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弟の死

弟が死んだ。

46歳だった。

彼は15年以上もアルコール依存症で苦しんだ。
アルコール依存性という病気であったが、最後はアルコール性肝硬変による食道静脈瘤破裂による出血性ショックだ。

まだ若い。

私は彼の死の後、涙が出なかった。
亡骸に会った時も通夜の時も葬儀の時も。

家族の元に戻って日常生活を取り戻して
ふっと激しい感情に襲われた。
弟を失った悲しみと姉として彼に何もできなかったという自責の思いがとめどもなく溢れてきて。。。

なぜ何もできなかったのか?

アルコール依存性という病気は怖い病気で
人格がまず全く変わってしまう。
あんなに優しかった弟は自分勝手な非常識な人間となり、家族には暴言を吐き嘘をつきまともな話が通じなくなった。
完全に私の知らない人になっていた。

体はボロボロになって死に確実に向かっているのが分かっているのにお酒をやめられない。

肝硬変
肝臓癌
脳出血
大腿骨頭壊死

大きな病気をどんどん抱えて
何度も何度も入院を繰り返す。

救急車だって何回乗ったか分からないぐらいだ。

警察沙汰になった事だってある。

まともに話が出来なくなって、話したとしても最後は弟からの攻撃で終わる。
あんなに仲が良かったのに疎遠になっていった。

そう、離れていたから忙しかったから
見ないふりをしていた。

それに母と弟は共依存の関係性にあって
そこに介入するのも難しく
母から連絡があってもどんなにひどい状態でも私は話をただ聞くしかできなかった。

心の距離を置いて
ただ傍観していた。

今年に入って病状がさらに悪化して
腹水がたまりお腹はパンパン、
吐血も何回も繰り返した。

母からはどうしても入院してくれない!と連絡があり、いつものように私は何もできなかった。
いや、何もしなかった。

私は母からの電話が鳴るたびに
弟の死を知らせる電話じゃないかと構えた。

そして7月28日
危篤の電話がとうとう来た!

そして、弟は亡くなった。



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