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今踏みしめているその場所は、点ではなく線の上だという意識を持つこと
今思えば、それはそれはろくでもないアルバイターだった。
当時のわたしは人付き合いが億劫で、家に引きこもりがちで、ネットゲームばかりに明け暮れていて
それでも「自由に使えるお金は欲しいから」と、渋々何かしらのバイトはしているような、そんな学生だった。
だから「楽に短時間で高額稼げるアルバイトないかな」とか「人付き合いが極力ないポジションはないかな」とか、そんなことばかりを真剣に考えていたし
いつも責任から免れて、少し面倒なことがおきると、すぐにバイトを変えた。
つまりわたしにとって、すべてのアルバイトは「お金を稼ぐための手段」であり、それ以上でも、以下でもなかったのだ。
わたしの考え方を変えてくれたのは、遠くてちいさな島だった
ある日、いつものようにダラダラと仕事をするわたしの目に飛び込んできたもの。
それが南の島、沖縄・宮古島でのリゾートバイトだった。
吸い込まれそうな青い海の写真に引き込まれるように、わたしはすぐさま「応募」のボタンを押した。
なぜプチ引きこもりのわたしがそんな大胆な行動を起こしたのか、今でもわからない。
だけれどこの場所に行ってみたくてたまらなくて、バイトを選ぶ最優先条件が「時給」のはずのわたしが採用が決まるまで、一体いくらなのかすらも知らなかったのだ。
さすがに時給600円、休みは週1日と聞かされたときにはちょっとした衝撃だったけれど。
今思えば、あれが初めて「お金以外の条件」で選んだアルバイトだったのかもしれない。
あれよあれよと、2週間後にはそのカフェでピンクのエプロンを巻いていた。
お金では得られない「充実感」と出会った日
毎日が丁寧に、丁寧に過ぎていった。
わたしとオーナー、2人だけのちいさなカフェは、ありがたいことに大盛況だったから、毎日体力の限界までとにかく一生懸命に働いた。
人と話すことが苦手で、まともにアルバイトをしたことがなかったわたしは、最初はモゴモゴと言葉が出なかったり、何をして良いのかわからずに呆然と突っ立っているだけ。
だけれどオーナーが丹精込めて焼き上げるケーキや、コトコトと最後の一滴まで大事に挽きあげるコーヒーを見つめていると、とてもじゃないけれど「テキトーに」扱うことなんかできなかった。
そしてそれを届けられるのは、この場所には、わたししかいないのだ。
だからそれを相手に届けることだけに集中した。
ただただ、ここまで来てくれるお客さんの、オーナーの、笑顔が見たいと思うようになった。
約3ヶ月のリゾートバイトが終わり、いよいよ本土に帰ることになったわたしに手渡された封筒には
「いつも一生懸命働いてくれて、ありがとう」
と、オーナーからの手書きの手紙が入っていた。
その手紙は、今まで得たどんな報酬よりも、嬉しかった。
その場所は、あなた次第で点にも、線にもなる
あのリゾートバイトから約7年。
現在、わたしは「旅するライター」として、全国・全世界を飛び回りながら仕事をしている。
もちろん宮古島のあのカフェへも、数年に1度だけれど、仕事で訪れる機会が増えた。
オーナーは今も変わらず、暖かく迎えてくれる。
こんな風に全国を飛び回りながら仕事をしているわたしは、あのリゾートバイトが無ければいなかったんじゃないか、と今は思う。
あの経験がなければ、もしかしたら今でもわたしは「自由に使えるもっとお金が欲しいから」と言っては、給料が高い仕事を求めて、仕事を選んでいたかもしれない。
「心から誰かのためにと働くことは、お金以上の価値が生まれる」こと
「丁寧に紡ぐ関係は、かならず未来へ繋がる」こと
そして「今生きている場所は、自分のその後の線になる」ことを、
あの場所は教えてくれた。
今いるその場所を「点」として完結させてしまうのも「線」として紡いでいけるのも、全ては自分次第だと思う。
乱暴に扱えば、そこから綺麗な線を生み出すことは、難しい。
どんな理由で選んだって良い。
合わないと思ったら、すぐに辞めてしまうのだってわたしは良いと思う。
だけれど「働くなんて面倒くさい」「社会人になれば結局違う場所で働くのだから」と、かつてのわたしのように、今の縁を乱暴に扱っている人がもしもいるのなら、今1度、意識してみてほしい。
” 自分の今立っている場所は、その先の未来に続く、線の上なのだ ” と。
そしてこれからアルバイトを始める人は、リゾートバイトも視野に入れてみてほしい。
”知らない土地で働く” 経験は、きっとその後に紡いでいく線を、大きく変えてくれるから。
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