遊んだフリーゲームの記録(ティラノゲームフェス2023参加作⑥)
自分がプレイしたゲームの感想というより個人的な記録です。
ゲームの簡単な概要と私個人の感想をネタバレ無しで綴っています。
ゲームを批評する目的ではなく、
読んだ方にとって、自分に合う作品かを調べたり
まだ見ぬゲームと出会う一助になれたらいいという物です。
今回もフリーゲーム投稿サイト
「ノベルゲームコレクション」にて行われている
ティラノゲームフェス2023に参加している作品の中で自分がプレイしたものをこちらの勝手な括りで並べてみました。
ノベルゲームやADVというとフィクションの物語を読んで/見てそのシナリオそのものを楽しむという要素が強いとは思いますが、
それとは少し異なる視点で語ることができる、と私自身が勝手に判断したゲームを並べてみました。
内容としてはおちゃらけてはいけない真剣なお話なので
今回は真面目に行くつもりです。長い記事です。
最初に
まず本題に入る前に
これから紹介する作品の中には、プレイする方によっては
トラウマだったり恐怖だったり心理的な負荷だったりと
精神面にストレスかかる内容である可能性があります。
また、
今回の作品はメッセージ性が強いと私が勝手に判断した為、
記事の情報の比重が ゲームの内容 < 私(のっさの)自身の語り
となっておりますので、予めご了承ください。
各作者様それぞれ表現したいテーマへの強い拘りが感じられる作品です。
それ故に人によっては合う合わないが極端に分かれることが予想されます。
ここに書いてあることや掲載ページのゲーム説明欄を理解したうえでのプレイをお願いいたします。
※プレイの際は作品ページに書いてある注意事項及び利用規約を必ずご確認ください
※今回掲載したゲームの作者様へ
この記事内容への訂正・削除等の要望がありましたら
お手数ですが
・この記事のコメント欄 か
・プロフにかかれている個人サイトの連絡先までお願いします
(Xでよければ @nonossanoです)
『視線恐怖の世界』
視線恐怖症の方の心境に触れるゲーム
■作者 村田鉄則様
■プレイ時間:10分ほど
■ゲームの概要
・ジャンル:ノベルゲーム
・ED数:1 選択肢なし
・説明にもある通りDLでのプレイ推奨です
ゲームの導入:
高校一年生の山月 華凛(やまつき かりん)はある病気で悩んでいました。
その病気は中学2年生のときのいじめが原因なのですが、
高校生になった今現在でも、華凛は病に苦しみながら日々の生活を過ごしているのでした。
感想
視線恐怖症とは
人の目をみないで話すただ単に極度の恥ずかしがりやさんなだけ
というわけではないということが伝わる内容です。
モノクロで今にも消えてしまいそうなタッチのイラストが
華凛からみた世界の見え方を映し出しているかのようで私にはすごく辛そうに見えました。
人の顔が視界に入った時の反応、誰もが使う公共の場での様子、学校の教室という密閉空間での思考、などといった
生きていくうえでは避けることができないごくありふれた生活の中にも恐怖があるということが詳細に語られています。
実体験が無い方にとっては
人と視線を合わせられないと聞いても、
こっちが見ると視線を逸らす人、キョロキョロしたりうつむいている人
という印象のみしかない方もいらっしゃるかとも思います。
しかし実際には、本人からすると何が辛いのか何が怖いのか
何を感じてそれをどうしようと考えているのかという大元の主原因があります。単に本人が視線を耐えていればいいという問題ではないのです。
それを誰かに相談しても、はなから理解されないか苦痛の上澄み部分の解決案が打ち出られるだけなので根本的な解決にはならず
結局一人で抱え込んでしまい、さらに周囲が溝を作ってしまうという悪循環になることが多いかと思われます。
本人の力だけで完全に払拭するのは難しい問題ですので、支援やフォローにつながるような知識や周囲の理解が必要なのですが、悲しいがなすぐには広まっていかないのが現状です。
このゲームにおいて、学校の合宿が華凛に何をもたらしたのか。
華凛が一人であれこれ考えて動くだけではダメ
周囲の人間が最大限の配慮をするだけでもダメ
本人の意思と環境が合わさることで、集団を拒絶する側と1人を排除する側という関係ではない、もう一つの道が生まれていくのだと感じました。
視線に恐怖心を抱く方のリアルな心境が綴られています。
当事者の方は勿論、それ以外の方にも視線恐怖症で感じている生きづらさに触れていただけたらと思っております。
『Moral』
モラルを問われる社会
■作者 アル中へべれけクソBBA様
■プレイ時間:5~15分
■ゲームの概要
・ジャンル:ノベルゲーム
・ED数 :2
ゲームの導入:
あなたは 仕事が 好きですか?
