【ソロジャーナル】Thousand Year Old Vampireプレイログまとめ
⚫️ 作品紹介
■ これは私に“変貌”して、滅びるまでの記録 / ジャーナリングRPG
「Thousand Year Old Vampire/サウザントイヤー・オールド・ヴァンパイア」でのあなたは、吸血鬼。吸血鬼に変身を果たしてから、その身に破滅が訪れるまで記憶の取得と忘却を繰り返し、日記に綴っていくジャーナリングRPG。
トランプではなく、独特なサイコロの使い方でプロンプトとしての体験と記憶を生成し、それを解釈して記憶していく。しかし、不死者であってもすべての記憶を持って生き続けることはできず、ゲームギミックとして日記の重要性と記憶の忘却が織り込まれているのが素晴らしい。
また、Web小説企画「#文披31題」というInktoberのような企画の一環で遊んでいたため手書きでは遊んでいなかったりもする。
⚫️ Thousand Year Old Vampire プレイログ
◾️ No.1
◾️ No.1-TRANSCRIPT
夕涼みの体裁を取り繕って出た河川敷。蒸し暑さも夕風の涼しさも感じなかった。悲しいのか? 違うな。この腕に残る暖かさと、喉の潤いは幸せと感じられた。
しかし、その幸せは最早誰とも一緒に感じられない。あのときの妖怪退治だ。あの返り血が、私の価値観を覆す。鵺は、死を偽装してみせたのだ。
◾️ No.2
◾️ No.2-TRANSCRIPT
家族に押し付けられた歌会の席に、定武兄が来ていた。背中合わせに座っている兄の方へ向けない。兄の声から、憎悪と怒りが伝わってきた。
暖かい茶が一瞬で温く、お茶請けの味も感じない気がする。これは罪悪感だ。 私の手が兄に鵺の血をうつし、変身させたことへの……。
次に会う時は、殺し合いだ。
◾️ No.3
◾️ No.3-TRANSCRIPT
あなたは、親友であり良きライバルだった。
でも、私の秘密が主人に漏れ伝わって、攻撃にさらされる心配が勝ってしまう。私は、もはや退治される側なのだ。
でも自分が射った矢に対して、“外れてしまえ”と強く願掛けをしたのは初めてな気がする。飛ぶ蝶すら射抜ける自分の技が、今だけはとても嫌だった。
◾️ No.4
◾️ No.4-TRANSCRIPT
最初に身体が変貌してから月日も経ち、血餌を生かす境界も理解し始めた。
それと同時に、寺院境内の庭園で飼われている金魚を無性に鑑賞したくて、夜毎眺めていた気がする。
慈恵という尼僧とは、その夜の庭園で知り合った。
何故、こんな化け物と命と宗教観についての問答をする気になったのだろう?
◾️ No.5
◾️ No.5-TRANSCRIPT
とてもか細い声で呼ばれた気がしたのに、釘付けになった。
実感したのは、私と同類。
でも、私とは違う血で変貌したようで、肌が灰色で染まっていた。
才能を阻害していると、鈴が奪われてしまった。
奴には必要らしく、対価として砂糖漬けとは違う琥珀糖なる菓子をもらう。
見た目と違って柔らかかった。
◾️ No.6
◾️ No.6-TRANSCRIPT
隣の彼女の呼吸から、後悔と葛藤を嗅ぎ取った。
私の答えは、裏切りに気づかないフリ。彼女が盗んだ物は、私には無用の産物だ。
その程度と引き換えに、庭園を眺めていられる平穏が得られるのなら痛くも痒くもない。
この時間に彼女以外の存在が近くにいて欲しくなかった。
言葉にして、伝えるべきか?
◾️ No.7
◾️ No.7-TRANSCRIPT
定武の憎悪は、想像以上だった。長兄を騙し通し、隣国の妖怪狩りとの連合で襲撃してくる。 この地にも、家族の絆も捨てるのに未練はなかった。
未練は、たった1つ。
怪物に成り果てても、異性に恋文をしたためるのは……違った意味で心がざわついた。
彼女は、信仰を捨てるという答えを示してくれる。
◾️ No.8
◾️ No.8-TRANSCRIPT
彼女に別れを告げた日は、天気雨から始まって雷雨に変わったと思う。一体何度雨音と雷鳴を聞いた?
最後に、彼女は何と言っていたっけ? 現実に引き戻されたのは、再び追手が迫っている感じたからだった。何故か衣服がボロボロになり、周囲の風景が様変わりしている。刻印も広がっていた。
今は何年?
