ザキオカと一緒に確認する3月FOMC、中立金利2.6%に引き上げで長期金利は高止まりか
日本時間の3月21日朝、FOMCの結果発表がありました。長期経済見通しも合わせて発表されています。金融ストラテジストの岡崎良介さんが動画で解説しているので、そちらも参考にしながら見て行きます。
24年末FF金利は4.6%、成長率引き上げ
FF金利見通し中央値はこのようになりました。
()は前回、12月の見通し
24年末 4.6%(4.6%)
25年末 3.9%(3.6%)
26年末 3.1%(2.9%)
長期 2.6%(2.5%)
ほとんどの人が24年末のFF金利見通しが4.6%で据え置かれ、0.25%×3回の利下げ回数に変化がなかったことに注目しています。直前に発表された2月のCPIがやや強かったことから、利下げ回数が減らされるのでは? と警戒していた市場は安堵し、S&P500は史上最高値を更新しました。
実質GDP成長率予想は引き上げられました。
()は前回、12月の見通し
24年末 2.1%(1.4%)
25年末 2.0%(1.8%)
26年末 2.0%(1.9%)
長期 1.8%(1.8%)
これを見ると景気後退しそうにありません、どうやらソフトランディング予想に変わりはないようです。
25年末と26年末のFF金利を引き上げ
重要な変化は25年末と26年末のFF金利見通しが引き上げられたことです。パウエル議長の会見からはハト派な印象を受けますが、25年以降のFF金利見通しをしっかり引き上げています。
中心値も微妙に上振れていることから、会見の内容とは違って結構タカ派な予想に変えてきたという印象です。
FF金利見通し中心値 ()は前回12月
24年末 4.6-5.1(4.4-4.9)
25年末 3.4-4.1(3.1-3.9)
26年末 2.6-3.4(2.5-3.1)
長期 2.5-3.1(2.5-3.0)
25年末のFF金利が3.9%ということは、あと2年近く長期金利が4%前後で高止まりすることを示唆しています。金利高に苦しめられている企業や個人が果たして、あと2年耐えられるのか心配になります。
特に気になるのが5年金利です。岡崎さんは別の動画で「企業が無担保で借りられるのはせいぜい5年がいいところ」「5年金利が4%超で推移すると厳しい」と解説しています。
コロナ禍のゼロ金利時代に社債を発行した企業は順次、満期を迎えて借り換えを行うことになります。当然、資金調達コストは大きく上がることになり、耐えられない企業も出てくるでしょう。資金調達コストが負担になった企業が大規模なリストラを行えば、失業率の上昇に繋がります。米国経済が持つのか心配になります。
中立金利の引き上げで長期金利高止まりへ
そしてもっとも重要な変化は中立金利が2.5%→2.6%に引き上げられたことでしょう。中立金利とは景気を冷やしも過熱させもしない金利水準のことで、FF金利の見通しの「長期」が中立金利にあたります。
今回、この中立金利が0.1%ですが引き上げられました。中立金利はここ数年ずっと2.5%で据え置かれていたので、0.1%とはいえ引き上げに転じたことは見逃せない変化です。なぜなら中立金利が引き上げられると、長期金利は下がりにくくなり、まだ影響は出ていませんが株には試練になります。
岡崎さんは「中立金利は最終的に3%まで上がる」「長期金利はコロナ前の水準には戻らない、良くて長期金利は3-4%程度で推移する、景気後退がなければなかなか金利は下がらない」と予想しています。長期金利が高止まりすると、金融業界は儲かりますが、成長株には厳しい環境になりそうです。いま米国株はエヌビディアを先頭に大型成長株に資金が集まっていますが、どこかで無理が生じて反動が出るリスクを頭に入れておいたほうが良さそうです。
最後にドットチャートを確認します。
岡崎さんは著書の中で金利には三つのゾーンがあると言っています。
緩和期 長期金利<中立金利
中立期 中立金利<長期金利<名目潜在成長率
引き締め期 名目潜在成長率<長期金利
名目潜在成長率3.85%=(実質潜在成長率1.85%+インフレ誘導目標2%)
ドットチャートの25年末を見ると19人中10人がこの名目潜在成長率3.85%より上を予想しています。これは25年末まで引き締め期が続く可能性が高いことを意味しています。景気後退しない代わりに長期金利は高止まりする=成長株には厳しい環境が続く、どうやら油断は禁物のようです。