観劇白書2018
副題:観劇していなかったらいくら貯まっていたかだけは分析したくない
2018年は276回の小劇場観劇を行いました。その都度観劇に関する記録を取っているのですが、観劇白書と題して2018年の個人的な観劇データをまとめたものを残しておきます。
【凡例について】
○本数区分(ショーケース公演などの扱い)
コラボ公演など、1枚のチケットで複数の団体の作品が一度に鑑賞できるものについては「満足度」以外の項目では作品毎に区別せず、1ステージ1本として集計している。
また、同じ作家・演出家による作品が1ステージ内で複数上演される場合は「満足度」の項目においてもトータルで1本として集計している。
同じ作品内容でもダブルキャストなど出演者が異なるものについてはリピートとしては扱わず、それぞれ1公演として集計した。なお、同じ作品内容だが劇場が変わり演出も意味合いが変わるものについてもそれぞれ1公演として集計した。
○料金区分
無料またはフリーカンパ制の公演を「無料」とし、有料のものは価格帯ごとに分類する。また、分類の基準には各種割引制度(初日割や先行予約も含む)を使わず、最も一般的な方法で前売予約を行った場合の価格を用いた。(ワンドリンク付きの場合はドリンク代も含む)
○時間区分
上演時間については前説によるアナウンスや公式サイトでの発表・公演関係者から直接聞いたもの、劇場を出て時計を確認した実測値などが混在しており、必ずしも正確ではない(前後5~10 分程度の誤差を許容する)ものとする。
○客席数区分
客席数については劇場・スタジオHPや劇場情報サイト等の数値を元に、実際の舞台装置や客席の配置を考慮し分類した。
【観劇数】
(期間:2018年1月1日~12月31日)
観劇公演回数:276回 (前年比+84回)
リピート分を除いた純公演数:228回 (前年比+58回)
リピートした公演数:33公演
観劇作品数:285作品 ※リピート含まず (前年比+58作品)
出演役者数:のべ2527人 ※リピート含まず (前年比+460人)
観た役者数:1615人 (前年比+430人)
2018年は大幅に観劇回数が増えた。リピートを除いた純公演数よりも観劇回数の方が昨年からの伸びが大きいことからもわかるように、観て楽しかった公演をリピートする回数が増えたことも観劇回数が増えた要因と思われる。(7回リピートした公演もあった)
月別では年初に比べ10月~12月に観劇数が増えているが、これは勤務時間の変更により夜の時間での観劇がしやすくなったことが原因と思われる
【各項目平均値】
228公演の平均値は上図の通りとなった
(満足度のみ285作品の平均値)
小劇場での観劇が中心であり、平均して2885円のチケット代、94分程の上演時間、出演者数は11人という値であった。前年よりもやや狭い各席数の劇場に多く通った傾向が見られる。また、平均満足度も増えており、これは観劇経験を積んだことにより自分にあった作品を多く見るようになったことが要因であると考えている。
※平均予約日数は、その公演を何日前に予約したかの平均であり、今年かららデータを収集し始めたもの
【チケット代】
ここからは各項目を軸にデータを確認していく
まずはチケット代
チケット料金の割合は「2500円以上3000円未満」が全体の
25.3%を占めて最も多く、次いで「3000円以上3500円未満」が19.6%を占めた
一番多かったチケット代金は2500円で28公演だった
チケット代区分を基準として、各値についての平均値を算出した。
小劇場を中心とした観劇であり、3000円前後のチケット代がメインなのだが、価格に比例した劇場や上演時間・出演者数となっていることがわかる
他の項目を基準にした表と比べて、その値に最も相関があったことからも
チケット代の設定というものは重要な要素だといえる
特にチケット代が1500円以上~3000円未満では50席程度とあまり変化が無いが、3000円を越えると客席数が多くなっているところが特徴的である
【客席数】
公演会場の客席数の割合は「50席以上100席未満」が最も多く
42.7%を占めた
50席程度の会場が最も公演回数が多く、58回であった
客席数区分を基準として、各値についての平均値を算出した
客席数の多い劇場は当然お金がかかるため、それに比例してチケット代が高くなっている。また広い劇場ということで作品の規模や出演者数も増えるという作品内容にも関わる部分での相関が見られる
逆に言えば客席数が少ないと収益が限られるため作品や出演者数にも制限が出ているとも言える