◾️ No.9
◾️ No.9-TRANSCRIPT
彼女が亡くなってから、100年過ぎていた。どうやら私は雨に触れると、身体が岩や石のような硬質の性質に変化して仮死状態になるらしい。
少々、厄介な事になった。仮死状態が解けた際、変貌した者の血を啜ってしまう。琥珀糖をくれた者の血脈だったようで、手袋を外すとぱちぱち鳴るようになった。
◾️ No.10
◾️ No.10-TRANSCRIPT
思ったより、滅ぼすのに時間がかかった。
突然現れた鵺との取引で、私のような変貌を遂げて各地へ散った者から根幹となる“血”を回収するカルト集団の殲滅。全員、血を搾り出してやったけどな。
鵺はカルト集団の物から、鉄の箱を持ち去った。
箱の中身は気になるけど、まずは私との取引を守って欲しい。
◾️ No.11
◾️ No.11-TRANSCRIPT
その貴婦人は、喰い殺してと懇願してきた。
最初の失敗で学んだ私は、一度で喰い殺す程の大喰らいではない。
話を聞くに、彼女は人工生命体とやらの母体にされたそうだ。確かに、宿っている者に命の気配がない。錬金術で、母体の命を奪って転換するそうだ。
どれ、錬金術師の心臓を拝んで来よう。
◾️ No.12
◾️ No.12-TRANSCRIPT
茶館で、不思議な匂いを嗅いだ。抹茶とは違う、清涼感と苦味と辛味? 貴族に山菜として食される薄荷、本来この国にはない木の実に香辛料。それらの粉末を混ぜて茶として出されていた。
茶館の主と話をしてみれば、やはり変貌した者。茶の品質を嗅ぎ当てたため、一枚噛ませてもらう。
ちょこみんと?
◾️ No.13
◾️ No.13-TRANSCRIPT
新しい庭園を見せてもらった。禅宗の思想を取り入れたとかで、確かに心の底へ潜っていく感覚がある。自分の底に居座るのは、鵺……。ヤツの姿なのに、声は自分自身。
黙れって言ってやった。
禅宗と融合した建築様式が確立され、より正確な定規が必要となった。自分の力が通った定規は丈夫で長持ちする。
◾️ No.14
◾️ No.14-TRANSCRIPT
禅宗が融合したことで思想的な対立が生まれ、それが引き金となって紛争が起こった。そして、今や戦争。
変貌を遂げた者に、人同士の争いは興味関心がなかった。でも、茶館が燃えてしまったのは悲しい。さやかな夜風を感じながら飲む茶が、あの平穏さを思い出させてくれたのに。
山奥にでも籠るか。
◾️ No.15
◾️ No.15-TRANSCRIPT
さっさと山奥に隠居すればよかった。ふとした偶然で人を助けたら、人ではない事がバレて大騒ぎ。戦時中の不安や怒りも混ざり、町中が暴徒と化した。
皆殺しに……いやもういい。かなり南まで下り、岬が美しいところまで逃げ延びた。
この土地の言葉がわからず、新たな連れに通訳を任せるしかない。
◾️ No.16
◾️ No.16-TRANSCRIPT
新しい日記の1ページが、こんな書き出しで始まるとは。窓越しにいるかのように、鵺から話しかけられた。窓ガラスは漆黒に塗りつぶされたかのよう…。
遠く離れた場所で奴の影響下にある自分に、怒りが込み上げてきた。
我に返ったのは、日記を投げ捨てた後。
あの子に、余計な心配をさせてしまった。
◾️ No.17
◾️ No.17-TRANSCRIPT
こんな気持ちは、随分久しぶりな気がする。
あの子を助けたのは、本当に気まぐれだ。この町へ逃げ落ちるきっかけになったが、私には些細なこと。あと半年で16歳になるから、働き口を探そうとは思っていた。
でも、この家……私の世話がしたいらしい。
同じ時を生きられない事を、納得しているそうだ。
◾️ No.18
◾️ No.18-TRANSCRIPT
あの錬金術師め。私が抜き取った心臓の替わりを入れて、変貌者になるとは。これは、鵺との契約には含まれなかった。
家は仕方ない。あの子に、危害が及ばなくてよかった。
新しい土地では、薄荷と木の実の茶商人として触れ回っている。
家では蚊取り線香と共に、変貌者避けの香を秘密裏に焚き始めた。
◾️ No.19
◾️ No.19-TRANSCRIPT
うつらうつらしつつ、夜明け前の畑を眺めていた。
収穫する農民達が、夜を払う旭光は八咫烏の炎のようと教えてくれる。
確かに、輝かしい炎のような光だった。
これこそ、神々しい。
