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Mrs. GREEN APPLE×雑誌ライターさん②〜樋口靖幸さん編〜

今回は第2弾!樋口靖幸さん編です!!
※前回は雑誌「MUSICA」編集長・有泉さんについて書かせていただきました…!

樋口さんは雑誌「音楽と人」のライターさんであり、ミセスがメジャーデビューした頃からずっと取材をされている方で

樋口さんのインタビュー、有泉さんのとはまた違ったテイストで、それはそれはめちゃくちゃいい意味で癖になるんです!

なのでこれから何項目かに分けて、詳しく見ていきたいと思います💨

※以下の雑誌引用は、全て「音楽と人」掲載のものとなっております。

🍏×樋口靖幸さん

☆一筋縄ではいかないトーク

まず一つ目の樋口さん's魅力は、一筋縄ではいかないところです!!

この感じが私は大好きでしてですね、樋口節が出てくるといつもキター!!とテンションが爆上がりします😂

特に樋口節が炸裂しているのがこちらっ

ーアルバムのインタビューですが。
「やった、褒めてくれるんだ!」
ーそう簡単には褒めません(笑)。
「意地悪だなー!(笑)」

2018.5月号

ーホントに……いいバンドになったよね。
「あはははは!褒められた!」
ー「Theater」っていう新曲でアルバムが終わるじゃないですか。行進曲みたい曲調で、これで締めくくられるところがいいなって。
「前に突き進んでいく感じありますよね。開けていく感じ」
ーまだまだバンドを続ける気があるんだなって思った。
「はははははは! そんなこと思うの、樋口さんだけだよ(笑)」
ーだって前は「ずっと続けるつもりはない」みたいなこと言ってたじゃん。ドライなヤツだなってその時は思ったけど。
「これ、すっごく温かい気持ちになるんですよ」
ーつまり、ここにいるのはミュージシャンとしてストイックな大森くんじゃなくてー。
「そっか。23歳、どこにでもいる普通の僕がここにいる……ってことなんだね」

2020.8月号

ー久しぶりってことで、「こういう話をしようね」みたいな話を事前に3人でしたんですか?
「作戦会議みたいなこと?まったくしてないです」
ー意外です。大森くんはそういうことをするタイプだと思ってたけど(笑)。
「しないタイプになったんじゃないですか?(笑)。でも、マジでしてないです。僕は自由に喋りたかったし、2人にも構えないで喋ってもらいたかったから。特に今回は構えて話をすべきじゃないと思ったし」
ーそういえばそうですね。
「うん。そこはできるだけ構えず、思ってることを話すべきだなって」
ーじゃあこっちも構えずにやります。
「楽しくお喋りして終わりたいな(笑)」
ーや、それは無理でしょ(笑)。
「えー!(笑)」

2022.8月号

ーだからあの日を迎えたくなかった。
「僕の中で色濃くて、大好きだった季節が、あの日とともに終わりを告げちゃうような気がしたんですよ」
ーあの日3人でライヴをすることによって、5人だったMrs. GREEN APPLEがー。
「過去になる。で、それって僕の人生観すらも大きく変わるタイミングというか。今までと同じ気持ちのままバンドの舵をとってはいけないんだろうなっていうのを、嫌でも実感しちゃう日でもあって。つまり、駄々をこねていただけです(笑)」
ーそんなに大事だった自分の青春時代を断ち切って次に向かうのが嫌だったら、バンドなんて辞めれば良かったじゃん。
「そんなイジワルなこと言わないでよ!(笑)」

2022.12月号

※上記のインタビューはこちらっ⤵︎

ーそうじゃないと耳の件ももっと深刻に捉えちゃうかもしれないね。
「こうなっちゃうのが妥当だなって思ってる。だって去年あれだけ頑張ったんだもん。むしろ当然というか、どっかにガタ来てくれないと困る、みたいな(笑)」
ー俺も発表を見た時「それ見たことか」って思った(笑)。
「はははは!発表するに至ったのも、自分からの提案だったし。あと、このことをチームとかメンバーとの結束の口実に使ってほしいっていうことまで言いました」

2024.4月号

☆鋭い切り込み方

続いてふたつ目は、鋭い切り込み方です!
完全なる主観ですけど、樋口さんって他のライターさんだと踏み込めないとこも容赦なく入っていくというか笑、そういうところが強みでもありオリジナルカラーだなと思うんですよね。