【上演時間】
上演時間の割合は「90分以上120分未満」が最も割合が多く44%と、およそ半分がこの時間帯だった。一番多かった上演時間は90分で40公演だった
上演時間区分を基準として、各値についての平均値を算出した
60分未満と60分以上90分未満の項目ではあまり数値に差異が無いのが特徴的であり、作品を作るうえで90分という長さの時間が一つの分水嶺となっているのではないかと思われる。つまりは90分以上の作品を作るのであれば、それなりの会場でそれなりの人数の出演者を揃える必要があるのではないかと考えられる
【出演者数】
出演者数の割合は「10人以上15人未満」がもっとも多く33.3%だった。2017年は5人以上10人未満の割合が約半分を占めていただけに、観劇する劇の傾向に変化があったと言える
出演者数区分を基準として、各値についての平均値を算出した
出演者数によって各項目の規模が決まっているのがわかる
出演者数が20人以上での満足度が高いのが特徴的だが、これは20人以上の出演者がいる作品を作っている団体には有名な団体が多く、クオリティの高い作品を作っていることが要因であると考えられる
【予約日について】
何日前にその公演を予約したかについても各値いついての平均値を出したが、この項目については特段特徴的な相関は見いだせなかった
強いて言えば、予め早い段階で予約を行っている公演は客席数や上演時間・出演者数が多くなっているともいえるので、直前まで予約が埋まらない小規模な公演は直前に、早めに予約しないと売り切れてしまう大きめの公演・人気の公演は早めに予約を入れているとも考えられる
※なお、一般的に全体の予約の8割は2週間をきってから行われるといわれているが、私個人のデータとしてみても8割が2週間をきってから行っていた
【観劇時間帯について】
上図は何時開演の公演を観に行ったかについてのデータになる
土日休日の観劇がメインであったため13時開始の公演を一番多く見ていた
また、20時が多めなのはシアターミラクルがこの時間の公演を多く行っていたからになる。また、何故か13時半開始の公演は一つもなかった(キリが悪い?)
【劇場について】
使用回数が多かった主な劇場が上図となる
5回に1回はシアターミラクルを利用しており圧倒的な1位だった
また下北沢の劇場の中でもOFF・OFFシアターの利用が取り分けて多かった
これはよく見る劇団のMCRとシンクロ少女がここを使用することが多ことが要因の一つと考えられる
【満足度と満足度上位作品】
個人的に観劇した作品に対して満足度として10段階のポイントを付けているが、感覚として面白いと思ったが特別ではないと感じた作品に8ptを付けている傾向があるため上記グラフのように半数以上が8ptとなっている。
↓満足度上位作品
その中でも満足度が上位だった作品をあげておく。観劇本数が増えると確実に満足度の高い作品も増える傾向にある
【役者について】
2018年に拝見した役者さんの総数は「1615人」
リピートを除いた285作品で何回見たかを数えたのが上の表となる
4回以上見ている役者さんについては顔と名前が一致するが、3回以下だと名前を見てもどんな人だったかわからない役者さんが大勢いた
一年に4回作品を見てもらうというのが一つの基準になるのかもしれない
【総括】
昨年に続いて観劇白書をまとめたがあくまで個人の傾向が強く出ているデータではあるので、これをもって小劇場全体の分析ができているとは言えない。しかしながら観劇数が多くなったことでデータとしての信頼性は増したと思います。
2018年は怪奇月蝕キヲテラエ主宰の三浦仁氏の演劇に関するWSに参加したりクラウドファンディングで公演の収支について報告を受けたりと、演劇制作とお金の部分について学ばせてもらった。それらの経験を踏まえデータを見るとやはり演劇制作において最初に公演規模というものを決めて制作を進めるため、「劇場規模」が決まればおおよその「チケット代」と「出演者数」が決まり、作品についてもどれだけお金をかけられるか、どういった内容になるかもある程度影響を受けるというのが各項目の相関関係を見ても間違いないものだと言えると思う。
この白書の考察はあくまで個人のお遊びにすぎないのですが、観劇で作品を楽しむだけでなく副次的なデータによって二度楽しめるということを皆さんにも知っていただけたらなと「観劇データ主義」を広く頒布していきたいなと思っています。
最後に、この様な楽しい遊びを私に伝承していただいたニッチクラフトと関係舎の辻本直樹氏(@propmind)に感謝を述べたいと思います。