畑の一角で育つ赤茄子も、光を吸い取ったかのように輝いていた。
琥珀糖をくれた彼ら……逆行者の置き土産がここにも。
◾️ No.20
◾️ No.20-TRANSCRIPT
本棚に、見慣れぬ本があった。逆行者の置き土産が、ここにも。
鵺の“血の記憶”にも、ソレはあった。もはや薄れている記憶がいくつもあるのに、私を変貌させた血には全てが残っている。
彼女の名残が過ぎって信仰を隠れ蓑に、その建築物の情報を人が読めるように書き直した。
摩天楼という名前らしい。
◾️ No.21
◾️ No.21-TRANSCRIPT
地元の若い学士達にせがまれ、書物道具を見せた。彼らの研究によれば古墨や硯、筆の失われた製法が素晴らしい……と興奮しっぱなし。
まぁ、軽く100年は昔の物だ。
私も物語作者になる夢があったし。
何やら、動物を擬人化した絵巻を描くのに古墨を分けて欲しいと頼まれた。
面白そうなので快諾する。
◾️ No.22
◾️ No.22-TRANSCRIPT
一人のときに雨を浴びてしまった。誰にも伝言を残さずに硬化してしまうのは……。
あの子に触れられて、意識が戻ったのがわかった。
雨女だからという彼女が触れている部分から、私を硬化させる雨が吸い取られた気がする。私の呪いも吸ってしまうかもと焦ってしまった。
雨の匂いがわかる気がした。
◾️ No.23
◾️ No.23-TRANSCRIPT
世の中は、確実に変化を受け入れている。変貌者の暗躍というより、逆行者の振る舞いな気がした。しかし、血を吸うとは言っても葦の茎を首に刺すって……怪談の出所は一体?
雨により仮死状態には至らなくなったが、光に弱くなった気がする。
後は、矢だ。正確には太陽石の鏃。鵺に一歩近づいたようだ。
◾️ No.24
◾️ No.24-TRANSCRIPT
不死である変貌者が、人の手によって死んだ。この知らせには、正直驚いていない。大分前に、逆行者から遺言書を渡されていたのだ。
朝凪のとき、変貌の呪いは影響を及ぼせない。まさか、こんな弱点があるとは思わなかった。
遺言状には、この結末を受け入れると書いている。
私も、それに備えろと?
◾️ No.25-END
◾️ No.25-END-TRANSCRIPT
遠くから琵琶の音色と、あの子の今様が聴こえた。
刻印が身体の半分以上を侵食して、身体を起こせない。血を吸わない日が増えれば増えるほど、刻印が広がった。自分とは違う感覚、視界、聴覚、嗅覚が共有されてくる。
あの子の今様が、聴こえにくくなった。
これで、終わりか。遺言は……書いた。
⚫️ ゲームを遊び終えて
さすが、ジャーナリングRPGは「Thousand Year Old Vampire」から始まった……という説があるようにゲームが始まると、怒涛の勢いで物語が頭の中で蓄積されていく様に感じました。トランププロンプトとは違った魅力のある手法です。
少し立ち止まってしまった部分があるとすれば、キャラクター作成の部分でしょうか? サンプルに引っ張られて史実を少し混ぜてみようと思ったら
「この用語は?この歴史は?この人物は?」
と正しく盛り込もうと思考ががんじがらめになってしまったというか……。
こういう症状は自分の中で教訓があって、
まさにこれです(w キャラクタージェネレーターみたいなのがあっても良いのかもしれませんね。
さて、「Thousand Year Old Vampire」は2024年8月から続編の資金調達チャレンジがスタートします。今回遊んでみた体験も踏まえて、この続編は是非とも遊んでみたい。今度は吸血鬼に寄り添う人間側ですよ?
■ 私はその日、吸血鬼に出会った / ジャーナリングRPG(backerkit)
「So You've Met A Thousand Year Old Vampire」は日本語でも発売されたジャーナリングRPG「Thousand Year Old Vampire」の正当なる続編。今回は吸血鬼と邂逅を果たした人間側サイドで日記を書く事になるらしい。
その吸血鬼は、あなたを喰べようとするかもしれないし、友達になりたいのかもしれない。プロンプト主導のプレイは、吸血鬼とあなたの関係性を広げて感情のうねりを激しくする。リソースは存在しないが、吸血鬼から守りたい(あるいは与えたい)人間関係は存在するとか。
資金調達チャレンジは、8月には始まるらしい。