でも一歩踏み込んでくださるからこそ、他の雑誌では見れない深い話が展開されていたり…とすごく好きなところです。

ー……あの、ひとつ言っていい?
「どうぞ(笑)」
ー他のメンバー、大変だよね。こんな男とバンドやるのは。
「大変だと思います。『大変だ』って言ってるし」
ー何が大変なんだと思う?
「何がって……いっぱいあると思うけど、僕が今言ったようなことってなかなか理解されにくいんですよ。自分の中では当たり前だと思ってることでも、それがメンバーには当たり前じゃなかったりするから、それはきっと大変だろうなって。たぶん寿命はめちゃめちゃ縮まってると思いますし、それでも僕を理解しようとしてくれるのでとても優しい人たちだなって」
ー僕もそう思います。
「優しいしすごく真面目。でもどこかでバカにならないとやってられないことでもあると思うし。だから恵まれてるな、って最近すごく思います」

2016.7月号

ーで、バンド感も排除してEDMに振り切り、自分の声にオートチューンをかけ、自分の気配すら消そうとしていると。
「ふふふふ……で、このインタビューってここからどういう展開になるんですか?(笑)」
ー先を読もうとするな(笑)。さっきの話に繋がるんだけど、こういうバンド感ゼロの曲を「Mrs. GREEN APPLEの新曲です」って胸張って言えるのは、メンバーの信頼関係がないとー。
「なるほどね」
(中略)
ー偏見というより羨望かな。職業柄、音楽をいちいち掘り下げてしまうわけですよ、その音を鳴らす理由とか。だからノリだけで楽しめない自分がいるというか。
「……やっぱりその話にたどり着くんだ(笑)」
ーなんだその「やっぱり」っていうのは(笑)。
「だから、そこは僕も同じで。掘り下げてしまうけど、でもそれだけが音楽との向き合い方じゃないよなって。例えば普段音楽でブチ上がろうと思ってもブチ上がれない人もいるだろうし、逆に音楽を掘り下げるのが苦手な人だっているじゃないですか。だからこそ、僕は何も考えずこれを衝動的に作ってみたかったんですよ」

2018.1月号

ーわかりました。じゃあ大森くんがいないのをいいことに、ここで彼に対してダメ出しをしてもらいたいんですが(笑)。
若井「ダメ出し(笑)」
ー「これだけは勘弁してくれ」みたいなことってあります?
山中「なんだろう?」
若井「あ~どれにしようかな(笑)」
藤澤「いっぱいあるんだ(笑)」
(中略)
ーみんなの話を聞いて思うのは…彼は末っ子気質の甘えん坊というか。
若井「あぁ、末っ子気質はけっこうあるかも(笑)」
山中「でもこのバンド、末っ子とひとりっ子しかいないんですよ(笑)」
藤澤「だからみんな……かまってちゃんです(笑)」
ーそれがこのバンドの本質だったのか(笑)。
全員「ははははは」
藤澤「むしろお互いにかまってほしい人間だからこそ成り立ってるバンドなのかもしれない」
山中「ああ、わかる」
若井「かまってちゃん同士、ウィンウィンみたいな(笑)」
ーでもそのうち揉めるんじゃない?そしたらまた全員集まってもらってインタビューするけど。
若井「あ、じゃあ揉めたらすぐに連絡します。インタビューしてほしいんで(笑)」