感想
選択肢が1箇所だけの短編ですのでサクッとプレイできます。
が、その手軽さとは打って変わり内容は実に重いものがあります。
モラルそしてモラハラという言葉が現代では浸透しており、
現実での会話だろうがSNS上などのネットだろうがよく見聞きするかと思います。
では皆さんが口にするモラルとはなんだろう、と考えるゲームでした。
他者にモラルの是非を問う時、それは自らの立場も当然モラルの範疇にいるかどうかも問われることを忘れてはいけないということはいうまでもなく。
「あなたがモラルだと信じて行う言動は、あなたの中の価値観や判断基準であって、社会の定義するモラルとは乖離している可能性がある」
これに尽きるかと。
ここからは、
作者様の意図したものとは違うであろう私個人の考えなのですが、
このお話を、現代の仕事での問題って怖いねという感想で終わらせては少しもったいないように思います。
ルートは2つあり、それぞれ別の人物による視点からのお話です。
どちらの結末も、言うなれば自身のモラルに従った結果なのかなと。
しかし、
プレイヤーは語り手である彼や彼女の言動の良し悪しを評することはできても、
語り手たちのモラルが問題だっただけなのか?と言われるとそうとはいえない難しさがあるように思えます。
プレイした方の中には、語り手の気持ちに全て肯定まではいかなくても、少し共感した方も多いのではないでしょうか。
一人では捌ききれない量の仕事を振って放置していた周囲の環境にモラルがあったのか、
人間関係は上手くいかないことばかりですが、それを踏まえたうえで業務上でのやりとりでモラルの範疇とされる扱いはどのラインなのか。
どのケースでも常に正しい答えを提示できる人なんて、果たしているのでしょうか。
現実社会でモラハラの問題が大抵の場合泥沼と化すのはこういった水かけ論になってしまうからなのでしょう。
そういうモラルへの作者様の気持ちをストレートに表現している作品です。このゲームのようにモラルを問われる状況は、恐らく大勢の人が今抱えている悩みだと思っています。
自分とは関係ない話だから、で切り上げられない事象だからこそ
このゲームで1度振り返ってみてはいかがでしょうか
『幸を運ぶ怪物』
可愛そうな人と優しい人のお話
■作者 かかし様
■プレイ時間:おまけを含めると1時間以上~
■ゲームの概要
・ジャンル:鬱ノベルゲーム
・ED数 :1
・セーブ機能あり
・R-15指定の作品です
・また、作者様からの注意といたしまして
とのことです。
この他にも説明がありますのでゲームの概要欄は必ずご確認ください。
ゲームの導入:
19歳のシングルマザーである水無撫子は、わけあって親元を頼ることができないため、生まれたばかりの子供である葛と共にとある女性の元に駆け込みます。
その女性の名は慈光寺夏鈴花。
彼女は困っている人を助けることに尽力する、いわばボランティアが趣味の女性で、撫子のように支援の宛てがわからず困っている人の相談に乗っているのだといいます。
撫子は自身の事とこれまでの経緯を夏鈴花に話し始めるのでした。
感想
夏鈴花とその元にやってくる人々とのやり取りをオムニバス形式で遺した記録を読み解くというシナリオ展開となっています。
彼女を頼ってくる相談者の事情は様々で、話をきくだけでは到底終えられないくらい複雑で深刻なものばかりです。
相談者や夏鈴花については、このノートから得た先入観だけで見てほしくないのでこれ以上具体的なワードでシナリオに触れないようにしたいと思います。
1つ添えるのであれば
作者様がこの作品を鬱ノベルと評している通り、中身も終わりもハッピーみたいな内容ではないです、とだけ。
一通り読み終えますと、おまけ部屋が開きますが
このゲームのメインはむしろここなのではないかと個人的に思っています。
(なのであえてここでおまけ部屋のことに触れました)
おまけでは夏鈴花に色んな質問ができます。
バリエーション豊かなのでゲームの説明欄やDL内にある攻略をみて進めて良いかと。(というより見ないとすすめないかと)
おまけでの彼女の言葉には自分自身とそして私たちプレイヤーへのメッセージが込められているように感じます。
私の視界には入らない、もしくは私自身が見ないようにしているだけで、
このゲームに登場したすべての人物は現実にも居るのだとおもっています。ネームドキャラは勿論、
助けてくださいと悲痛の叫びを送ったあのメールの送り主も
撫子の両親も、A男もB男もC子も、そして幼いころの夏鈴花も、夏鈴花の騒動のとき助けなかった野次馬たちも。
私と同じように今を生きているのではないかと。
でも私たちが彼らを知るときは
