第一章 組織と組織力
まず、人はあらゆる組織に属している。働いている会社だけ、通っている学校だけが私たちが生きている世界ではない。私はひとつの組織だけを対象とせず、あらゆる組織を対象にフォロワーシップを論じていく。そのためには「組織」とは何なのか知る必要がある。
第一節 組織
人は一人で目的が達成できないとき、二人以上の人々と活動する。それを協働といい、協働の場を協働体系という。そしてあらゆる協働体系に共通している部分を「組織」といい、組織は協働体系の調整・統合をしている。他人の力を借りず、一人の力で目的が達成できるときは協働は生まれおらず、組織も存在しない。経営者の役割について研究したC.I.バーナードは「組織とは、意識的に調整された人間の活動や諸力の体系と定義される」「組織は、(1)相互に意思を伝達できる人々がおり、(2)それらの人々の行為を貢献しようとする意欲をもって、(3)共通目的の達成を目指すときに、成立する」「組織の要素は、(1)伝達・コミュニケーション(2)貢献意欲(3)共通目的である。」と述べている。組織は目に見えない活動や諸力の体系なのである。人間は意識的に調整されていなければならないということである。調整はだれかによってされる場合もあれば、自分自身によって調整される場合もある。つまり、組織の人は調整されて活動をしているということになる。
組織の要素は、伝達 貢献意欲 共通目的であり、それによって組織は成立する。コミュニケーションによって、共通目的と貢献意欲が結び付けられるため、共通目的を決める際は注意すべきことがある。それはフォロワーシップについて研究しているチャレフが述べている。「目的があいまいであったり、意欲をそそるものでなかったりすると、リーダーもフォロワーも共通の利益を忘れ、自分の利益ばかり追うようになる」このように、意欲がそそられる共通目的を設定することが重要なのだ。
私がバーナードの定義を利用する理由は三つある。一つ目は、意欲がなければ個人の利益を追ってしまい、組織への貢献意欲が無くなるから。二つ目は、コミュニケーションによって自分以外の人と活動することで、目的を知ったり貢献による利益を知らされたりするからである。三つ目は活動しているからこそ組織といえるからである。そのため、活動や諸力の体系を組織といい、ただの人の集まりは組織とは定義しない。
以上より、「組織とは、意識的に調整された人間の活動や諸力の体系」と定義する。そして組織を成立するには伝達、貢献意欲、共通目的の三つが必要であり、この三つは組織の人を調整するうえで組織の成果を出すうえでも重要になる。