2018.5月号

ーでも、本当に腑に落ちてたら、こういうアルバムを作る必要はなかったんじゃない?
「そうかも。もっと割り切ってやればいいだけの話だし」
ーそれこそエンタメに振り切って、「ENSEMBLE」の続編みたいなのを作ればいいし、ライヴだってそう。そこを割り切ったらSNSだってお手のものでしょ?
「できるできる。でもそれをやらないのは……単純に『ENSEMBLE』と同じようなことをやるのにワクワクできないからだと思う。やっぱりワクワクしたり楽しいと思うことをやらないと気が紛れないじゃないですか、人生って。ただそれだけなんじゃないかな。割り切ってああいうことをやろうとすればできるかもしれないけど、それは今の僕がやりたいことじゃない。ただそれだけのことかと」
ーうーん、珍しく説得力が乏しい説明だな(笑)。
「えー、なんで!(笑)」
一前に『ボヘミアン・ラプソディ』をメンバーと観に行ったって言ってたでしょ?
「うん。それが何?」
ーあの映画を観て、キミはどう思ったんだっけ?
「………寂しくなった」
ーそれが今、こういうアルバムを作りたいと思う理由なんじゃないかと。
「あぁ……まあ、きっとそうですね。でも、そうやって理由づけをしちゃうと、僕の中で気が紛れなくなっちゃうんですよ。だからそこは意識してない」
一わざとこういう言い方するけど、これは寂しさを人一倍感じてる人が作ったアルバムだと思います。
「うん……そうだね。そうだと思います。これって『Mrs. GREEN APPLE』とか『ENSEMBLE』とは違うアルバムだと思ってて。むしろ、『Variety』とかインディーズの頃の色に近い気がしてて。どこかこう……やるせない思いの産物というか、ポップなんだけど僕の中の陰影みたいなものが出てる」
ーだから『クダリ』って曲がここには入ってるわけで。
「そこで繋がるのか。そっか。で、もし今ここで話してるようなことがこのアルバムを通じて届いたとしたら、僕は本望ですよ」

2019.11月号

ー新リーダーはどうですか?さすがに昔より悩まなくなったんじゃないですか?
髙野「今でも悩みは尽きないです。どう頑張っても完璧なベーシスト、完璧な人間にはたどり着けないことはわかってるので。それでも自分をどう高めていけるか、そんな自分に何ができるか。そこをずっと考えてる時期なので」
ーぶっちゃけ、バンドやってて楽しい?
髙野「楽しいですよ!(即答)」
全員「ははははははは!」
ー間髪入れずに答えたな(笑)。
髙野「だって今苦しいこととか悩んでることも、さっき藤澤が言ったように、将来振り返った時に楽しかったなって思えるのがわかるから。あと増子さんにも背中を押してもらえましたし」
ー「バンドなんて楽しくやんないと」って言われてましたね。
髙野「やっぱり〈辛いな、苦しいな〉って感じる時もあるんだけど、それを各々が乗り越えてこそのMrs. GREEN APPLEだと思うんで。未来の自分から今の自分に対して『楽しいんだぞ』って言ってもらってる感覚ではあるけど、それでもバンドは楽しいです」

2019.12月号

ーで、ここで4人に質問。大森くんみたいな考え方を持った人と、一緒にバンドをやれて良かったと思えてます?
大森「うわぁ……その質問、ちゃんと責任を取ってくださいよ(笑)」
全員「はははははは!」
大森「ここからの発言でバンド内に亀裂が走ったら……(笑)」
ーでもちょっと憧れたりしないですか?楽しそうなバンドに。
藤澤「あの、確かに僕、元貴にいろいろ言われたりすることで傷つくことがあるんです。言ってることがわからない、難しいって思うこともある。それこそ元貴から送られてきたデモを聴いて傷つくこともあって。〈これって僕のことを言ってないか?〉って心配になったり……それは〈VIP〉って曲なんですけど」
大森「〈買い被りってなんだっけ〉とか〈君を高く評価しすぎたようだ〉とかね」
ーそれが自分に突き刺さったと。
藤澤「でもそういう言葉をどうして元貴はわざわざ言うんだろう?っていうのを考えて。普通の人間関係、例えば友達でも仕事関係でもそんなことわざわざ口にしなくていいことじゃないですか」
ー本当にそうですね。
藤澤「でも今まで自分が疎かにしてきた部分を突かれて思うのは.....わざわざ言ってくれること自体、元貴の優しさというか、優しい人なんだなって。それが彼の作る曲から感じられるので」
ーっていうことらしいけど、どうですか?
大森「それは……よかった(笑)」