大きな事件や騒動になった際にニュースやネットで切り取られた、年齢、犯罪、性別、家族歴、職業、被害者と家族、加害者とその周辺などなど…の記号だけ。それしかない情報でも私たちは当事者たちを語ろうとします。
それこそが彼女が発した「○○い」という言葉の意味ではないかと。
私には夏鈴花を善か偽善かという価値観や正しいか否かで判断することはできませんでした。
ですが少なくとも彼女があの形で決着をつけられたことは、確かに救いだったのであろうと思っております。
社会の集団から見なかったことにされてしまう人たちの声と
それらに手を差し伸べて優しいと称される人の見えない声に触れるゲームです。
『あの日あの時あのぬいぐるみ』
今だからこそ震災を思い出す
■作者 ArtCrime様
■プレイ時間:5~15分
■ゲームの概要
・ジャンル:震災シミュレーションノベル
・ED数 :11
・セーブ機能あり
また作者様より
・プレイする前の注意事項
とのことです。その他にも確認事項がありますので必ずゲーム概要欄の説明全てをご確認ください。
ゲームの導入:
今日はぬいぐるみのお泊り会です。今回は少女の家に親友のぬいぐるみがお泊りに来ます。
少女は自分のと親友のの二つのぬいぐるみと一日を過ごします。ご飯を食べるのもテレビを見るのも寝るときも一緒です。
そして明日の朝、彼女にぬいぐるみを返す
…はずでした
感想
震災ときくと東日本大震災を思い浮かべる方が多いと思います。
このゲームの世界も3.11を想像していただければいいかと。
実際の被災写真とリアルなSEが相まり、その臨場感によってこれが約12年前現実で起こっているという事実と向き合うことになります。
読み上げ音声が入っているようです。
もし、音声より先に進めたいけど音が気になるという方は一度そこでセーブし、タイトルに戻るを選択してロードし直せば読み上げがリセットされますので、一応参考までに。
ゲームの少女は幼稚園児なので今自分がどのような状況に置かれているのか理解できていないというのが切なく、そして震災当時、少女と同じくらいの3~5歳くらいだった子供たちも巻き込まれていたということを考えると、子どもたちの目には何が映ったのか想像するだけでもいたたまれなくなりました。
どのルートも実際に起きた問題や事故事件などを元に作られています。
今どこかで災害が起きるとSNSで様々な注意喚起が促されることがありますが、その多くはこの3.11での出来事を教訓にしたものなのですよね。
あの当時何が起きていたのか、あの場にいたすべての人が不安と恐怖の中過ごさねばいけなかったということは忘れてはいけないと思いました。特に見落とされがちな市の職員も警察も救助隊も、想像を絶する世界だったのだろうなと。小学校…体育館…そうですよね。
私自身、家が倒壊するほどの被災は経験したことはありませんが、
中越地震、中越沖地震と震度6以上の揺れを経験しており、余震も含めのあのときの揺れは今でも覚えています。
周りの棚や物が今まで聞いたことがないような音を立てている中、目の前の机に本能でしがみつくのがやっとでそこからちっとも動けない。机の下にはいるなんて無理で、揺れが収まるのをただ祈ることしかできませんでした。
停電が復旧しテレビをつけたとき、自分たちもよく見知っていた地域が崩壊しているとのリアルな映像が流れていました。
そして3.11
とても長い長い揺れでした。収まってからテレビを見ると
何やら東北の沖で揺れたそうだという初報。最初は震源地はどこだマグニチュードはいくつだという情報だけだったのが、時間がたつにつれ震度情報で宮城岩手福島がどんどん赤く染まっていく様子。必死に地名を読み上げ続けるアナウンサーの声。
そして突然ニュースが港の固定カメラ映像になり、あの恐ろしい光景が映されていました。テレビで流れた津波の映像は、数時間前まで人や車が行きかっていたであろう道が次々と飲み込まれ建物も地形も崩壊していくというあまりにもショックなものでした。
震災から少し経ったあとのことですが、
現地ボランティアに定期的に参加していた方がいて、その方から現地のお話を聞いたことがあります。テレビで流れていた映像は、映せるようにかろうじて綺麗になってた所なだけで
現場にはまだ自宅の場所すらわからない人や家族が見つからない人がいたし、家の整理作業中にどこかから流れ着いていたのであろう方を見つけたこともあったと。
他にも自然災害は沢山起きていますが、直接の被害者以外からは忘れられてどうしても「なかった」ことにされてしまうと思います。
震災の爪痕とイメージだけでなく立ち上がって復興すること、と
震災のことを忘れないこと
