山岳波と波状雲
こんにちは、nooooon(@nooooon_met)です。
先日(2/4)、衛星画像を見ていたところ、東北地方あたりに特徴的な雲が現れていました。下に掲載した衛星画像の白くなっている部分は、基本的には雲を表しています。
動画で見ると、より分かりやすいのですが、
北北東~南南西に伸びる雲が、東西にいくつか連なっているように見えます(画像の赤破線内)。
どうしてこのような雲が発生するのでしょうか。その秘密は、この地域の地形にあります。地理院地図を見てみると、東北地方にはおおよそ南北に奥羽山脈が連なっており、標高1000m程度となっているところが多いとされています。
このような山に対して直角に風が吹くとき、山越えする流れに沿って大気が上下する波(山岳波)が発生し、その波によって一定間隔に連なる雲が発生することがあります。このような雲のことを波状雲といいます。
波状雲のより具体的な成因は、気象衛星センターの下記ページで解説されています。
試しに、今回の波状雲が発生していた際の風を調べるため、ウインドプロファイラのデータを見てみましょう。高度1[km]を平面的に見てみると、酒田(山形県)や、仙台(宮城県)といった東北地方の観測地点では、継続的に西北西の風が吹いていました。
また、各地点の時間高度断面図を見てみると、より下層でも同様の風が吹き続けていました。
風向は山脈に対してほぼ垂直、山頂付近と思われる高度1[km]では風速10[m/s]程度が観測されていて、前述した気象衛星センターHPで示されている波状雲の発生条件を満たしていると考えられます。
また、同ページで例示されているように、風上にあたる秋田での高層気象観測結果を見てみると、下層から上層へ風速が増しており、925[hPa]~820[hPa]あたりで湿度が高くなっていました。これらの点からも、波状雲が生じやすい環境であったと考えられます。
以上、衛星画像で見た雲を、さまざまな観測データから見てみました。視覚的に面白いと感じたことを、こうやってデータを使って解析・考察できるところも面白いですね。
ちなみに、見出し画像の波状雲は、今回取り扱った東北地方でのものとは異なり、関東地方で撮影したものです。山岳波以外に、ジェット気流のような流れによっても波状雲は発生することがあります。ということで、周りに山が無いようなところでも、空を眺めていると見つけられるかもしれませんよ。
そんな、今日このごろ
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1:画像はひまわり8号リアルタイムWebから→https://himawari8.nict.go.jp/ja/himawari8-image.htm
2:画像はひまわり8号リアルタイムWebから(一部、線を加筆)→https://himawari8.nict.go.jp/ja/himawari8-image.htm
4:画像は気象庁HPから→https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#7/&contents=windprofiler
5:画像は気象庁HPから→https://www.jma.go.jp/bosai/windprofiler/#code=47587&type=chart
6:画像は気象庁HPから→https://www.jma.go.jp/bosai/windprofiler/#code=47590&type=chart