2019.12月号

ーそうですね。じゃあ最後に意地悪な質問をするけど、そういう関係を楽しいって思えるのは、バンドに追い風が吹いてるからでもあるわけで。この先バンドに向かい風が吹くことがあっても、今みたいな前向きな気持ちで続けていけると思いますか?
全員「…………」
ー綾華さんどうですか?
大森「正直に言って(笑)」
山中「うーん……正直に言うと、さっきバンドの何が楽しいかって話じゃないけど、自分は大森元貴の作る楽曲を演奏したりバンドとして動いてるのが楽しいから、向かい風が吹くことになってもミセスの曲を演奏することができるだけで……」
大森「え、マジで!?(笑)」
山中「うん。私の場合、演奏するのがとにかく好きでバンドをやってるから。それができればどんな向かい風が来て、どういう状況に陥っても、そう思えるような気がする。まだそういうことに直面したことがないから想像でしかないけど」
大森「それって綾華にとって、バンドを繋いでる本質さえ変わらなければ大丈夫ってことでしょ?もっと言うとバンドでご飯が食べられなくなってもっていう……僕はそこまで思えないかもしれないな」
ーでもドラマーってそういうシンプルな理由でバンドにいる人が多いし、そういう人がいないとバンドって続かないから。ドラムを叩いてるだけで楽しい!みたいな。
大森「あ、そうなんだ!綾華って……すごいな(笑)」
山中「そうかな?(笑)」

2019.12月号

ーバンドがどんなに大きくなっても寂しさは埋められない、みたいな話もしたけど、これは寂しさの塊でしかないと思いました。
「うん。作った本人も強くそう思ってるから、マジでそういうアルバムになってると思う。今までは、憂いって作品の中でエッセンスとか片鱗とかパンチラインだったと思うんだけど、今回はもう……それが主成分だから」
ーどうして主成分にまでなったんだと思う?
「わかんない。とにかく〈嫌だー!〉って思ったから」
ー何が嫌だった?
「それ……言わせるの?(笑)。だって本当に……そういう星のもとに生まれたというか、生きていく上でずっとあるものなんだなって」
ー説明が曖昧です(笑)。
「だって無理だもん!(笑)」
ーじゃあ……これは僕の独り言だと思って聞いてほしいんだけど、ミセスに限らず、バンドが解散したり、メンバーが抜けたりってやっぱり寂しいわけですよ。
「そうですよね」

2022.8月号

ー3人での取材は初です。
大森元貴「え、そうだっけ?」
藤澤涼架「『Unity』の時は元貴ひとりで」
若井滉斗「そうだった」
ーなので初っ端から豪速球を投げますけど……今の3人は仲いいんですか、悪いんですか?(笑)。
大森「ハラスメントだ!(笑)」
若井「いい…はず(笑)」
藤澤「いい、はずです!」
大森「ムリして言う必要ないよ!」
若井「そうか、逆に嘘っぽくなっちゃう(笑)」

2023.6月号

ーぶっちゃけ、今年前半の活動を見ながら思ってたのは……「フェーズ2っていつ終わるの?」ってことで。
大森「はははは。いいね、そういう話しようよ」
ー半分冗談だけど、こんな全力疾走みたいな活動をずっと続けられるはずもなく。事実、このバンドは1回活動を止めてるわけですから。
大森「まぁね。でも休もうと思ったらいつでも休めるものだと思ってるから。『休むのが怖い』って言ったことと矛盾するけど」
ーそれだけ今が充実してるってことですよね。
大森「そうそう。本当にそのとおりです。すごく充実してます。ただ、それが決してオールハッピーなわけではなくて……うん、そこだけ伝わればいいかな」

2024.8月号

☆愛あるレビュー

ここまではミセスのメンバーとの掛け合いで垣間見える魅力についてピックアップしてきましたが、ここからは樋口さんが書かれるレビューについて見ていきたいと思います。

レビューと言えど、インタビューの前説として書かれているものもあれば、発売されたアルバムについて総評されているものもあるのですが、総じて樋口さんのミセスへの愛がものすごく詰まっているところが、素敵なとこでもあり、大好きなところです。

ひとつだけ言っておきたいことがある。この人はどんなに自分が辛くなったり他人に対して距離を置いたとしても、決して誰かを裏切ることができない、ということだ。それは本人にとって厄介で面倒くさい部分なのかもしれない。でもその優しさが彼の魅力でありMrs. GREEN APPLEという音楽が多くの人に愛される理由なのだ。

