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小劇場でのダブルキャスト公演について考えた

小劇場での観劇をするようになって思ったのが
「ダブルキャスト制の公演が意外に多い!」
でした。ダブルキャストというのは、公演期間が長く、出演者も多数、多忙で人気のキャストが出演、といったミュージカルや大きな舞台でのものと勝手に思っていたのですが、小劇場の公演でもかなりの数のダブルキャストがあることにふと疑問が沸いたのです。

「小劇場でのダブルキャスト制って、観客にとってメリットは有るの?」

メリットという言い方はちょっといやらしいですが、要するに
「何故、制作側はダブルキャスト公演を行うのか?」
「それについて役者や観客側はどう思っているのか?」
「もしかして、ダブルキャストをやることによって観客側にそのしわ寄せとか来てないよね?」
「制作、役者、観客にWin-Win-Winの制度、、、なのかな?」

と純粋に疑問に思ったわけなのです。
ツイッターでそのようなことを呟いたら、役者・制作・観客のそれぞれの立場の方々から意見を聞くことができたので、せっかくだから自分の考えも含めてまとめておこうと思います。

【ダブルキャスト公演とは】


 とりあえずここで考える「ダブルキャスト公演」を定義しておくと

・同じ台本
・同じ公演期間
・同じ演出家
 で作られた作品が
・一部もしくは全部の配役について、役者が異なる座組が2つ以上存在し
 それぞれ上演を行う公演

としておきます。
※1つの役だけがダブルキャストの公演は意味合いが異なるので今回の定義からは外します
※男Ver、女Verなど性別や物語の内容を明らかに変えている公演も今回の定義からは外します

【実際にどれくらいの割合であるのか?】


 意外に多いと書きましたが、あくまで感覚的なものなので
実際にどれくらいの割合でダブルキャストの公演があるのか簡単に確認してみました。

(確認方法)
ある期間に東京で上演された200作品についてダブルキャスト制かどうかを確認

(結果)
○200公演中ダブルキャスト公演は24公演で全体の「12%」

○公演期間中に上演回数8回を2チームで4回ずつ上演する公演が一番多かった(24公演中12公演)

○完全ダブルキャストは4公演だけで一部ダブルキャスト方式が大多数

○全部シングルキャストだと296人のところが430人と1.45倍の人員が必要となっていた

○一部ダブルキャスト制の場合はシングルキャストの人数のほうが多いパターンが割合的には多数だった

8公演に1公演はダブルキャストとなっており、例えば下北沢の劇場のうち1つは必ずダブルキャストの公演を行っていることとなるので、まあまあの割合でダブルキャスト制の公演を観る確率があるのだなという結果でした。(だいたいの感覚と乖離していなかった感じ。。。)

【それぞれの立場で考えるメリット・デメリット】

 公演に関わる立場には3つあり
「制作(劇団)」
「役者」
「観客」

です。(「公演の三権分立」というらしいです)
この3者の立場からいろいろな意見が聞けたのでまとめてみると

◆◆◆制作(劇団)◆◆◆

○制作側が考えるメリット

・小劇場界では集客の多くを出演者に頼る部分がある
 (劇団の固定ファンだけで集客できるところは少ない)
 →ダブルキャストにすると単純に集客を行ってくれる人が増えるので
  集客という面で非常にメリットが大きい
 ※ダブルキャストにしている理由のほとんどがこれが理由だと
  多くの方々が仰ってたりする…

・役者が多いほうが宣伝効果(SNSで宣伝してくれる人が多くなるので)
 に繋がりチケット販売に影響する

・違うキャストが演じることで違った見え方になるので、より多くの
 楽しみ方を提供できる。(リピーターも増やせる)

・ダブルキャストにすることで演出の幅が広がる
 (2つやりたい演出が有ったとしてそれを片方ずつで試せる)

・劇団員全員を出演させたい場合や、より多くの役者を出演させたい場合
 などに有効な手段となる

・ダブルキャストにすることで、より大きい小屋を使ったり、
 公演日数を長くするなど公演規模を大きくすることができる
 (一つ上のステージを経験できる)

・忙しい役者などもダブルキャストにすることで出てもらうことが
 可能になる場合がある

●制作側が考えるデメリット
・稽古期間が倍かかる
 (もしくは座組あたりの稽古量が半分になってしまう)