この二つは矛盾しているようにも見えますが、これからを生きる私たちにとって両方必要な視点であると思っています。
当時の様子を知る、防災意識を高めるなど
様々な視点で取り組めるゲームとなっています。
裏話に作者様の想いが綴られていますのでプレイした方はそちらも是非。
『疑似体験ADV「自己認識」-type of soul-』
ADVで自己分析をするゲーム
■作者 ショックガール様
■プレイ時間:1周約1時間
■ゲームの概要
・ジャンル:疑似体験ADV
・ED数 :1
・セーブ機能あり
ゲームの導入:
プレイヤーはう○こ世界の観測者です。
観測者であるあなたは、う○こ世界の住人の心を読めるようになったほか、スペンサーくんの行動を選ぶことができます。
2月1日、戦争がおわりました。
しかしスペンサーくんは戦時中のトラウマを抱えており、すぐに家族の元には戻れないようです。
感想
作者様の世界観とメッセージが色濃い作品です。
導入にはう○こと書いてありますがギャグもコメディ要素もなく、シリアスかつややシビアで暗い内容です。人によってはホラーだったり、理解しにくかったりするかもしれません。哲学的な個性が光るゲームですね。
実写のムービーや背景の演出など随所に拘りがあって、見ていてすごく魅力的だと感じました。
基本的にゲームの進行はノベルが続くのですが、
時折、「目標」→「判断」→「解」の3要素が出てきます。
目標
スペンサー(あなた)が今これから行う行動の目的を指しています。
この項目では何もしません。選択肢ボタンの内容を読んでボタンをクリックするだけです。
判断と解については作中でも説明があるので割愛します。
ざっくりいうと
前に戻るボタンを押して全ての解の選択肢を予め見ておいて、一番自分の気持ちに近い判断と解をえらんでいくと思っていただければいいかと。
この作品が指している自己認識を簡単に言い換えると
「自分自身のことをどんな人間だと自分で思っているかを知る」ということだと思っております。
ここで大事なのは「人からよくそう言われるから」とか
「社会で自分が分類されるカテゴリー(病気や障害/社会的立場職業家族関係/ジェンダー/世代とか)が一般的に○○といわれているから、そこに当てはまる自分も同じだと思う」というような、
外部から得られる認識のみの話ではないということなのかなと。
あくまで「あなた自身が自分をどう捉えているのか」に焦点を当てているとうことです。
一般的な性格診断と何が違うのかと言えば、
質問に対して当てはまるか否かを答え続ける性格診断に対して
このゲームでは、自分がスペンサーと同じ状況になったらどうする?と実際に考えて選べる点でしょうか。ゲームタイトルの疑似体験とはそういうシチュエーションの要素が強いということですので。
この手の題材では結果が合っているかどうかという視点のみで語られがちですが、妥当性と信頼性の検討についてはこの作品にその基準を持ち込む必要はないかなと個人的に思っています。
メタ的な話をすると
スペンサー君のお話とプレイヤーの心理分析の2軸で話が進んでいくという感じですね。
心理診断というシステム上、1周で十分醍醐味を味わえるかと。
独特な世界観の心理テストを味わえるゲームです。作者様の思考全開の作品に触れたい方おススメです。そういう作品は私個人的に好きなので。
一応結果に触れておくと私は最初から最後までクールタイプでした。
これは余談ですが
この作品に関しては
報酬目的やこのゲームの主題を理解していない状態のプレイヤーをただ増やすことは、作者様とプレイヤー双方にとってミスマッチになる可能性を考慮し、ノベコレ内での応援はせずこの記事での紹介のみで留めておくことにいたしました。
最後に
今回は
ゲームの中のお話です、では終わらず現実の我々に直結するような内容のものを集めました。
テーマから各作者様たちの伝えたい思いが感じ取れる作品ばかりだったのではないかと。そういう内容の物が私自身興味があったりするのでニニニパンとかまさにそれまた似た系統のゲームを探していければと思っています。
最後になりますが、各作者様プレイさせていただき誠にありがとうございました。
気になる作品がありましたら是非ご自身の手で触れてみてください。
今回記載したゲームの他にも
ティラノゲームフェス2023には沢山のゲームがあります。
また今年のフェスに未参加の作品や、去年までのフェス作品などもありますし、
ノベルゲームコレクション掲載以外のゲームもいずれは記録に残していきたいと思っていますので
自分の制作と合わせながらゆっくりと紹介させていたければと思います。
お付き合いいただきありがとうございました