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【見返しレポート】テレビノークスペシャル!#20「出来事からの時間」

カロクリサイクルの活動紹介や、ゲストを招いてテーマにまつわるトークをお届けする配信番組「テレビノーク」。
noteではこれまでのアーカイブ配信を見返してレポートをお届けしています。今回見返すのは、2024年3月10日(水)15:00~に配信した#20「出来事からの時間」です。
アーカイブ配信のリンクはこちら👇


それぞれの「出来事からの時間」を聞く

「カロクリサイクル」は、過去の災禍の記憶や記録をリサーチし、現在に応用可能なことを探す。同時に、今起きていることを伝えようとしている人とも出会い、伝える人たち同士を繋げていこう、という試み。
時代や地域に問わず本当にさまざまな出来事が起こり続けていて、ひとつの場所だけを見ても複数の災禍の地層が重なっている。ちがう経験を持つ人たちが同時代に生きていて、今この時間も苦しい状況に置かれている人がいて……という中で、異なる出来事同士だって関わり合いを持つことができるのでは?手を取り合っていきたい!という気持ちから、今回は「出来事からの時間」というテーマで各地を繋いでお話を伺っていきました。

アーカイブのリンクの概要欄には各パートへ飛ぶタイムスタンプがあります。
秋田の豪雨被害や能登地震、東日本大震災、阪神・淡路大震災、東京大空襲などなど、当日はこのような流れ👇でお聞きしました。

ラインナップ

<part1/秋田編>
ZOOMゲスト:坂口聖英さん(アウトクロップ)
音楽:友部正人『陸前高田のアヴェ・マリア』

<part2/東京編>
インタビュー映像ゲスト:早乙女愛さん(映像編集者)
音楽:作詞/瀬尾夏美、うた/こいそ『おじいさんのうた』

<part3/能登編>
ZOOMゲスト:田中純一さん(北陸学院大学)
音楽:yumbo『鬼火』

<part4/パレスチナ編>
ZOOMゲスト:皆川万葉さん(パレスチナ・オリーブ)
音楽:七尾旅人『Two Palestinians』

<part5/シリア編>
ZOOMゲスト:斎藤良平さん(JIM-net)

<part6/富岡編>
ZOOMゲスト:秋元菜々美さん
音楽:Nami Sato『SHINHAMA』

<part7/スタジオトーク>
スタジオゲスト:清水葉月さん、米津勝之さん
音楽:GAGLE『I feel,I will』

<エンディング>
音楽:カンザスシティバンド『新しい町』

スペシャル配信を迎えるたびに「これまでの生配信時間を更新するだろうな」と覚悟するのですが、今回の配信は実に5時間20分。案の定記録を更新しました。
当日はNOOKの磯崎&佐竹、スタジオ04スタッフの櫻井さんも配信に加わり、前日の予行練習でスムーズだった部分がなぜか直前に機材トラブルが起き、おにぎりを頬張りながら最終確認し……とドタバタでスタートしたものの、ゲストの方々をはじめ同時視聴してくださったみなさまに支えていただき、生配信を完走していたのでした。みなさま、本当にありがとうございました。
お時間のあるときに各パートをちょっとずつご視聴いただければ嬉しいのですが、いくつかのパートを続けて視聴すると、各々の対話の内容がどこかで呼応していたり、バトンを渡すように引き継がれていたり、と繋がっている感覚がより感じられそうです。
ざっくりとですが、各パートを振り返っていきます。

記録づくりとネットワークづくりの両輪


秋田編ゲスト:坂口聖英さん

最初は秋田から。映像会社アウトクロップに所属する坂口聖英さんにご出演いただき、2023年夏の豪雨災害について、記録映像やスライドをもとにお話しいただきました。
アウトクロップのシネマも床上浸水に遭われて急ぎ復旧にあたり、と困難も多かった一方で、気軽に集まれる場所・拠点づくりを若い人たちで進め、ローカルなネットワークを持ちつつ外との流れを楽しみながらつくっている、という進行中の実践に、活気ある雰囲気を感じました。

スライドには、アウトクロップの活動紹介もご準備いただきました


聞き手はスイッチを押す係

次の東京編は、79年が経つ東京大空襲がトピックです。
ルポルタージュ作品「東京大空襲」をはじめ、空襲体験を記録し続け、全国に記録運動の種を広げた作家・早乙女勝元さん。
今回は、勝元さんの長女であり、映像編集者として空襲の記録に長年触れ続けている早乙女愛さんにロングインタビューをおこないました。

