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ピンクじいさんは心臓に毛が生えてる? それをレポートするおいらの心臓ときたら

また現れました。全身ピンクのおじいちゃん。
毎晩のように私が行くスーパーマーケットに1人で来ます。恥ずかしくはないのかなぁ。

見たところ70代後半から80代くらいの男性です。白髪で白いひげを伸ばしています。やや猫背なのは歳のせいなのか。それでも小走り気味に弁当売り場に一目散にやってきます。とても健康そうです。

上着は濃いめのサーモンピンクのフリース。オレンジ色寄りですが、まごう事なきピンクです。私が見かけるようになったのは去年の秋からで、そろそろ暑くなってきましたから、フリースを脱いでくれるでしょう。ピンクのTシャツ持ってるよね。違う色も持ってるのかなぁ。期待しちゃうよ。

ズボンはショッキングピンク。野球帽も、リュックもピンク。どれも毎日身に付けているようです。少し黒ずんで汚れています。
ポケットに押し込んだケータイからぶら下がっているマスコット。ウサギかクマかはっきりわかりませんが小さなぬいぐるみもピンクです。すごいです。

マスクはピンクではないものの、普通の白いものでなく肌色です。ああ最近では肌色と言わないのか。これも面倒ですね。マスクメーカーはベージュといったり、色鉛筆などでは”うすだいだい”とかペールオレンジというように配慮しているのだそうで。レポートするのも気を遣います。

靴は……この日は黒いスニーカーでした。全身ピンクではなかった。きっとピンクの靴かビーサンくらいお持ちでしょう。この日はたまたま何かの事情があって黒を履いてきただけでしょう。
自転車で来ているのも見ました。その自転車は……残念ながらミントブルー色でした。そこは妥協されているのかな。ピンクでペイントしてほしい。家はどうなっているんだろう。

あれ? 別におじいちゃんにそこまでしてほしいと思う理由もない。素性を知らない他人なのに。
私とピンクじいさんがよく会ってしまうのは、お互い閉店間際の値引シールが貼られるお弁当狙いだからです。独り身の男の狙いは同じです。たぶんおじいさん一人暮らしでしょ。違うのかな。

しかしお得を狙うのは寂しい男だけではありません。普通に主婦と思しき女性や若いカップルもいれば、小さい子どもを連れた家族までいます。知り合いの女性に話したら、子どもはそんな夜遅くまで出歩いてちゃいかんでしょとプチ憤慨していました。
確かに。夜9時なら小さい子はもう歯磨きして寝るものです。「8時だよ全員集合」で加トちゃんが言ってたように。
あのセリフは低俗番組と言われながら放送を続けるせめてもの罪滅ぼしだったのでしょうか。TBSも用心深いところがあったのかな。

ともかくいろんな人が20%引きでは満足せず、30%引きそして半額シールが貼られるのを待ち構えています。争奪戦です。

ところがピンクじいさんは、そこまでがめつい様子はありません。意外にも20%値引シールのうちに買って帰るようです。私はしつこく待っているくちなので後を追えませんが、どういうことでしょうね。てっきり着る服があまりない、貧しい人だと思ってしまったけど、違うのかな。こういうステレオタイプも咎められそうですね。

全身ピンクの服装も、まだ若い女性なら理解できます。また決めつけてしまうような、最近はこれも素直に書けないのか。いや、仮に全身真っ黄色のおばあちゃんでも、グリーンマンでもいいのだけど、毎晩の買い物になぜ全身を一色で包もうとするのでしょう。どうせなら全身レッド、全身ブルーの日もやってもらうと、ひとりゴレンジャーのようになって、見る側も楽しめそう。

全身ピンクといえば林家ペー・パー子夫妻が有名ですね。最近はZAZYという芸人さんもそう。
だけど芸人さんは目立つことも仕事のため。覚えてもらってなんぼ。一般人が普通することではないでしょう。もしこのおじいさんが弁当売り場でなく、ステージで特技を披露するとかなら、衣装としてご自分をアピールするために全身一色で染めているのなら、何ら不思議なことはない。80じいちゃんが全身ピンクでもイエローでもステージパフォーマンスされるなら、見てみたい。

多様性を認める時代だから、全身何色だろうが、汚れていようが、人を外見で判断してはいけないのは頭では理解できますよ。好奇心はいけないのだろうか。それって失礼なことなのかな。

目立たない色で全身固めるのは、やはり目立ちにくい。最たる例が大学生や短大性の就職活動。みんな全身グレーか濃紺のスーツ姿でさ。あれはみんなが同じだからそのほうが悪目立ちする心配はない、色も地味系なので目立たない、無難な服装だってことでしょ。それ、没個性でしょ。
個性を服装で表したっていいじゃない。内面を見ようとするのが面接だけど、形もアピールポイントにしたっていい。それこそ多様性じゃないですか。
そこへいくとお笑いタレントのカズレーザーさんはタレントになる以前、普通に一般企業へ就活する時からすでに赤いスーツで面接を受けたそうです。メンタルの強さ、半端ない。

おいらも、いつも変わり映えしないトレーナーとジーンズでスーパーに行くのをやめて、いっちょ真っ赤な格好して半額弁当買いに行って、悪目立ちしてみますか。
ノミの心臓なのでそんなことはできないけれど、ピンクじいさんのことはもっと知りたいので、勇気を出して話しかけてみようかな。

《2023.5.15天狼院書店ライティング・ゼミ13本目》

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