京都_170903_0203

偶然も、必然もあるからこそ「出会うべくして出会った」の直感を、ねじ曲げることは不可能だ。

生きていると、稀に「あ、これは、出会うべくして出会ったな」。と、ストンとピースがはまるときがある。

それは人かもしれないし、物かもしれないし、場所かもしれない。
目には見えないものかもしれない。

とにかく、そこに横たわっていた時間と、なんらかの要因と、そういう、「なにか」が複雑に重なり合って、その「出会うべくして出会った」は何処からかやってくる。

だからそれはその日も、突然とわたしの元にやってきた。


「なにかひとつ、テーマ決めて一緒に文章を書きたい」

そんな、突然のあそびの提案に、いいですよ、と彼はゆるりと返答する。

なんでそんな提案を、突然彼に持ちかけたのかはわたしも、実はよく分からない。
パッと顔を見たら、なんだかそんなことを、一緒にしたくなったのだ。

京都のすこし薄暗い、オレンジ色の光が満ちているカフェで、向かい合って、わたしたちはゆったり筆を走らせはじめた。

すこし悩んで、Youtubeからわたしが選んだBGMは、ざーっと繰り返す雨の音。じっと、なにかがやってくるのを、視線を窓の外の、商店街に目を向けながら、待つ。

そうすると、雨の音の世界からやってきたのは、意外にも、カラカラに乾いた大地にぽつり立つ、ちいさな喫茶店だった。


何日も雨が降らないような、乾燥した土地に立つ、ちいさな喫茶店「ねこのひたい」。看板猫のケルト、亭主のマホ。物語は、雨の音なんかおかまいなしに、わたしを、ジリジリと照りつけるオレンジの砂の中へと連れていった。


*


翌日。

泊っていたしていた宿の、目の前に飾られていた1冊を、仕事の息抜き代わりに何気なく手に取ってみる。

どうやらそれは、世界中の不思議な場所を紹介する本で。地球の重力に逆らうことをやめて、パラパラとてきとうにめくっていると、とあるページでふと、手がとまった。

「砂漠に眠る箱庭、ペルーのワカチナは、砂漠の真ん中にポツンと存在する、ちいさなオアシスだ」

「これ・・・」

昨日の街みたいだ。

目に飛び込んできたその場所は、昨夜まさにわたしが空想で訪れた、マホたちが住む町の姿にそっくりだった。

目がその景色に、釘付けになる。オレンジの砂の中に、ぽつりと存在する不思議なオアシス。それをぐるりと囲むようにちいさな家が立ち並ぶ。

頭の中の、抜けたピースがカチッと音を立ててはまるような、不思議な感覚。


「すべての出会いに偶然はない。すべて必然だ」。という人もいるけれど、わたしは、そうは思わない。偶然も、必然もある。と思っている人間だ。

そしてこれは、確実に必然のほう。
そんな直感が、わたしの中でふくらんで、駆けめぐっていく。

そういう直感は、ぜったいにねじ曲げようとしない方が良い。と思っている。
だって、どんなにねじ曲げようとしたって、出会ってしまった事実は変わらない。

無理やり目をそむけたところで、はまったピースはちょっとやそっとじゃ外れないし、第一、出会うべくして出会ってしまったのだから、そんな悪あがき、ただの時間の無駄なのだ。


*


ペルー・ワカチナ。

人生で「出会うべくして出会った」と感じた場所は、ここが3つ目。

今年、この地に足を運んでみることを、かたく決意した。



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