2019.5月号

バンドにとって初となるアリーナツアー〈エデンの園〉、その最終日となった代々木第一体育館での公演。それは大衆がイメージする非の打ちどころのないエンターテインメントがありながらも、バンドで音を鳴らすことに心から喜びを感じている5人がいた。むしろ彼らが無邪気に音楽を楽しんでいること自体がエンターテインメントになっていた。あんなデカいステージで子供みたいに泣いたり笑ったりする4人と、それに戸惑いながらも万感の思いに包まれている大森。やっと彼の寂しさが報われた瞬間だと思った。今回のインタビューで彼が言っていたように、あのステージでも彼は寂しさを感じていたし、やはり心の穴は埋めることができない。でもキミが求める〈愛〉がそこにはたくさんあったでしょ?愛に包まれて幸せな気持ちになったでしょ?もうわかっているだろうけど、寂しいから愛があって、誰かを愛するから寂しいんだ。その答えあわせの日々が〈フェーズ1〉という序章であり、バンドの物語は本編となる〈フェーズ2〉へと受け継がれることを。愛、を標榜してどこまでも突き進んでいくバンドが贈る『5』は、そんな彼らの序章を一冊に綴じたアルバムなのだ。

2020.8月号

誰もいない部屋の暗がりでひとりぼっちのまま、彼は大きな喪失感とともに自責の念に駆られている。自分のせいでバンドを止めてしまったこと。大切な人たちを待たせてしまったこと。さらに、永遠だと思っていた仲間を失ってしまっただけでなく、それによって多くの人たちを悲しませてしまったこと。それらすべてを悔いている彼の心情が、今回のインタビューで明らかになった。孤独な少年時代を経て、ミセスというバンドで仲間と出会い、そこからさらに彼は多くの人に愛される存在になったにもかかわらず、自分自身は人をちゃんと愛することができない。そう思っているのだ。
それでも彼は人を愛したいし、誰かに愛されることを願っている。その根源的な欲求から逃れられない自分に対して、彼は必然的に希望を唄う必要があったのだろう。ミニアルバム「Unity」のリリース、そして復活ライヴを開催する7月6日へ向けて準備をしているタイミングで書き下ろされたというこの曲には、そんな生々しい彼の感情が刻まれているのだ。

2022.12月号

「支離滅裂だと思うほど曲ができた」と大森がアルバム制作を振り返っていたが、それほどまでにバラバラな楽曲が一枚に収められていること自体、本人が言うとおりヘンテコなアルバムだとは思う。にもかかわらず、このアルバムの下に敷き詰められているのは、〈Mrs.GREEN APPLEはバンドである〉という姿勢であり、思想のようなものだったりする。大森がすべての詞曲を手がけているのはもちろん、バンドを取り巻くチーム全体を牽引する立場でも、彼ひとりではこんなアルバムは作れなかった。つまり、支離滅裂なのは彼が書いた曲だけでなく、彼自身の心、だったのではないだろうか。見えないバンドの行き先。冷静にジャッジができない心のダメージ。傷を負って初めて仲間に見せた弱い自分。5人から3人になったことで、彼は自分の弱さや脆さを認め、さらけ出し、自分自身を支えてもらうことを求めた。ボロボロだった彼の心に絆創膏を貼るように、若井と藤澤はひとつひとつの楽曲と向き合い、その傷を共有していったのかもしれない。彼らだけが知る悲しみや痛み、そして一緒に見てきたたくさんの歓喜の風景。それを一枚のアルバムに託した。そういうことなのだろう。
だから「BFF」の世界には、彼ら以外誰も立ち入ることができないのだ。素晴らしい曲だけど、3人にしかわからない思いがある。そんな曲を大きな会場で、たくさんの人の前で披露する一あぁ、やっぱりバンドって最高だなって思う。

2023.8月号

☆素晴らしすぎるライブレポート

さて、ラストはライブレポートです!

樋口さんの書くライブレポートはですね、インタビューで出てくる樋口さんらしさに加えて、優しさと愛が感じられてですね、毎回読んでいてめちゃくちゃグッとくるんですよね。

今回は特に好きな箇所を抜粋してみましたので、こちらをどうぞ!