・その他制作業務も単純に2倍近くなり負荷が高い

~制作側まとめ~
制作側としてはメリットが多いと感じている方が多く、興行主として考えてもダブルキャスト制にすることで安定した興行を送れる面もあるようでした。また、作品を提供する側として作品の楽しみ方(バリエーション)を増やすことができるのでそういった部分を楽しんでもらえることも大きなメリットだと考えられているようでした。
一方でダブルキャストをやるのであれば、作品としてそうするべき理由であったり、シングルキャストより面白くなる工夫が必要だと考えている方も多く、創り手としての矜持が垣間見られて面白くも頼もしく感じました。

◆◆◆役者◆◆◆

○役者が考えるメリット

・同じ役をやる別の役者がどう表現するか勉強できる

・もう片方の座組の役者をライバルと捉えて、自分の力以上のものを
 絞り出すために必死になれる

●役者が考えるデメリット

・役者には何のメリットも無い。ダブルキャストは劇団側の都合

・制作側にしかメリットが無いと感じている

~制作側まとめ~
役者さん側の意見をお聞きすると「役者にはメリットが無い」と考えられている方が多いようにみられました。(もしくは特別なんとも思ってない)
普通に考えると見てもらえる可能性が半分に減ってしまいますし、ダブルよりシングルで出演できる方がやりがいとか含めて良いものだと思うので当然かも知れません。
ただ、ダブルキャスト制ということで本来なら出られなかった公演に出演するチャンスが広がるという意味合いはあるのではないかとは思いました。
(実際に出演者数が1.45倍にダブルキャスト制のおかげで増えている)

◆◆◆観客◆◆◆


○観客が考えるメリット

・同じ物語でもキャストが違うことで見え方が違うことを楽しむことが
 できる

・作品の見比べが短い期間でできる

・リピートする時の理由の一つになる(もう1バージョンも見ておくかと)

・新しい役者さんと出会える機会の一つになり得る


●観客が考えるデメリット

・スケジュールが複雑になるので、どれを見に行けば良いか迷う

・好きな役者のチームが分散してる場合、2回観に行かなければならない
 のでお金がかかる
 →予定が合わず片方しか見られない場合は、もう片方の役者さんに
  悪い気がしてしまう(いっそ見に行かないという人もいました)

・上手い役者さんが分散してしまい、作品としての完成度が低くなる
 のではと心配になる

~観客側まとめ~
観客側としてはダブルキャストをポジティブに捉えている方が多く、理由の多くは「演者が違うことによる楽しみ方ができる」という部分でした。
また、何を主体に公演を楽しむか(役者目的か、作品目的か)によって考え方が違う部分もあるようでした。
なお、CoRichや公演HPなどでスケジュールを見たときにダブルキャストについてわかりにくいところ(誰が何組でいつ出るのか)が多く、その点はデメリットかなと感じました

【まとめ】

話題自体は予想以上に広まっていて、私の目の届かない意見も多数あるのかとは思いますが、とりあえず見えた範囲でまとめてみました。
もともと純粋な疑問だったので、良し悪しを決めようと思っているものではないのですが所感としては、

・基本的に観客側は、日程調整など面倒くさい部分もあるがダブルキャストはそれなりに楽しんでいる

・制作側は様々な目的(集客以外でも)を持ってダブルキャスト公演をおこなている

・役者側はそこまでポジティブな印象を持ってなさそう


というふうに感じました。

 そもそも自分が今回の疑問を持ったのは、あるダブルキャストの公演で全体としては良い役者さんがいたのに、ダブルキャストで分散したことにより作品としてのレベルが凄い下がってしまっていると感じたことがきっかけでした。
ダブルキャストにすることにより公演がより面白くなっている作品をいくつも観た経験が有ったので、ダブルキャストが持つ効果自体は疑っていなかったのですが、作品の質を落としてまでダブルキャストをやる必要って何故有るんだろうと思ったのです。
そしていろいろな意見を聞いてまとめられる個人的な意見は
「やることに意味や意義を持ったうえで、作品の質を落とすことのないダブルキャストの公演は観客側にもある程度のメリットは有る」
といったところかなと思います。制作側や役者側のさらに深い部分には、1観客としては踏み込めませんがそれぞれの考えがあるのかと思います。

~ 最後に、こんな漠然とした疑問に多くの方々から、親切丁寧にそれぞれの立場からの考えを教えていただき本当に感謝しております ~

#観劇 #演劇 #小劇場 #考察 #ダブルキャスト

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