この世の外へ クラブ進駐軍
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この世の外へ クラブ進駐軍
この映画すごく好きなんだけどな。。
戦争映画としても、青春群像劇としても
人間臭くて、でも暗くなりすぎなくて。
十数年ぶりに拝見しました。
ネット配信が充実している今の世の中は最高です。
この時代に生きててよかった。
あらすじはwikiをご参照いただいて。
以下ネタバレ含む感想です。
萩原聖人演じる楽器屋の息子・広岡健太郎のバンドメンバーのお話と
在日米軍基地で出会う米兵ラッセル・リードの友情の話。
って一言でいうと陳腐だな。
原作ないのに、すごく話が、登場人物の人生が、丁寧に描かれているなって思いました。(阪本順治 監督/脚本)
戦争は終わったけど、日本は負けたけど、アメリカは勝ったけど
一人一人の人生に勝ち負けはなくって、、
バンドメンバー4人がそれぞれ家族の問題と葛藤を抱えていて
もちろんアメリカ進駐軍の兵隊たちも、それぞれ辛い過去や思いを抱えている。
敵として殺し合いをした相手を目の前にしてそれでも生きていかなくてはいけない。
どうせ生きるなら好きなことして生きて行ってやらあ!って啖呵きる健太郎は、ずーっと怒りの塊みたいな存在。
それも仕方ない。理不尽で不条理な人生、世の中に怒っている。
楽器が下手な自分にも怒っている。
怒りを抑えきれなくて、そのうち、周囲の人間もいろいろ怒りをぶちまけてくる。
でもね、怒りって人間の喜怒哀楽の中で最もエネルギーの塊なんだよね。
だから、戦中戦後の状況にきちんと、己の怒りをぶつける、表現することができなかった人は、トランペッターの浅川みたいに、ヒロポンに行っちゃったりしたんじゃないかなって。思った。
それでね、この映画には、絶対的な悪人は一人も出てこないんだよね。。
殺人の場面もない。(あ。。ちょっとあった、夢のなかで。。)
それどころか、みんな、それぞれの胸の内をさらけ出して仲良くなるんだ。
戦後の悲惨な状況にも、まさに、喜怒哀楽があったはずで、
その、ささやかな「喜」や「楽」の部分が描かれているから、悲しいけれど、暗くなくて救われるんだ。
でもそれが、戦争ものとしては受けなかったのかしらね。
戦争を体験した人には、いまいちファンタジーのようなきれいごとに見えちゃったのかなぁ。。。
戦後を描くには、軽すぎるって思われたのかな。。。
戦後も、米兵に殺された日本人はたくさんいて、
強姦された女性もたくさんいて、
悲惨なことはたくさんあって、
今も解決しない基地問題があって。
でも、、私はほんとに悲惨な映像は辛すぎてみれません。
この映画でも、登場人物のその背景まで想像させられてしまって、
もうそれだけで辛くなってしまうから、
これ見るだけでもう、戦争なんで死んでもごめんだって思えるから。
ドキュメンタリーではなくて、エンターテイメント作品だし。
武器を楽器に持ち替えて戦った男たち。っていう言葉のとおり。
ちっぽけかもしれないけど、ひとり一人の人生のたたかいはあるんだよって。思える。
。。他人の人生をちっぽけなんて言えないね。。すまない。
ひとり一人が、ひとつ一つが、かけがえのない、たった一つの人生なんだよね。
最後に、朝鮮戦争の死傷者数が表示されるんだ。
米軍 15.7万人
韓国軍 84.3万人
国連軍 1.5万人
中国軍 90万人
北朝鮮軍 52万人
(米国防総省調べ)
せっかく心通わすことができたラッセルもその中の一人。。
その数字をみてそれだけの人生が消えてしまったんだって、
打ちひしがれる思いだし、ものすごい反戦映画だなって思ったラストでした。
ちなみに、、当時はオダギリジョー目当てで観た映画でした(てへぺろ)
ピーター・マラン(Peter Mullan)
シェー・ウィガム(Shea Whigham)
すごくよい俳優さんもキャスティングされてますね。知らんかった。
このおやじさんがいいんだよ。
ボスなのに、気さくで、やさしくて、
完全に日本を見下しているけど、
荒くれの米兵たちを統率しているってことは、
きっとできるおやじなんだって、思わせる。
そして、日本の上官たちの在り方を想像すると、
こんなアメリカに勝てるわけなかったんだよね。
って思い知らされる。私なら。悔しいけど。
↓こちらの監督インタビューを読むとまた理解が深まります。
https://natalie.mu/eiga/news/357664
https://filmex.jp/2019/news/daily-news/outofthisworld-sakamoto
以上