地方公務員の本棚 中公新書編③
読んでいない本を大量に積んでしまっているので、本棚紹介と称して、それぞれの本を購入した動機などをまとめています。以下の要領で記載しています。
『書名』(著者名、出版年、出版社名などの書誌情報)
①読んだか読んでないか、どのくらい読んだか、読んでないか
②購入した時期や動機
③内容
④感想
『正義とは何か』(神島裕子、2018年、中公新書)
①読んでない
②多分社会人になってから購入。明確な動機は不明。政治哲学には学生の頃から漠然と関心があった(特に財の再配分あたりの分野)が、ついに何も読まずに卒業した(ので、その未練が『公正としての正義 再説』や『はじめての政治哲学』となって本棚に座っている)。公正さや正義については、実務をやっていて少し感じるところがある。例えば、補助金の交付対象に該当するかという場面で何回かやりとりをしている間に情がこみ上げてきて、「そんなに困っているんだったら補助金を出してあげたい」という気持ちになる一方で、気持ちによる裁量のみで支出するのはおそらく「公正」ではないのだろう。というところで、どのように仕事の領域で個人的な倫理的感情を納得させるかという観点からも、正義論などには関心がある。
③現代政治哲学の解説ということで、ロールズ(リベラリズム)、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム(マイケル・サンデルが有名)、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズムの6つの視点を紹介する。
④いつかちゃんと勉強します。
『音楽の危機』(岡田暁生、2020年、中公新書)
①どちらかといえば読んでない
②岡田暁生ファンなので購入。授業であまりにも自分のモノの見方を押っ広げに喋る姿が印象に残っている。氏の『西洋音楽史』はモーレツにナイスである。
③(今パラパラとめくっていると、私の知る岡田先生とは思えない言葉がいくつかあったので、正直内容を紹介するのが不安だ。間違っていたらすみません。)コロナは第九を歌えなくした。ベートーヴェン交響曲第9番は、近代の音楽の典型例である。それは、最終楽章の合唱のシラーの詞にもあるように、同胞と肩を抱き合い、勝利の輝かしい未来を高らかに歌い上げるものである。コンサートホールという文化装置に一堂に会して鑑賞するという近代的な音楽鑑賞のあり方は、多かれ少なかれこの共同性を持っている(それは、CDの売れ行きが低調ながらもライブ興行収入は増加していたポピュラー音楽界(参考:『ヒットの崩壊』)にも、形を変えて共有されているエートスであると私は思う)。ところが、コロナ禍は「集まる」ということを否定し、将来の展望を限りなく曇らせている。こうした意味で「第九」とは対極にある状況が確固たる現実として私たちの目の前に広がっているわけで、我々は「第九」の夢に心からコミットすることは難しい。あらたな時代の音楽について検討することが、音楽の生命を絶やさないためにも重要である。
④岡田先生も手探りかつ急ぎ足で書いている(執筆時期は2020年5月頃?)っぽくて、下調べが十分かどうか疑問なところもあるし、今読むと正直賞味期限切れなのではという記述が見られ、そういうところは今後加速度的に増えていくと思う。一方で、コロナが仮に収束したとして、「リアルはどこまでオンラインで代用できるか」という議論は、(音楽に限らず)おそらく出てくるだろうので、そうした問題を考えるヒントにはなると思う。
『ベーシック・インカム』(原田泰、2015年、中公新書)
①読んでない
②最近(2021年6月)買った。最近はあまり聞かなくなってしまったが、BIについては本書が出たころにはぼちぼちと割と現実的な政策化を視野に議論されていた印象がある。私はといえば、一市民として国や自治体からお金がもらえると単純に嬉しいので、なんかうまいやり方はないかと大学生のころに考えていた覚えがある。今般のコロナ禍の一律給付金と、(持続的か一時的かという大きく決定的な違いはあるとしても)根本的な理念は同じなのではないかと感じている。
③BIの思想的位置づけや、BIの実現可能性を探る本らしい。基本線は、パターナリズムは悪いことではないので、貧困撲滅のためにも国家はBIをやればいいという方向。
④著者はキャリア官僚出身ということで、いわゆるアカデミシャンではない。ということで、経済学的な観点からというよりは、むしろ国家の道義的責任みたいな視点からBIを導入すべきと言っているっぽい(?)好き嫌いはあるだろうが、現在の税制などと絡めて論じているのは、現場の視点として価値があるのかもしれない。
『日本的感性』(佐々木健一、2010年、中公新書)
①読んでない
②社会人になってからブックオフで。同著者の『美学への招待』が面白かったので買った覚えがある。
③和歌の分析を主として、日本的な感じる仕方の個性や、その根元を探るもの。市民講座か何かでの発表がもとになってるようである。
④とくになし。
『古代メソポタミア全史』(小林登志子、2020年、中公新書)
①読んでない
②社会人になってから購入。目的不明。ただし、私は大学生のころにFate Grand Order(以下、FGO)というスマホゲームにめちゃめちゃハマっており、そこには登場人物として古代メソポタミア神話の神々が出てくるので、その関心を引きずっている(『ギルガメシュ叙事詩』は読んだ。原典資料の欠落部が多く判然としない物語も多くあったが、全体としては面白く読めた)。
③ティグリス・ユーフラテスの地理的特性の話から始めて、シュメルの都市国家とアッカドの統一、アッシリアのハンムラビ王、バビロニアからサーサーン朝までを描く。
④古代メソポタミアのことばは正直語感がつかみにくいのだが、本書は石像や壁画などの図版がめちゃめちゃ豊富で、目で見てイメージをかき立てられるのがいい。FGOも最近は全くやらなくなってしまったが、神話や古代文明への関心はたまにふとわいてくる(アステカ文明、ケルト文明など)ので、いずれ読むかもしれない。