【開催報告】ヒラク書店ミニイベント/アメリカ大統領選挙読書会と現代アメリカを読むためのおススメ本の紹介
9月21日土曜に、池袋のシェア型本屋・ヒラク書店にて、ミニイベント「アメリカ大統領選挙を読む」読書会を開催しました。
こちらは、今年の11月5日に開票が行われる2024年のアメリカ大統領選挙や現代アメリカに関する本を紹介したり、お互い意見交換をする会になります。
最初に、主催者から簡単に、アメリカ大統領選挙の仕組みについて説明しました。
アメリカ大統領選挙の仕組みについては、ジェトロの以下のページの資料がとても参考になったので、紹介しました。
上記のジェトロの資料によると、アメリカ大統領選挙では各州ごとに投票が行われますが、すでに民主党が有利な州(青い州)、共和党が有利な州(赤い州)は決まっているとのことです。
そのため、実質的には、いずれの党にも揺れ動く「スイングステート」と呼ばれる7つの州の選挙結果で、大統領が決まるとのことです。
ただ、いずれのスイングステートでも、両候補者の支持率が拮抗しており、勝敗は分からない状況が続いております。
そんな両候補者が激しく争う展開となっているアメリカの状況を理解するための本を参加者同士で紹介したので、いくつかご紹介します。
儲かる!米国政治学(渡瀬裕哉・著)/PHP新書
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85186-0
著者は、2016年のトランプ当選、2020年の民主党の大統領・上下両院議会選挙の勝利を正確に予測した気鋭の国際政治アナリストです。
アメリカ大統領選挙の結果だけをみても米国政治は分かりません。予算教書、上院・下院の議員構成、政府高官人事、連邦裁判所判事の任免などの複雑な要素が絡む米国政治を明快に解説してくる本です。
本書の「2024年大統領選挙見通し」は上院・下院議員選挙の予測を踏まえた洞察となっており極めて興味深いです。
SPECTATOR vol.52 特集「文化戦争」/発行:エディトリアル・デパートメント 販売:幻冬社
https://spectatorweb.stores.jp/items/6583d4a3696592002dddab47
「文化戦争(Culture Wars)」とは、本書曰く「多種多様な文化が米国内で激しく対立する様」をさします。
具体的には、「人工妊娠中絶、同性結婚、BLM(ブラック・ライブズ・マター、“黒人の命も大切だ”と主張する人種問題)、学校での礼拝、歴史教育、銃所持の規制などの是非」が米国内で激しく争われています。
このような「文化戦争」について、過去の大学での闘争や保守とリベラルの思想史などを、時折マンガやイラストも用いて分かりやすく解説してくれています。
本雑誌は、いつも尖った面白い企画をしてくれるのでオススメ。
キャンセルカルチャー アメリカ、貶めあう社会(前嶋和弘・著)/小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388844
差別反対や平等性・公平性の確保のために、これまでの歴史、文化、習慣などを見直すことを「キャンセルカルチャー」といいます。
本書は、ブラックライブズマター、妊娠中絶、コロナ禍におけるワクチン・マスクへのスタンス、銃社会など多様な問題に対して起こる激しい分断を「キャンセルカルチャー」という言葉を軸に現代アメリカの状況を解説しています。
なお、対立が深まっていく中で、著者は「人口動態の変化が時代を変える」糸口ではないかと変化の兆しに期待を寄せています。
新たなマイノリティの誕生 声を奪われた白人労働者たち(ジャスティン・ゲスト著)/弘文堂
https://www.koubundou.co.jp/book/b452273.html
著者は、イギリスのイーストロンドンと、アメリカのオハイオ州ヤングタウンという別々の場所で、白人労働者たちに対する綿密なインタビュー調査から、彼らの感じる経済的不安、政治的不満を聞き出し「新たなマイノリティ」として置き去りにされていると感じてしまう現状を炙り出しています。
移民や他のマイノリティからの「疎外感」や「剥奪感」、縁故主義に陥った市政が機能していない現状から「なぜ彼らがトランプやブレグジットを支持するのか」が見えてきます。
「トランプ大統領を支持する人が多い」という目の前の「現象」だけではなく、なぜ人々がそのような行動を取るのかという「構造」に目をむけるべきと教えてくれる良書です。
実力も運のうち 能力主義は正義か?(マイケル・サンデル著)/早川書房
https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000090602/
著者は、「白熱教室」でお馴染みのハーバード大学のマイケル・サンデル教授。
高学歴の学生の大半が「自分が入学できたのは自分の勤勉と努力のおかげだ」「現代は、能力の高い者が成功できる(努力が報われる)社会である」と考えています。
ただ、そのように、エリートが自身の「傲慢さ」に無自覚であることが現代アメリカの分断とポピュリズムを生んでいるのではないかと著者は警鐘を鳴らしています。
行き過ぎた「能力主義」がアメリカにおける不平等を固定する現状に問題を提起し、新しい共同体に向けた考えを示してくれる本です。
アメリカ50州を読む地図(浅井信雄・著)/新潮社
https://bookmeter.com/books/377858
30年近く前の本なので統計データが若干古いところはありますが、アメリカ50州の州ごとの特徴を丁寧に分かりやすくまとめており、とても読みやすい本です。
州の名前の由来、歴史、産業、人口数、人種構成、大統領選挙の結果(1996年当時)等をコンパクトに解説してくれます。
今までアメリカの州の名前を聞いてもピンと来ませんでしたが、この本を読むと、どんな州かという背景知識が分かります。
アメリカンセレブリティーズ(辰巳JUNK・著)/スモール出版
http://www.small-light.com/books/book075.html
アメリカのハリウッドスターの俳優や、歌手、ラッパー、インフルエンサー政治家などのアメリカのセレブについて、そのセレブの人となりや人気(あるいは一部の人からは不人気)となっている背景などを丁寧に解説してくれています。
この本を読むと、アメリカのセレブと、アメリカ政治やアメリカ社会とのつながりが見えてきて面白いです。特に、ある歌手は、民主党支持者から圧倒的に支持を受けるが、共和党支持者からは圧倒的に不人気といったことなど、日本にいては分からないような事情も書いてあってアメリカのカルチャーに関する解像度が上がる本です。
他にも、参加者同士で、アメリカについてのいろいろな本を紹介しあった後で、意見交換をしました。
参加者の中には、2016年や2020年のアメリカ大統領選挙の前後に、アメリカに留学をされていた方々もいて、当時の現地での様子(トランプさんが出てき始めてニュースになっていたこと、西海岸のシアトル郊外では落ち着いた雰囲気で人も日本人に優しく暮らしやすかったこと、チャイナタウンなど人種別で別れて暮らしている街があることなど)を色々と伺えてとても参考になりました。
今回の、アメリカ大統領選挙を契機に、現代アメリカについて、理解を深められてとても楽しかったです。
今回取り上げた本の一部は、池袋のヒラク書店本棚「ゆるやか書店」において閲覧可能のため、お近くに来られましたら、ぜひお立ち寄りください。
ヒラク書店(ヒラク池袋ソーシャルデザインライ
ブラリー)の概要はコチラ。
次の読書会は、9月29日日曜日に、上池袋のコミュニティスペース「くすのき荘」にて推し本5冊を紹介する会を開催予定です。
こちらもご興味ありましたらぜひ。