い換えれば優良銘柄を割安なときに買うということです。これについては解説する人がたくさん居るのでそちらにお任せます。
ある銘柄に「俺は○百万円買ったぞ!」と自慢する人が居ます、「なんだおまえは○万円しか買っていないんだ」とバカにする人が居ます。私に言わせればそういう人こそおバカさんで、おそらくは入金投資法(※3)で資産を増やした下手○か、短期で儲けたいギャンブラーなのでしょう。
※3 運用で思うように利益が出ないから入金を繰り返し穴埋めする投資法
新NISAは投資枠が決まっているので、何万円投資したかではなく何株買えたかが大事です。そのためにはすっ高値で買わないことです。例えばエムスリーをコロナバブルの21年1月に買っていれば100万円で100株しか買えなかったうえに、株価は4年で1/7になってしまいましたが、いまなら同じ100万円で700株買うことができます。
エムスリーの週足チャート
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もちろん安く買えてもこの先も株価が下がり続けるなら投資した意味がないので、値上がりが期待できる銘柄=好業績が続く、もしくは割安でバリュエーションの修正が期待できる銘柄に投資することが大切です。
金融所得課税はいずれ引き上げられる、いまのうちに備えとけ!
まとめとしては株クラがいくら反対しても、金融所得課税はいずれ25%ないし30%に引き上げられます。なぜならそのバーターとして新NISAが始まったからです。
我々は既に最大1800万円の非課税枠という飴を受け取ってしまっています、なのに「増税は嫌だー」と子どもみたいに駄々をこねたところで、世論の支持は得られるのでしょうか? それよりも新NISAの非課税枠をフル活用して資産を増やす方法を模索するほうが賢明だと考えます。