タニンのエリアシ。
街を歩いていると、いろいろな人がいますよね。
オシャレだなあとか、ステキだなあとか、目で追ってみたり。
ニンゲンカンサツ。ついついやっちゃいます。
するとそこに突然、襟足長めのウルフヘアーがよく似合うメンズが歩いてきたとするじゃないですか。
すかさず、こう思っちゃうんですよね。
え、わたしもやってみたい!
わたしもぜったい似合うヤツじゃん!!
どこからともなくあふれ出てくる、自信。
ザ・ナルシスト。
わたしはイケてるで賞、新人賞。
仕事とか恋愛とか、そういう時にこそあふれ出てきてほしいのにな〜。
アフレルポイントがずれているのです。
いやまぁ、あふれてくれるだけいいんですけどね。
わたし、洋服が好きで、古着やエスニック系統の服を買って、着たりしています。
「あぁこれはぜったい似合うな」
「こんなんわたしが着るために生まれてきたようなモンやんけ!」
自分に似合う服って、ひと目見たら分かっちゃいませんか?
わたしと洋服との相性メーターが、右に振り切れたら即買いです。
まさしく、運命の出会い!トゥットゥルー!
アパレル店員をやっていた、というのもありますが、洋服のスカウト力には自信があるんですよね。
さて。
ウルフヘアーのお話でしたね。
髪型と洋服とでは、ぜんぜん違います。
何が違うって、髪型は一発勝負でしょう?
穿いたり脱いだりできないんですよね。
試着ができない。返品もできない。
マッシュもいいけどマンバンも捨てがたい。
エーーイ!奮発してどっちもお買い上げじゃー!
なんてこともできないわけです。
切るか、切らぬか。
生きるか、死ぬか。
究極すぎる。
こんな究極の選択を、赤の他人に委ねていただなんて。
お任せで!じゃないんですよ。
命を預けているのと同じなんですから。
はい。
ウルフヘアーのお話でしたね。
そうなったらこうなったで、わたしの頭の中はもう、ウルフ一色なわけで。
ぜったいウルフ!ウルフにべた惚れ!!
ウルフ以外ぜーッたい、許さないんだからッ///
ウルフヘアーの自分を想像します。
やっぱり襟足長いのかっこいいな〜。
耳は出してあげてもかわいいかな〜。
切ってもいないのに興奮がおさまりません。
手を震わせ、涎を垂らし、白目を剥きながらホットペッパービューティーでいつもの美容室を予約します。
当日。スタイリストさんに要望を伝えます。
わ「ウルフヘアーにしてください!」
ス「そしたら、後ろはこのままのばしていきますか」
???
そっか、わたしの襟足は前回ワカメちゃん並みに刈り上げてしまっていたので、ないんでした。
でもまぁ、よしとします。
だってぜったい似合うんだから。
そうに決まってる。
わたしは何度かウルフヘアーに挑戦してるのですが、結果はだいたい以下の2つ。
①伸びきる前に飽きる。
②そもそも似合わない。
まずは、①。
生半可な気持ちで挑戦したって、成功に辿り着けるわけがないんですよ。
東大合格。エベレスト登頂。
ちょっとした興味本位でやってみて、成功できるようなものではありませんよね。
暑さや鬱陶しさに打ち勝つ忍耐力。
"絶対にのばし続けるんだ"、という覚悟。
そういったものがなければ、ウルフヘアーになんて一生なれません。
かっこいい「他人の襟足」を、ユビ咥えて眺めていることしかできないんです。
そして、②。
個人的には、首がすっぽり隠れてボリュームのあるウルフが好みなので、時間をかけてそこまで伸ばしました。
好み、というのはあくまで「他人の襟足」を見て、『そのうちにアレをワレのモノにしてくれようぞ』と思っていた時の話です。
伸ばし続けて、その間も美容室には行きましたが、整える程度にしてもらって。
そして理想まで伸びきったら、あとはスタイリストさんに命を委ねるのみであります。
はい、できあがり!
その場で鏡を見たときは、やっと理想のウルフになれたという気持ちでいっぱいで、満たされていました。
だがしかし。ハウエバー。
チョトマテチョトマテお兄さん。
家に帰ると、なにか言いたげにワレがわたしのほうをジッと見ているのです。
なんなのじゃ!アンタのお望みどおりウルフヘアーにしてやったのじゃぞ!
事情聴取。カツ丼はお預けです。
はい。
あのメンズにはよく似合っていたウルフヘアー。
ワレがやると、ずぇ〜んずぇんかっこよくない。
伸ばしてる過程で気がつけよって話なんですが、その段階ではまだワクワクしか頭にないんですよ。
旅行の行程を考えてるときって、どちゃくそ興奮してるじゃないですか。
だれかのレビューを参考にして、あそこに行きたい、それ食べてみたいな、ねえここも回ってみようよ!
でも実際当日になるとプラン通りにいかないし、写真とぜんぜん違うし、なんか雨とか降ってくるし。
こんなはずじゃなかったのに。ぴえん。
ウルフヘアーだってそうです。
伸ばしてるとき、伸びてイケてるピーポーになれた自分を想像してるときが一番楽しいんですよね。
ピークはとうに過ぎてました。
雨は夜更けすぎに雪へと変わってたらしいですが、気付いた時には止んでたってわけです。 え?
何ヶ月もかけて伸ばしたのに。ムキーッ!
サルにでもならなきゃやってられません。
黒髪だからか華やかさは皆無。モサっとして映えない。
長髪なので若白髪が目立ち、かえって歳くって見える。
白髪なんて他人から見たらそんなに気になることではありません。
見ちゃいないですし、見つけたとしても「白髪生えてますよ」なんて言ってくる人はほぼいませんからね。
でも、気にしちゃうじゃないですかァ!
誰がって、自分自身がですよォ〜!ちょっとォ〜!
語尾が松野明美になっちゃうくらいなんですから、ただごとではありませんよ。
どれだけ「タニンのエリアシ」がかっこよくて、憧れて、真似してみても、結局は自分が気にいるかどうかなんですよね。
周りから見たら似合っていないとしても、自分が気に入っていたらそれはもう、勝利。
ザ・ナルシスト。
わたしはイケてるで賞、最優秀賞。
残念ながらわたしは新人賞止まりでした。
でも、新人には未来がありますからね。
もッと、も〜ッと似合う髪型を見つけたらいいだけの話。タケモットってことです。 え?
今度はわたしが、誰かにとっての「タニンのエリアシ」のような存在になれるよう精進しないとですね。
髪型じゃなくたっていいんです。
あいさつ、清潔感、立ち居振る舞い、話し方。
笑顔、気遣い。なんだっていいんザマス。
スネちゃまは骨川家の大切な跡取りなんザマスから、誰かから憧れの眼差しを向けられるような存在になってほしいんザマス。
まずはその「なにか」を見つけるために、ニンゲンカンサツでもしてみようかな。
あれ? フリダシに戻る。