タトゥーに関して思うこと〈米国トンデモ生活13〉
アメリカでタトゥーを彫っていて、よくお客さんから日本のタトゥー事情について聞かれます。
ぶっちぎりで多く聞かれるのは「今までヤクザを彫ったことある?」で、2番目に多いのは「タトゥーの入ったアメリカ人の自分が日本に旅行に行ったら、日本人に嫌がられるかな?」という質問です。
よく独りで日本でのタトゥーについて考えることがあるのでボヤいていこうと思います。
ちなみにヤクザは彫ったことはありません。
〈自分が考える日本でのタトゥー〉
自分は彫る側だけど、日本でネガティブなイメージを持たれるのはやっぱり当たり前だと思う。中にはそれを時代遅れと言う若い世代の人達もいるけれど、自分はそんなふうには思わないな〜。日本には日本の入れ墨の歴史があるわけで、わざわざ海外の基準に合わせていく必要なんかないんじゃないかと思ってる。目まぐるしく変化する世の中で、日本の変わらない部分が日本らしさ・良さを保ってる理由の一つでもあると思うので、何でもかんでも海外に合わせていくのは寂しい気持ちになる。
(最近よく聞く"グローバリゼーション"とか響きがいいから言いたいだけでしょ〜って思ってる。)
この仕事をしていて自分もタトゥーがたくさん入っているのに、タトゥーが入ってる(特に和彫)他の日本人を見ると「なぬ、タトゥー…!?」と身構えるというか、少し距離を置きたくなる感じがする。え、この人何してる人なんだろう?もしや、そっち系なのか…?とか。
自分の場合、日本での外出時は暑くても長袖長ズボンで隠すようにしていたし、タトゥーを入れれば普通の仕事にも就けなくなる・自分を見る人の目が変わる・ジムやプールも行けなくなると分かった上で入れたので、それに対して不満を抱いたことは1度もない。
だから逆に日本で隠さず出歩いて、わざとらしくオラオラしてる奴なんか見ると吐き気がする。お前らのせいで元々良くないタトゥーのイメージが「ほらこれだから」と言われるんじゃないか!と呆れる。
日本で働いていたスタジオは米軍基地に近かったのでお客さんは90%以上アメリカ人だったけど、たまに日本人のお客さんもいた。米兵に付いてくるアメ女は除き、それ以外の日本人のお客さんは本当にタトゥー入れそうに見えない人がほとんどでびっくりした記憶がある。客層は20代前半が多く、女性はK-POPの影響もあってかワンポイントもの・ラインワークが人気だった。男性になるとアニメのキャラクターやスポーツ選手のポートレートなど、結構幅広いデザインを彫らせていただきました。皆さん仕事もさまざまでファッション関係、音楽関係、庭師なんて人もいたり。入れ墨ってなんとなくドカタ!トラックの運転手!ってイメージがあるけど(…ありません…?笑)、私のお客さんではいなかったな〜。お店の雰囲気も関係してると思います。
〈アメリカのタトゥー事情〉
日本でタトゥーに関する投稿を見ると、たまに「海外でもタトゥーを入れてる人は底辺の人達。教養のある人は入れない。」というコメントを目にする。ん〜国にもよるのかもしれないけど、アメリカではそんな事はないと思います。ただタトゥーへのハードルが低すぎて本当に入れている人が多いので、教養のないゴミクズみたいな人間から(言い方悪くてすみませぬ)、先生やお医者さんも結構普通に入っていたり。でもいくらアメリカとはいえ、さすがに顔や首、手の甲を覆うようなタトゥーは仕事の幅が激減します…。そういう人は工事現場系、ストリッパー、バーテンダー、ドラッグディーラー、そもそも無職で生活保護とかが多いかなと。あとはタトゥーアーティスト。
デザインで多いのは人の名前。子供の名前ならまだしも、彼氏/彼女の名前を入れたがる。これもうほぼ100%あとで後悔してカバーアップ(他のタトゥーを上から重ねて消す)ことになるので絶対やめた方がいいのに、なぜか入れたがる。お互いの名前を体に刻む愛の形は自分にはよく分からないけど、とりあえず仕事なので無の心で彫り彫り。日本だと「本当に名前入れていいんですか?」とか確認するけど(断るアーティストさんもいる)、アメリカではそれがトラブルの元になるので(特に名前の張本人がその場にいる場合)基本聞かないです。
あとは自分が日本人というのもあってかアニメ系、とくにポケモン・ドラゴンボール・ワンピース・ナルト・呪術廻戦・鬼滅の刃・キティちゃんのオーダーはかなり多くて最初びっくりした。
ゲームの「龍が如く」のタトゥーを入れたいって言ってる人もいた(値段だけ聞いて帰ってったけど)。日本のアニメが思ったより人気で驚き桃の木。
そしてハーレーダビッドソンのロゴ、バンドのロゴ、死神、スカルと炎なんかも多い。特に少し年配の男性。
自分は動物や自然をモチーフにしたデザインが好き(ページトップの写真は自分が彫ってて楽しかったタトゥー)だけど、自分がやりたいデザインのオーダーってなかなか来ないものです…。
でももちろんアメリカにだってタトゥー嫌いな人たちはいるし、入れて後悔してる人達もたくさんいます。日本よりは受け入れられてるけれど、海外だからってみんながみんなタトゥーを良く思ってるわけではないのでございやす。
〈自分が思う日本にいる外国人のタトゥー〉
これは難しいな〜と。タトゥーが入った他の日本人と、タトゥーが入ってる外国人ってやっぱり違う目で見てしまうと思うんです。外国人だと、外国人だからまぁいいのか、みたいな。
でも日本ではタトゥーが入ってることで温泉に入れなかったり、ジムに行けなかったりって行動に制限が出てくることは理解して欲しい。日本のそういう文化の違いを知らずに来て、温泉で断られて怒ったり、「自分は外国人なんだからいいでしょ」みたいなのは違うよね。迷惑な外国人観光客の動画とか見ると、郷に入れば郷に従え〜できないなら来るなあぁぁって思う。
最近海外からの観光客や移民が増えて、日本の銭湯やホテルの大浴場でもタトゥー◎にしてるところも少し増えてきてるらしい。タトゥーが入っている自分としてはちょっと嬉しいような気もするけど、それで多くの人が不快な気持ちになったり利用を控えたくなるのも理解できるので、もし今日本にいても自分はなんだかんだ今まで通り自分1人で湯船に浸かることを選ぶだろうな〜。
なのでお客さんから「タトゥー入ってるけど日本旅行できるかな?隠さないとダメ?」とか聞かれた時は、外国人だからタトゥー見えてても "まぁこれが外国人か" で終わると思うけど、温泉とかはほとんど入れないし視線感じることは多いと思う、と答えています。
今度どんな流れでタトゥーアーティストになったのか、なんていうのも書いてみようかな…
ちなみに自分の職場はあまり治安の良くないところにあるので、"教養のないゴミクズ" みたいなのもたまに来ます。
ヤバい客エピソードは定期的に記事にしてますので、興味があればぜひ読んでみて下さい。でも不快な気持ちになったらすみません…。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?