とりっぴいな朝。と私。
ある朝、無職の私が外を歩いていたら空野とりっぴいさんに出会った。
突然のことで驚いたが、とりっぴいさんから語りかけてきて、意外とすぐに仲良くなることができた。とりっぴいさんはジンギスカンが好きなようで、私も北海道によく行く関係上、北海道料理全般が好きになっていた。
その後飲みに行き、今度北海道旅行に行くことになった。
とりっぴいさんと共に。
1週間後、共に北海道の地に降り立った私たちは、真っ先に山に登って行った。新鮮なジビエを獲るためだ。
とりっぴいさんは兎肉も好きなようで、毎回捕りたての肉を食べているようだった。
そのため主人とも知り合いで、スムーズに事が進んでいった。私はほぼ空気だった。
それから私たちは辺りをぴょんぴょん跳んでいる兎たちを仕留め、持ち帰った。
とりっぴいさんは気持ち良さそうだった。
小屋に戻り、主人に下処理をしてもらっている間にとりっぴいさんが少しずつ話し出した。
話を聞くと、とりっぴいさんには動物の同僚がいるとのことだった。
そのメンバーは虎、兎、猫、羊だった。
嘘だと思いたかった。
しかし、嘘ではなかった。
とりっぴいさんは虎と猫と結託し、羊と兎を食べたのだった。
なんでも虎は子供に人気らしく、猫ととりっぴいさんが下僕のような扱いをされているようだった。いわゆるパワーハラスメントだ。
この内容は極秘だったらしく、このことがバレたら自分も焼き鳥にされてしまうと怖がっていた。
私はこの人を守らなきゃいけないと思った。
日帰りだったため、夕方ごろにジンギスカンを食べて東京に帰った。
とりっぴいさんはコンサートでしか北海道に行ったことがなく、初めて旅行として行ったそうだった。
そのためか帰りの飛行機でもお土産を持ち、とてもルンルンとしていた。
羽田空港に戻った後は現地解散し、各々で家に帰った。私は電車で帰ったが、彼はタクシーで帰って行った。
私は大きな憎しみを覚えた。
私は無職で金もほとんどないが、とりっぴいはタクシーで家まで帰れるほど、金を持っている。大きすぎる経済格差だと思った。
私はこどもちゃれんじを始めた。
こどもちゃれんじの教材には、とりっぴいを初め、虎と猫、存命中に撮ったであろう羊と兎の写真もあった。
こどもちゃれんじを初めて半年ほど経った頃、コンサートのお知らせが来ていた。
チケットを手に入れた私は、北海道に飛び立った。
そこでとりっぴいと半年ぶりに出会った。相手は嬉しそうだった。
しかし私が本当に会いたかったのは虎だ。私は虎と連絡先を交換した。とりっぴいに極秘で。
後日、虎の家に行った。彼の家は東京23区内のタワーマンション、贅沢を尽くしたような内装だった。しかしここまでくると、私は感情を揺さぶられることもなかった。
私は彼にとりっぴいに話されたことを伝えた。
全て事実だった。彼は落ち着いたまま私を脅しにきた。彼に情報を売るつもりはない、特に興味も無い旨を伝えると彼は大人しくなった。
所詮虎だ。
彼は裏で動き出したようだった。とりっぴいを焼き鳥にするべく、捕獲計画が動き出したようだた。
そして、呆気なく捕まった。
焼き鳥にする舞台に私も呼ばれた。
とりっぴいは驚いた顔でこっちを見ていた。まさか売られたとは最後まで思っていなかったようだった。
私は親友が下処理される場面を初めて見た。
焼き鳥は絶品だった。彼らが兎と羊を食した理由もなんとなくわかった。
帰ろうとした時、私も捕らえられた。市に虎を放つ如しだった。
このあと、私はとんでもない目に遭ったが、ここでは割愛させていただきたい。
一つ言えるのは、こどもちゃれんじは優秀だということだけだった。