(※エデンの園について)
メンバーそれぞれが涙まじりで口にした。思いが込み上げて号泣してしまった若井に驚きつつ思わず笑ってしまった大森も「彼とは中学からの仲なんで、さすがの僕もクルものがありますが」と、早口で本音を漏らしていた。でも本当の彼はもらい泣きをしてもおかしくないほど、こみ上げてくる思いがあったのではないだろうか。
おい大森、今はここで自分が泣いてる場合じゃないっていうのは立場的にも性格的にもわかるけど、もうそういうことじゃないだろ?キミが孤独と闘いながらバンドをやる季節はもう過ぎたんだ。仲間とただ純粋に、楽しく音楽を分かち合うことがようやくできるようになっただろ?だったらその喜びを素直に出してもいいじゃないか。でもそうか、そこまで自分を解放するのはちょっと難しいのか。やっぱりそうか、だから4人はキミの代わりに涙を流してくれたんだ。人目を憚らず、ずっと寂しい思いをさせてきた仲間のために、彼らはー。
これ以上勝手な憶測で書くと、あとで本人から怒られるからやめておこう。でも、これだけは確かだ。7年の歳月を経て、ようやく大森はひとりぼっちの自分から解放され、仲間と音楽をわかち合える人になった。彼がずっとバンドで目指していた夢、そして理想。つまりエデンの園にやっとたどり着いたのだ。

2020.4月号

(※NOAH&Atlantisについて)
思えばバンドの道のりもそうだったのではないだろうか。順調満帆に見えたフェーズ1も、メンバーそれぞれにとっては常に崖っぷちの連続だったはず。さらに大森にいたってはどんなに愛されても埋まらない孤独があることを、5年間の活動の中で知ってしまった。孤独は消えないし視界不良のまま旅は続けられない。だから彼らは歩みを止める必要があった。バンドと自分自身を立て直す期間が必要だったのだ。そして彼らは去年、もう一度帆をあげ、旅に出た。そんな自分たちのこれからの航路を、どうか見守ってほしいし。それがこのツアーに込められた彼らの思いなのだろう。
(中略)
歳も重ねたしいろんな経験を積んだ。大人のフリじゃなく、本当に大人にならなきゃ前に進めない辛さも味わった。でも、もういいよ。ここまで来れば大丈夫。彼はきっと、中学時代の大森元貴にこの景色を見せてあげることができたのだろう。ずっと心配していたのは、彼があの頃の自分を忘れてしまうこと。だから、彼はずっとこの日を10年待ち焦がれていた。あの頃の自分に「もう寂しくないよ」って言ってあげられる日を探していた。その願いがこの日、ついに叶ったと、強く思えるようなライヴだった。

2023.10月号

(こちらのレポートはネットで公開されているので、是非ぜひ読んでみてください!!↓)

(※ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~について)
〈傷をも誇れる花になろう〉ーずっと彼が憧れていたのは、それだった。キレイで見栄えがいい花に自分がなれないのはわかっている。だから自分の弱さを歌にすることで、承認欲求を満たそうとした。でも弱さだけじゃダメなんだ。タフな花じゃないとすぐ枯れてしまう。けどありがたいことに、自分に毎日水をくれる仲間がいる。だったらもっと強くなれるのかもしれない。そんな思いが今、この場所に彼を立たせているのではないか。いくつもの花びらが舞う映像を背負いながら、悠然と限う彼を観ながらそんなことを思った。大森元貴は今、強くて優しい人、憧れていた自分にたどり着いた。300人の前で「CONFLICT」を唄ってた頃から、ずっと今の自分を追いかけてきて、ようやく今ここで出会えた。あの日の「CONFLICT」の記憶をここで重ねてしまったのは、今の大森が18歳の彼をここに連れてきたからなのかもしれない。ほら、ついにキミは憧れていた人になれたんだよ、と。
(中略)
ダブルアンコール。「ひとりひとりの出会いに感謝してます」と大森が告げてから始まった「我逢人」は、彼が自分自身に向けて唄っているようだった。〈貴方はその優しさで/傷を負う日もあるけど笑って〉ーずっと彼は同じ思いを歌に託してきたんだと、この日改めて思った。この曲との出会いも「CONFLICT」と同じ日のライヴだったけど、ずいぶんキミはタフになった。あの頃のキミは自分の弱さを差し出すことしかできなかったし、まずは自分の傷を癒してもらう必要があった。でも今は違う。誰かの傷に絆創膏を貼って、さぁ一緒に行こうよと声をかける強さがある。そういう人に、ようやくなれたってことなんだ。
「ケセラセラ」でついに幕を閉じたライヴ。でも、ミセスの戦いはまだ終わらない。彼らの優しさを必要とする人たちが、この世にいる限り、さらに強くあろうとするはず。そして、いつか必ず迎える〈終わり〉まで、彼らは笑顔で走り続けるのだろう。
それがこのバンドの宿命なのだ。