早乙女勝元 著 『東京大空襲』👇

東京編ゲスト:早乙女愛さん

意外だったのは「体験を聞くときに、聞き手側がそんなに知識を持っていなくてもいいんじゃないかと思う」という愛さんのお言葉。「聞き手はスイッチを押す係であって、知らない状態でも率直に聞いていい。初対面の間柄でも、話す時は話すから」。これは、これから語る-聞くの営みに合流していく人たちを迎え入れる言葉ですね。
アーカイブだと1:37:00ごろ、インタビューの後のスタジオトークで話していた勝元さんのご葬儀でのお言葉や、記録のコミュニティにまつわるお話もまた、背中を押してくれるものでした。


「そこに住み続ける」を保障する

中盤に続く能登編、パレスチナ編、シリア編では、ゲストの方にお話しいただいた終わりに、いま困難のただなかにある人たちや出来事に対して私たちにできることは?という質問をして、そのコメントもいただいています。

能登編ゲスト:田中純一さん

能登編でご出演いただいたのは、災害社会学をご専門とされている田中純一さん。発災翌日から被災地に入って継続的に支援を続ける田中さんから、当時(3ヶ月目)の現地の様子、現状と課題についてご報告いただきました。

「この地で人びとが住み続けることを、取りこぼすことなく支えていく」

私たちにやれることは?の質問へのコメントでは、「住民ひとりで家の片付けをしようとすると滅入ってしまうけれど、ボランティアが来ているというだけで気力が出る人もいる。大きなことや特殊なことじゃなくて、傍らにいて寄り添うところからできることがある。それは、関わる側にとってもいいことがあるはず」とお答えいただき、積極的に関わろうとすることだと受け取りました。
生配信中はチャット欄へも能登の土地と被災へ思いを寄せるコメントが寄せられていました。


生活があることを想像しながら


続くパレスチナ編では、フェアトレードでパレスチナと長年関わっている皆川万葉さんがご登場。
皆川さんはご自身が関わりはじめた当初を振り返って「土地に当たり前に生活があることを想像できてなかった」とお話しされていましたが、パレスチナの土地にある営みについて、美しい風景や暮らしのお写真とともにこうして皆川さんにお話しいただけたことで、私たちも想像がぐっと近づいていけるなと思いました。

パレスチナ・オリーブ代表の皆川万葉さん

「今はリアルタイムで起きていることがSNSと通じて遠くからも見え、それでも現状を止められないことに絶望的な気持ちにもなる」とも語りながら、「フェアトレードで物を通じて、向こうの暮らしを伝える。できることをやっていく!」と話してくださった皆川さん。パレスチナでつくられた物を買って日常で使い、向こうと自分とが生活同士で繋がっているというのは、確かに、気軽でありつつ深い結びつきです。

パレスチナ・オリーブ👇


出来事と、この1年の歩み

シリア編ゲストの斉藤亮平さん、富岡編ゲストの秋元菜々美さんには、2023年のスペシャル配信にもご出演いただいています。お二人には前回から1年が経ったことも踏まえて今回改めてお話しを伺いました。

トルコ・シリア地震の発災から1年あまり。
地震以前からイラクへの医療支援に携わっているJIM-netの斉藤さんからは、この1年で地震からの復興は全く進んでいないこと、その理由と背景をご説明いただきました。

JIM-netの斎藤良平さん

「現地では数年間家に電気が通っていない暮らしが続いている」とお話が出たときには、国や地域それぞれがそもそも持つ背景によって出来事同士が容易く比べられない複雑さも感じつつ、その上で、難民キャンプに植えられた苗木のエピソードを聞いていると、これまでのテレビノークで度々出ていた“自分たちの居場所に植物を植える”立ち上がりの所作と、やっぱり繋がってるようにも思ったり。

難民キャンプに植えられた花

「たとえば、金額に関係なく少しでも募金してみる。それを自分の心を繋ぎ止める行為としてやってみると、報道がなくても現地について気に留めるようになる」と、私たちができることについてもヒントをいただきました。


まちのコミュニティで、顔が見えてきた1年目


富岡編ゲスト:秋元菜々美さん(猫ちゃんも)

富岡町の秋元さんからは、原発事故後の避難指示が全域解除となったこの1年目を振り返り、「溜めこんできたものが走りはじめた時期」と変化をお伝えいただきました。
お店ができ、同時に解体も進みつつ、その場所でやりたいことが見えはじめている1年目。秋元さんのこれからやりたいことは?とお聞きすると、「自分ひとりでできることって大きくない。更地の中で何かできるかを、他の誰かと考えて試していく」といった、自分の大切な場所での集い方にまつわるコメントがあり、淡々とやっていく姿勢がとてもかっこよかったです。


語りの“自由派”スタイル

出来事が起きてからの時間軸や変化、速度にもちろんちがいがある上で、各地の出来事と今までの時間について改めてお聞きした前半~中盤。
配信のラストでは、異なる体験をし、それぞれに伝える活動に取り組んでいるお二方をスタジオにお招きし、対談しました。

米津勝之さん(左)と、清水葉月さん(右)ご登場!

