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前線通過とエマグラム

こんばんは、nooooon(@nooooon_met)です。


先月のお話になりますが・・・11月16日から17日にかけて、本州付近を低気圧や前線が通過しました。特に、関東付近に注目すると、17日9時には関東地方付近に温暖前線が近づいていました。

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茨城県つくば市には、上空の気温や湿度等を測る「高層気象観測」を行っている高層気象台(館野)があります。そして、高層気象観測の結果を地上から上空にかけて表した資料としてエマグラムというものがあるのですが、そちらに特徴的な観測結果が現れていました。

エマグラムの見方として、横軸では温度が、縦軸では気圧が示されています。気圧は上空ほど低くなるので、低圧になるほど高度が高いとみなせます。
また、黒い折れ線が2本描かれていますが、右側の折れ線気温を、左側の折れ線露点温度を表しています。露点温度と言われてもピンと来ないかもしれませんが、簡単に言うと、気温と露点温度の差が小さいほど、相対湿度が高いです。エマグラムを見たとき、同じ気圧で2つの線が近づいていると、その気圧にある空気は相対湿度が高くて湿っている・・・雲があるというふうにも捉えられます。

では、2023年11月16日12Z・17日00Z(日本時間ではそれぞれ21時・09時)の館野のエマグラムを見てみましょう。

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今回特に注目したいのは、赤破線で囲んだ部分です。大気の性質上、地上から高度10[km]あたり(対流圏界面)までは、高度が高くなるにつれて気温は低下していくようになっています。つまり、エマグラムでは温度線が左に向かって傾斜しています。

しかし、赤破線で囲んだ部分(16日12Z:450[hPa]付近、17日00Z:700[hPa]付近)では、高度が高くなるにつれて気温が上昇していることが見てとれます。このような大気の層は、「逆転層」と呼ばれています。逆転層が生じる要因はいくつか挙げられるのですが、そのうちの1つである、前線に起因した「前線性逆転層」が生じているのではないかと思います。前線性逆転層は「移流逆転層」とも表現され、冷たい空気の気団の上に暖かい気団が乗り上がっている状態が現れています。今回の場合、関東地方に向かって温暖前線が徐々に近づいてきていたことから、この前線に関する逆転層が現れていたのだと思います。温暖前線では、前線の後面から前面に向かって上空に寒気が乗り上がっていくような状況になっていることから、前線が近づくにつれて逆転層の高さも下がっていったことが見て取れます。

なお、この時のエマグラムでは、橙破線の部分にも逆転層が見られます。前述した前線性逆転層とは異なる特徴として、この部分の逆転層では気温と露点温度の差が大きくなっている、つまり、乾いた空気となっています。この逆転層はおそらく「沈降性逆転層」という呼ばれるものだと考えられます。

逆転層には、このほかにもいくつか種類があります。『総観気象学 基礎編』という教科書で説明されているので、興味があれば読んでみてください。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/textbook_synop_basic_20210831.pdf#page=45


記事にするのが遅くなってしまいましたが、このように教科書等で理論的に勉強したことが、日常的な現象(観測データ)に現れてくるところも、気象学の面白さだと思います。慌ただしい日々が続いていますが、「面白い!」と感じることを忘れずに、日々のデータに向き合っていきたいところです。



そんな、今日このごろ


1:画像は気象庁HPから→https://www.jma.go.jp/bosai/weather_map/

2:ワイオミング大学HPから(一部、線を加筆)→https://weather.uwyo.edu/upperair/sounding.html