渡る中国にも鬼はなし(23/67)
第4章 中国第3日目 蘇州->上海->昆明
とうとう飛行機に・・・
私たちが昆明まで行くのに利用するのは中国雲南航空公司という航空会社で、昆明を中心とした路線を持っている会社です。機種はボーイング767・300というジェット機です。私が中国に行くのに不安になった「飛行機」の問題が目前に控えていました。
もちろん関空から上海まではJALを利用していますから、飛行機に何の心配もありませんでしたが、中国の国内線にはたして専用の車イスが用意されているかどうか。このあたりの情報が入りませんでした。最悪は訪中団の男性にお願いして両手両足を持ってもらい、狭い通路を通らねばならないかも知れません。
しかし、人間というのは成長する動物です。それまで介護というと母が中心で、補助的にホームヘルパーさんにお世話になっていた私が、中国旅行という大きな世界に踏み出したお陰で、多くの見知らぬ人の介護を必要とすることになりました。
このことはある意味で、心苦しいことと思っていたのですが、段々と見知らぬ人に介護をお願いすることは、形こそ介護でしたが、「大いなる人との触れ合い」であると感じ始め、もはや旅行3日目ともなると、他人に介護をお願いすることに楽しみとも喜びというものがわき起こってきましたので、たとえ通路をそういう形で介護を受けて自分の席まで運んで頂くこともまた「大いなる人との触れ合い」であると思うと、ある意味で楽しみにしていたのも事実です。簡単に言うと私は厚かましくなったのでしょう。
もっとも添乗員さんだけはその例外だったかも知れません。健常者なら問題なく降りられる階段でも、とたんに急ぎ足でどこにエレベーターがあるか探さねばなりませんでしたし、今回のように中国国内の旅客機に乗り込む時も、カウンターで車イスの件を聞かねばなりませんでした。ましてその添乗員さんは英語も中国語も堪能な方とは言い難かったので、言葉の壁と戦いながら、私のために斥候となり、事前調査に時間を費やさねばなりませんでした。
その添乗員さんの努力も空しく、搭乗前に私の車イスの件はなんらかの対応を中国側に伝えるのは難しかったみたいで、結局「乗り込んでから考えましょう」みたいなことになったようです。
そういうわけで、私はまず訪中団の先頭で車イスのまま乗り込みました。いくら私が亀岡市からの代表で中国を訪問しているVIPだと言っても、旅客機の入り口付近のファーストクラスに座らせてくれるという配慮などあるわけもありません。飛行機に入ってその通路を見た瞬間「ああ、これは無理だな」と思ってしまいました。ベテランのドライバーが、狭い道で、自分の車が通れるかどうか瞬時に判断できるが如く、私も車イス歴3年にして、その程度のベテランの域に達していましたので、すぐに分かったのです。
すぐに分かったということと、すぐにそのことを中国人のスチュワーデスに伝えられることは別問題です。そこには言葉の壁がまるでヒマラヤのようにそびえていたのです。