阪神淡路大震災を経験し、語り部というよりも“繋ぎ手”として、問いや考えを人との交流の中で生み出す米津勝之さん。
東日本大震災の経験をし、当時こどもだった世代など、これから語りはじめる人たちとの場をつくってきた清水葉月さん。

「語りの“自由派”」というキーワードも飛び出した対談、このような話題👇が出ていました。

スタジオトークのトピック

・今の活動をはじめたきっかけ
  →語らなかった時間、そこから変わったきっかけやタイミング
  時間をかけて向き合うこと

・「繋ぎ手」となること
  一方的に語る/聞く  ≠  相手とどう繋がっているか?を考える

・内容と形式の自由さ
  亡くなったこどもが使っていた物を、相手と対話する 
 「このランドセルにどういうものが詰まってるんだろう?」「聞いてどう思う?」
  問いかけ、やりとりする中で起きたことを広げる
  聞き手にとって身近な話をする(遠い出来事から入らなくていい)
  いろんな感じ方があって、答えはひとつじゃない。答えも変わる

・こどもたちや若い世代が震災について話す場や、知りたくても知る機会のなさ
  →自由にしゃべっていい安心な場を確保する
  いろいろな場に赴く、オンラインでひらく
・“悲しくてつらい”ではないアウトローな語りによって伝わるものがある
  若い世代の語り、共感力、フラットさ
 ↓
・語り部にルールはあるのか?/自由を獲得すること 
  語り部たちによる「語り部ってなんだろう?」と話す場から
  語る人にとっても必要なもの

・震災を知らない世代は、震災を学べる世代
  →知らないことはマイナスではない。まっさらに受け取っていいのでは?

・「体験していないから触れられない」の呪縛問題
  気負わずしゃべって、感じたことが学びになる
  縛りから解き放たれたほうが続くのでは?

・震災や固有の出来事に閉じ込めなくていい
(閉じ込められてしまうところとのせめぎ合い)

・当事者と非当事の壁問題
  外側にはずされてしまいがちな人たちの踏み込めなさをどうする?
  →対話の場を設け、気持ちの交換ができた経験
  ちがうからこそわかり合おうとしてるし、発信し合うのでは

・そもそもなぜ語るのか?

・時間の変遷の中で
  時間が経って他の災害も起きて変化していく中での葛藤はあったか?
  →関心が向かなくなるのでは?という不安期を経て、異なる災禍同士でつながれる交流の時期へ
  「完璧じゃなくていい。ちょっとずつでいい」への変化

お二人が共通して、場で出会う人との関係の中で生まれるものを大切にされていて、出来事に触れる行為や語る-聞くの輪に入る行為をやわらかくほぐしてくれるようなお時間でした。
なるほどなあと思ったのは、語り手にとって相手に受け取ってほしい気持ちやその度合いだって時間の変遷の中で変化していくのでは?という話題。
切迫した時期に抱く、丸ごと受け止めてほしい気持ち。そこから時間が経って訪れる、ちょっとでいいから受け取ってほしい気持ちへの変化(人によってはそこからまた変化があるかもしれませんが)。
だからこそ、ちょっとずつでいいから相手と手を繋げた感覚が持てれば、異なる出来事同士で深めていけるのかも。そのことも、それぞれの「出来事からの時間」が交差して見えてくる要素でした。

ランドセルも来てくれました!ありがとうございます

『世の中への扉 にいちゃんのランドセル』👇

清水葉月さんのご活動👇


何度でも新鮮に語っていい、何度でも新鮮に聞いていい


完走してホッとした瀬尾さん&大地くん

各地とお話を繋ぐことで、急性期にある出来事は自分たちの取れる行動を想像しながら状況を知り、そこで抱く不安やつらい心情に関しては時間が経った出来事と関わり続けている人たちの歩みが、励ましたり手がかりをくれたりするなあ、と沁み入る回でした。
テレビノークを含めカロクリサイクルの活動では、記録や伝える活動を続けてきた先輩たち、これからその流れに合流する人たちに、とにかくたくさん勇気づけられるので、ぜひぜひ折に触れて配信やスタジオでのイベントをのぞいていただけたらと思います。

次回のテレビノーク

次回のテレビノーク生配信は8月27日(火)20:00~生配信。
能登・珠洲で社会福祉士をされている山形優子さんのインタビュー(事前収録)をお届けします。また、能登に行ってきたNOOKメンバーによる能登報告をおこないます。

これまでの過去回のアーカイブ視聴もおすすめです。
テレビノーク、今後もどうぞお見逃しなく〜!


レポート:佐竹真紀子(美術作家/一般社団法人NOOK)

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