肉じゃがと椋子
私は、どちらかと言えば料理をするのが好きだ。
もっと言えば料理をして食べるのが好きなのだ。
食べたいと思ったものを美味しく作れて
出来たての熱々が食べられる
そんなに幸せなことはないだろう。
だかしかし、私は料理上手とは言えない。
何故なら長年、男性が結婚したいと思う女性の
得意料理ナンバーワン「肉じゃが」を
上手く作れたことがないからだ。
高校生の頃、いつか好きな人に肉じゃがを作りたい!
と意気込んで作ったことがあった。
しかし、1口サイズが食べやすいかな!
なんて安易な考えで
じゃがいもを小さく切ってしまった為に
蓋を開けたそこにじゃがいもは居なかった。
とてもショックを受けた高校生の椋子は
じゃがいもが居なくなったあの日以来
またじゃがいもが居なくなるのを恐れ
肉じゃがを作ることが出来ていなかった。
そしてあれから、5年が経った今
深夜24:00にバイトを終えた椋子は
何を思い立ったか肉じゃがを作り出した。
(明日には味がしみて美味しくなるだろう)
そんな期待を込め、具材を切り、炒め、水を加える。
沸騰させて、酒、しょうゆ、砂糖、みりん
調味料も入れ、そして煮詰めた。
ここからがあの日を思い出す瞬間…
この蓋を開けた時じゃがいもが居れば。
大きめに切った。きっと大丈夫。
息を飲み、おそるおそる落し蓋を開けると
そこには大きなじゃがいもがゴロゴロ!!
成功した!やった!!ホクホク!!
最高に美味しそうだ!!
ここから味を染み込ませるため寝かせるのだが
1回味見をしよう。
(さぁ、美味しくできたぞ〜〜)
パクッ
…
何かが足りない。
何か、何かが足りない。
とても、とても味が薄いのだ。
おかしい、分量も間違っていないはず。
何が足りない、
一体何が…
仕方なくレシピを検索し調べてみることに。
…
ほんだしだ!!!!!だしが入ってない!!
そりゃ、薄いわけだ!野菜の甘みしかない!
やってしまった!!
汁がまだ残っている間に入れなければいけなかった。
少量のお湯にほんだしを溶いて入れようか…
入れるしかない、味が無いんじゃダメだ。
そうして椋子はほんだしを入れ
もうひと煮立ちさせた。
そして、じゃがいもは居なくなった。
味見をする前の肉じゃが