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大雪被害と地球温暖化
こんばんは、nooooon(@nooooon_met)です。
1月7日からの大雪はピークを越えた一方、昨日から今日にかけて日本の南を通過した低気圧の影響で、太平洋側でも雪が降り、東京でも初雪が観測されました。
(いわゆる『南岸低気圧』というやつです。)
東京の都心で初雪を観測 気象庁 #nhk_news https://t.co/Rnj6jGpJQd
— NHKニュース (@nhk_news) January 12, 2021
さて、降雪のピークを越えたとはいえ、日本海側では、積雪深が平年値の数倍となっている地点が多数見られる状況となっています。
※1
一方、パリ協定に関わるカーボン・ニュートラルについての取り組みを進めることが首相の所信表明演説で言及されるなど、『地球温暖化』への関心がより高まっていきそうな状況もあります。
ここで、「地球は暖かくなっていくんだから、雪も降らなくなっていくんじゃないの?どうしてこんなに被害が出るの?」という疑問が湧く方もいらっしゃるんじゃないかと思います。そこで、今日はそのあたりについて少しまとめます。
1.地球温暖化と降雪・積雪
ちょうど1ヶ月ほど前、文部科学省と気象庁から『日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—』が発表されました。
【報道発表】(R2.12.4)『#日本の気候変動2020』を公表しました。有識者の助言を受けて作成した #気候変動 に関する報告書で、#温室効果ガス の状況や、気候システムを構成する諸要素に関する観測事実と将来予測がまとめられています。#いのちとくらしをまもる防災減災https://t.co/dmKPUKmqPo pic.twitter.com/woNyn4l507
— 気象庁 (@JMA_kishou) December 4, 2020
まず、詳細版では以下のとおり記述されています。
観測事実
1962 年以降に観測された日本の年最深積雪には、日本海側の各地域とも有意な減少傾向が見られる。1 日に 20 cm 以上の降雪が観測される日数も、各地域で有意に減少している。
(※2)
今回の大雪で被害の大きかった北陸地方(下図では「東日本の日本海側」にあたる)でも、年最深積雪については減少傾向が見られます。
※3
パッと見ると、今回の大雪には整合していないようにも思われるかもしれません。ただし、グラフをよくよく見ると、長期的な変化傾向が「減少傾向」なだけで、年毎の値を見ると、突出した積雪深になった年もあることが分かります(近年だと2018年)。
また、この報告書の本編を読むと、今後の降雪や積雪について以下のように書かれています。
7. 降雪・積雪は減少するが、大雪のリスクは残りうると予測される
北海道の一部地域を除き、地球温暖化に伴い降雪・積雪は減少すると予測される(確信度が高い)。
平均的な降雪量が減少したとしても、ごくまれに降る大雪のリスクが低下するとは限らないことが示唆される(確信度が低い)。
(※4)
降雪・積雪が減少することは、地球温暖化に伴い、降水が雪ではなく雨として降る可能性が高まることを考慮しての見込みとなっています。また、温暖化の進行度合いによっては、気温が高まることによって雪の降る期間自体が短くなることで、積雪が減少するという可能性も示唆されています。
一方で、何より注意しておきたいところが、(確信度は低いものの)「ごくまれに降る大雪のリスクが低下するとは限らない」とされているところです。
この理由は本編に参考としてまとめられていて、とても重要だと思うので、長いですがそのまま抜粋します(詳しい解説は詳細版に書かれています)。
【参考】なぜ大雪のリスクは残るのか
地球温暖化と降雪の関係を考える時には、次の 3 点を考慮する必要がある。
それは、
①気温が上昇しても 0℃以下であれば雨ではなく雪として降ること、
②気温が上がるほど空気中に含まれうる水蒸気の量は増えること、
③地球温暖化が進行すると日本海の海面水温も上がるため、寒気の吹き出しの際によりたくさんの水蒸気が大気に供給されること、
である。
本州の日本海側で大雪が降るのは、強い寒気の吹き出しがあった時や、冬の季節風が大陸側で白頭山などの山を迂回したのち日本海で合流する、「日
本海寒帯気団収束帯」が発生した時である。
この時、地球温暖化が進行した状況では、よりたくさんの水蒸気が日本海から大気に供給されるとともに(③)、大気もより多くの水蒸気を蓄えることができる(②)。
従って、沿岸域など気温が 0℃を超えている地域では大雨が降るが、気温が低い内陸部や山地では大雪として降ることになるのである(①)。
(※5)
大雪となるリスクが高まるのは内陸部等が中心になるように書かれていますが、③の海水温上昇というのは、一時的に寒気が入った時などには沿岸部での大雪にも効いてくるのではないかと考えられます。また、それとなく書いているものの、沿岸部では大雨になるという危険についても気になるところです。
2.「天災は忘れたころにやってくる」
さて、今後も大雪はまれに起こりうる・・・ということを聞いたときに連想するのが、物理学者の寺田寅彦氏がおっしゃった(とされている)こちらの言葉です。
雪が多く降ることに慣れていた時代には、「毎年このくらい降ってるし」と思いながら当然のように対策・対処できていたことが、雪の降る量が減っていくにつれて経験が忘れ去られていき、いざ豪雪になった際に対応する術が分からなくなる・・・といったことが起こりうるのではないかと思います。
大雪に限ったことではなくて、他の自然災害にも通じるところですが、このような経験をまとめ、継承していくことが重要になります。
3.素因と誘因
また、そもそも自然災害というのは、大雨や大雪によって必ず発生するというものではありません。対策を十分に取ることで被害が生まれなかった場合は、災害が発生したとは見なされないからです。
自然災害は、『素因』に対して『誘因』が作用することによって生じるものとされています。『誘因』というのは、大雨や大雪といった「災害を引き起こす引き金となる自然力のこと」を言い、『素因』には「地形・地盤条件など地球表面の性質にかかわる自然素因と,人口・建物・施設など人間・社会にかかわる社会素因」があります(※6)。
今回の北陸地方での大雪の際は、道路での車両の立ち往生が課題となっていました。これは、「大雪が予報されているなかでも車両を走らせる必要がある」という社会素因があるところに、「大雪」という誘因が作用したことによって発生してしまった災害だと考えています。
以上、今回の大雪で感じたことを、(若干とりとめのない形になってしまった感がありますが)まとめました。
まだ大雪によって孤立した集落が残っているところもあるようで、一刻も早く解消されることを祈ります。
そんな、今日このごろ
※画像は気象庁HPから
2→https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2020/pdf/cc2020_shousai.pdf#page=95
3:グラフ(a)・(c)については省略→https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2020/pdf/cc2020_shousai.pdf#page=97
4→https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2020/pdf/cc2020_honpen.pdf#page=24
5→https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2020/pdf/cc2020_honpen.pdf#page=25
※6:2021.1.12閲覧・抜粋→http://takemizu.life.coocan.jp/kouza/prevent/01hajimeni/preface.html