北京入院物語(21)
按摩と針治療、静脈点滴は昼前に済みました。
漢方薬の服用は朝晩の2回です。
ですから昼からはまったくすることがありませんでした。
私は花の都、北京にいるのです。
車椅子を押してくれる人もあれば、時間もありました。
狭い個室にジーとこもっている理由は何もありません。
日本の病棟のように、いちいち外出許可もいりません。
日本で夢見ていた通り、周さんと毎日昼から北京の町並みに出かけました。
町には驚きと喜びと感動が溢れています。
そのつど車椅子を止め、しげしげと観察し、デジタルカメラでカシャッとシャッターを切りました。
9月7日北京に到着し、その月の末までは3週間余ありましたが、その間に1300枚の写真を撮ったのです。
いや、1300回の驚きと喜びと感動があったと言っていいと思います。
日本にいたときのような静かな生活ではありません。
私の心は動きに動き、揺れに揺れました。
疲れた?
とんでもない!
私は毎日夜が明けるのが楽しみでした。
今日は何があるのかな・・・。
治療を楽しみにしていたのではありません。
昼からの外出を楽しみにしていたのです。
心と体が無関係でないのはよく知られるところです。
心が動くと体も動き始めました。
日本にいたときは最高血圧が80-90mmHg であったものが120mmHgになりました。
体温も35℃後半であったものが36度前半になりました。
3日に1回の排便が毎日になりました。
針治療と漢方薬の服用も寄与したと思います。
しかし、そんなことは本当にどうでもよかったのです。
北京を感じ、北京を味わい、北京と歌を歌っていたのです。
一瞬一瞬が幸せでした。
いわば、最愛の人を抱きしめ、目を閉じているような気持ちでした。
北京入院物語(22)