映画感想『GOLDFISH』

4月4日鑑賞

良かった!

もっと独りよがりで閉じた作風の映画かと思ってたけど、風通しの良い万人向けの作品になっていたのが意外だった。これ見よがしじゃない長回しのワンカットや画的にカッコいい構図のショットもあったりして、いわゆる上手い映画なんじゃないかと思えた。

この出来の器用さが、作り手の分身である主人公のポジションとも重なる。主人公は社会に溶け込んでいる人でも社会から完全にはぐれた人でもなく、離婚したり貧乏したりしてるけど曲がりなりにも音楽を仕事にしてちゃんと生活を成り立たせている、“まあまあ上手くやってる人”だ。ハルやアニマルや娘といったよりアウトサイダーな人たちの姿は、そういった微妙なポジションの主人公の目を通して描かれるため、上から目線や単純なアウトサイダー礼賛のどちらにもなっていない所が良い。

言うなれば、街の雑踏の中で変なことをしているちょっとおかしい人に対して「同調はしないけど、そういうのもいいと思うよ。俺も似たようなもんだし」という気持ちが根っこにあるような映画だと思った。

音楽モノの作品ってよく「みんなの心が一つになる」着地になることが多いけど、それはちょっと窮屈な世界観なんじゃないかと思う。でも本作は、最終的に登場人物たちはみんなそれぞれ違った生き様を持っていて、その全部に敬意を示しつつ、俺は俺で生きていくぜ、という着地になっていて、とても好ましかった。

亜無亜危異のことはよく知らなかったけど、自分の好きなベテランロックバンドの活動とも通じるエモーションがあって熱くなった。エンドロールで落涙。観てよかった。 

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