2024.9月号

☆番外編

最後に、樋口さんのインタビューの中でシンプルに面白かったところを抜粋して終わろうと思います!笑

ー例えばこのアルバムで言うと「クダリ」って曲。これ聴くと、初めてミセスのライヴを観た時のことを思い出す。
「デビュー前ですよね。ライヴで〈CONFLICT〉をやって、それで取材したいって思ってくれたって」
ーあと、初めてインタビューした時、俺のツッコミに冷や汗をかいてた大森くんの表情とかを思い出す(笑)。
「はははは、やめて!」

2019.11月号

ーそういう意味でのフェーズ1が終わって、次のフェーズに向かう時期……ってことなんだろうね。
大森「そういうことなんじゃないですか?」
ーそのタイミングでリーダーが代わるのも、向かい風を髙野くんが全部受け止める担当というか(笑)。
大森「サンドバッグ担当ですから」
全員「ははははは!」
大森「ベースとサンドバッグ担当なんで(笑)」
ーじゃあ本当にそういう時期が来たら、髙野くん単独インタビューで。
大森「ああ、ぜひぜひ」
髙野「僕が運気を上げるんで」
ーすごい、最後にリーダーっぽいこと言った(笑)。
全員「はははははははは!」

2019.12月号

ーベストの中からフェーズ1を象徴する10曲をピックアップして語っていただきますが、並べて思うのは……どの曲も明るいんだけど、歌詞には大森くんの暗部が漂ってるなと。
「えー、そんなに暗いかな?」
ーまぁ、能天気ではないなと。
「最初から『能天気ではない』って言ってよ!(笑)」
ーすまん(笑)

2020.8月号

ーじゃああとはフェーズ2が始まるのを楽しみに待ってることにします。
「フェーズ2は……宇宙レベルのことをやりたいっていうのが今僕の頭の中にあることで」
ーなんだその宇宙レベルっていうのは(笑)。
「宇宙なんですよ(笑)。きっと樋口さんは頭を抱えるだろうなっていうような内容ですよ」
ーじゃあ聞きたくない(笑)。
「あはははは!」

2020.8月号

ー休んでてもフェーズ2のことが気になってしまうとか?
「そこまでフェーズ2のことにプレッシャーを感じてたわけじゃないけど、単純に〈やべぇ、何かしなきゃ!〉みたいな感じではありましたね。なんかやってないと不安になるというか。みんなに忘れられちゃうんじゃないか、何もなくなっちゃうんじゃないか、みたいな焦りはあったと思う」
ーという焦りを1、2ヵ月で。
「迎えましたね」
ー損な性格だな(笑)。
「はははははは!」

2022.8月号

ー世間とか企業っていうデカい存在と向き合うようになっても、曲を書く理由は変わらないと。
大森「うん」
ーっていうのを聞いて2人はどう思う?
大森「出た、誘導尋問(笑)」
ー誘導してない(笑)。大森くんが今話してくれたことを、自分に当てはめて考えてほしいんですよ。
藤澤「元貴が『楽しいから作る』って言葉を僕らの前で言ってくれることが嬉しいです。11年間、ずっと元貴の傍にいたので、今でもそう思いながらいてくれることに良かったなって」

2024.8月号

いつどこで誰と話したのかをしっかり覚えてる大森に、さすがの2人もその記憶力に驚いてる様子。「よくそんなことまで覚えてるね」と誉めると「だって覚えてないと樋口さんにイヤミを言われるから(笑)。そういうところからインタビューで突っ込むでしょ?」と、勝ち誇った顔で返す大森。そう、インタビューは戦いなのです(笑)。

2024.8月号

以上で、樋口さん編は終わろうと思います!

思ったより長くなってしまいましたが笑、
少しでも樋口さんの魅力が伝わっていればなぁ、と思います。

残りは布施さん!
今年中には頑張って書き切りたい…(遠い目)

ということで!(どういうことだ)
ここまで目を通してくださりありがとうございました!!👋🏻

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