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ガムライスと私

ある男が唐突にそれをおまじないだと言って呟く。

「メロンライスにガムライス…メロンライスにガムライス……」

それに対する正しい応答はこうだ。

「貴方はどちらがお好きですか?」

そうすると男はこう返事する。

「もちろん、ガムライスですよ」


これは私の大好きな星新一先生の作品『おのぞみの結末』に登場する秘密の合言葉である。

小学生時代、まだ活字に馴染みが無かった頃に、なんのきっかけだったのか忘れたが母親が私に「星新一は知っておいたほうがいい」と、星先生の作品を古本で全巻大人買いして、与えてくれた。

それが私と星新一作品との出会いだった。

経緯はどうあれ、(小学校1年生の少女に大人の童話と呼ばれる星新一のブラックショートショートを買い与える親も親だと思う)、

私はすぐその世界に魅了されてしまった。

そのユーモア溢れる展開と、スマートな登場人物たち、読後の深い余韻……

夢中になって読んだおかげで、小学校低学年にして読書の時間が堪らなく好きになった。

たぶんその頃だけで星さんの作品は全作、少なくとも3回は読み返したと思う。笑


星さんは、ご自身の書くストーリーに3つルールを設けていたらしい。

1.殺人などグロテスクな記述は詳しくしない。
2.セックスなどのエロティックな直接的な表現をしない。
3.人名や年代は、N氏やある男としたり、西暦を書かないなど具体的な表現をしない。

この3つのルールのおかげで星さんの作品は、その作品発表から半世紀以上経った今でも普通に、読める。

スマホや携帯が出てこなかったり、少し言葉遣いが古めかしいくらいで、

むしろ「殺し屋ですのよ」とか、素敵だ。

1960-80代の時代の女性の、言葉遣いの品の良さが漂ってくる。私的に、すごくツボ、


こうブラックショートショートのどこが好きかって、世の中を俗世間を斜から見て、でももしかしたら、ふとしたことでそうなってしまうかもしれないっていう可能性のリアリティが、好きだ。

世にも奇妙な物語とか、そういう類のもしかしたら、の世界、

なぜそんなストーリーを1000以上も生み出せたのか。

その人生を知るとどうしてそんなストーリーが創り出せたのかどうかを察せるような気がする。

星さんは現在も存続している星製薬の御曹司、その創立者星一さんの息子さんで、元は、俗に言うボンボンだった。

がしかし、突然の父の死、経営の学も経験もなしにその後を継ぐが思う通り行かず、結局会社は人の手に渡り、と、

そう、あのストーリーはそんな天国を知っていれば、きっとその後の地獄も知っている経験から創造されたものなんだと、私の中ではそう結び付けている。


私的に好きな作品は、

有名な『ボッコちゃん』、『殺人者さま』、『鍵』、『おのぞみの結末』、『生活維持省』などなどあげ出したらキリがない、

慣習や常識とはについて考えさせられる『親善キッス』、資本主義的なお話だと思う『信用ある製品』なんかも好きだ。

冒頭で話した『おのぞみの結末』なんて好きすぎて小学生時代、朝の好きな本紹介で音読した記憶があるし、笑

『おーい、でてこーい』なんて、中学時代に英語のテキストで英訳されたものが出ていたりして嬉しくてわざわざ授業後に先生に原作を教えに行った覚えがある。


ショートショートって、素敵だ。

発表当時は短いからと文学の受賞対象にならなかったりして脚光を浴びることは少なかったと言うが、短いからこそ、導入だったりオチだったりが尚更洗練されてると感じる。

一字一句に拘りを感じられる。

そこの点で大好きな歌詞と近いようにも思えてる。

簡潔さと無駄のない言葉選びにこだわりと意味合いを持たせる心粋✨

思えば、星さんのおかげで乙一さんにも出会えたし(星新一賞受賞)、ショートショートで言えば、これまた好きなフランツ・カフカにもちょっとばかし共通点を覚えたりする。


そんなわけで、いまでもふと星さんの作品を思い出すとすごく懐かしい、いい気持ちになる。

それは夏休みのおもいで。FMヨコハマをラジオで聴きながら、冷たい麦茶を脇に置いて、日陰と扇風機で程よく涼しい誰もいない居間で、星さんの作品を読み進めページを手繰るのがすごく好きだった。

誰にも邪魔されないあの心地を、あの時間を、星さんの作品に想いを馳せるといまでも、思い出す。


そんなわけで今回は私の大好きな作家、星新一について書いてみました✨


あ、冒頭のやり取りの意味とそのストーリーの本末については勿論、

『おのぞみの結末』を読んで、知ってみてくださいね ☺︎





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呑ん
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