【レポート】テレビノーク#7
月に一度のおしゃべり配信「テレビノーク」。2月配信の #7では、「過去を描く」をテーマに、漫画家の山田参助さんをゲストにお招きしました。
#7のアーカイブはこちらから👇
山田参助さんは1972年 大阪府のご出身で、大学在学中の1994年に『さぶ』でデビュー。以後、ゲイ雑誌をはじめ風俗誌、実話誌などで漫画を発表されています。
長編作品『あれよ星屑』は、敗戦直後の東京が舞台。従軍時代の上司と部下が偶然再会し、ときに戦地の出来事や仲間たちとの記憶を行き来しながらも、何も終わっちゃいない“その後”を生きていく物語です。
(仙台組は喫茶ホルンに行くとゆっくり読めます……!)
イラスとレーターやミュージシャンなどさまざまご活躍の参助さんに、今回は「過去を描く」をキーワードに、『あれよ星屑』を軸にお話を伺いました。
こぼれているものを拾う 空いてる隙間を埋める
参助さんと接点がうまれたのは、2016年の小森はるか+瀬尾夏美の展覧会「遠い日|山の終戦」。東北の山奥で出会った人々の戦争体験を聞き書きや語りの映像から開くこの展示を、当時『あれよ星屑』の連載3年目頃の参助さんがTwitterで知り、担当編集者さんと見に行ったことがきっかけだったそう。
声の拾い方のやわらかさや語り手たちの自然さを見て、「こういうの待ってた!」と感想を持たれたとのこと。
自分たちは焼けてないけど、同時代にいる中間的な人たち、さまざまなグラデーションにある語りや声。
その人たちの戸惑いも含めて残さないと断片的になってしまうよねという流れで、そもそも参助さんがなぜ敗戦直後の時代設定で『あれよ星屑』を書こうと思ったかを聞きました。
参助さんにとっても「こぼれているもの」が大事な要素。もともと古いものに触れるのが大好き、時代時代のものに触れて、当時の生活の手触りを今の時代から探ることが好きで、松谷みよ子の「むかしむかし」や「花びら」にも触れてきていた幼少時代を過ごされていたという……!
参助さんが見てきた80年代のエンタメ、遡って60年代等のエンタメでの戦争モノの系譜と変遷にまつわるお話も興味深かったです。
60年代初頭までは、焼け野原から立ち上がる精神性を見ていく敗戦直後の焼け跡モノの傾向があったけど、80年代はもっと戦争の教訓に寄っていって、あんまり扱われていなかった。
同時代の共通認識として記憶にあり、記憶を家庭で共有できる背景があったとはいえ、「国と人を守るために頑張る」と「もう戦争はしません」のあいだにあった時間、「終わってじゃあどうしたらいいの?」の時期が近年は描かれてないんじゃないか、その隙間やはみ出てた人たちにある面白さや複雑さを掘り起こしたかった、という参助さんの言葉に、出来事が経過した後に表現をつくる行為の上で覚えていたい視点だなと聞いていました。
過去に起きた出来事から、どうつくる?
過去の出来事から表現を作る中でどんな秘訣が散りばめられていたの?理想の方法について、さまざま挙がりました!
・物語性の否定も含みながら、どうやって物語化するか
ー象徴にしないようにする
(描写したものや起こったエピソードが戦争自体を象徴しないようにする)
ー主人公をひとりにしない。群像で描いて物語を分散させていくこと
・その時代にジャンプしやすい絵柄を探る
ーその時代や記憶を内包している絵柄や口語、色など
適した素材でスイッチングする
『あれよ星屑』での、つげ義春さんの絵柄の引用
杉浦日向子さんの声に出したくなるセリフ
・描き始めるときは?
ー雑多のものの中から自分の好きなことを探す
何かのテーマを中心に据えずに、これなんだろう?とやっていく
・集団でつくる /「映画をつくるみたいに漫画を書けたらいいな」
ー相談できる学者や研究者とつくる
この時代に生きてる人ってこの場面だとどう動くの?どう感じるの?と、一緒に考えながらシナリオを作りたい
ー自分が体験してないことを描くときの、荷の重さも周囲と分けて持っていく
集団でつくる 衝突も開いていく
印象的だったのは、「集団でつくる」方法がもっとできたらいいね、のトーク。
学者や研究者が表現をつくる仲間にいたらもっとグラデーションを拾えるし、そこで解釈の違いで起こる衝突が面白いし、きっと必要。その議論自体が今後にも重要な記録になるという話が出て、テレビノークに以前出演くださった市田さんや東京大空襲・戦災資料センターの山本さんがその輪にいる画を想像しながら聞いていました。災禍の記録がそういう時に、輪の真ん中にあるはず。
参助さんから「自分で自分の居住まいを正すのは限界がある」とも言葉がありましたが、集団でいることで立ち止まれたり、逆に「これはきちんと出していこう!」と楽しめたり挑戦できたりする心強さもありますよね。
今回エンタメから聞いた戦争がそうだったように、震災や他の災禍でも、変遷のうちにつくられなくなっていく要素があるのだろうなと思いつつ、時間が経ったからこそ生まれるもの、集団で発芽していくもの、楽しみでもあります。
現在はイベントもこなしつつ絶賛インプット時期とのことで、「また昔の話をやりたいですね」との声もお聞きできました。次回作も楽しみです!
直近のサイン会は予約終了とのことですがグッズは買えそう!
参助さん、ゲスト出演ありがとうございました!
次回のテレビノークとお知らせ
次回のテレビノークは3月11日(土)15時から。
「3月11日、どう過ごしてますか?」をテーマに、陸前高田、石巻、仙台、富岡、岡山、そしてトルコとシリアいまの声に耳を傾けます。3時間半のスペシャル配信です〜。
手記の朗読やお電話でのおしゃべり、トーク、音楽などを通じて、みなさんと一緒に過ごす時間を持てたらと思います。
ここでみなさんにお願いがあります!
みなさんの「3月11日」の過ごし方や思い出をお聞かせください。2011年のことでも、そのずっと前のことでも、最近のことでも、いつのエピソードでも構いません。
東京で友達と過ごしてます、東北や海辺に足を運んでます、家族の誕生日だから家でお祝いをします、いつもの日常として迎えてます……などなど、ささやかなお話でも構いませんので、教えていただけたら嬉しいです。
メールの宛先はこちら→ karoku.nook@gmail.com
お寄せいただいた内容は11日配信のテレビノークで読ませていただく場合があります。
コロナ禍でおおやけに集まることが難しい中でも、各地で集い方が模索されてきた数年。十三回忌となる今年、この数年とちがった過ごし方、あるいは変わらない過ごし方もあるかと思います。
みなさんがそれぞれの場所で、穏やかに過ごされますよう😊
現在開催中の展覧会「カロクリサイクル 記録から表現をつくる」も3月11日までとなっております!こちらもぜひぜひ!
そして、今回テレビノークのフリートークでも触れましたが、今noteを更新するタイミングでは、トルコ・シリアの地震から1ヶ月が経ちました。
瀬尾さん、磯崎さんが参加していた2月末までのチャリティ、ご協力いただきました皆さま ありがとうございました!👇
現地はまだまだ全貌も先行きも見えない状況ですが、東北の海辺の人たちも、それぞれ準備している3月11日に集まる場に、義援金の募金箱をしっかりつくっているのを目にします。
ちょっとずつやっていけたらなと思う3月です。
レポート:佐竹真紀子(美術作家)
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