ミッドサマー,ねじれたハッピーエンドの映画。
期間限定配信で「ミッドサマー」が見れると聞いたので,さっそく見てみることにした。ホラー映画に似つかわしくないくらい,良い評判ばかりを聞くので見てみたが,唐突で異常な性交シーンがあるので,視聴環境には要注意な気がする。
精神病を患う妹を持つ主人公ダニは,恋人のクリスチャンと微妙な関係にある。それは,妹の精神病に振り回されて,自身も薬が手放せなくなったダニを「重く」感じたクリスチャンが,一年近く「別れたい」と考えているが,一方でその優柔不断な性格から決断することもできないでいたからだ。クリスチャンの友人たちは「依存されすぎ」と言って別れることを勧めるが,そんな折にダニの妹は両親を巻き込んで排ガス自殺をしてしまう。
一年後,クリスチャンとその友人たちは,スウェーデンに行く計画を立てていたが,ダニには伝えないでいた。心の傷が回復していないダニは,それにショックを受けるが,「誘わないのも変だし」という理由で誘われたスウェーデン行の旅行に同行することにする。
向かった先は,クリスチャンの友人ペレの故郷のホルガ村。そこは独自の宗教習慣が残る村で,悪を追い払うための夏至の儀式が始まる最中だった。
この物語はルーン文字やら北欧神話やらがモチーフになっているそうなのだが,私はそれに詳しくないので,そこはさておき,監督曰く「これは失恋映画」であって「ねじれたハッピーエンド」の話らしい。
ハーメルンの笛吹男のような立ち位置のペレは,友人たちをだまして(?)ホルガ村に連れてきて,儀式に必要な生贄にしてしまう。また,変な薬を飲まされた挙句村の女性と性交をしてしまったクリスチャンも,踊りの勝負に勝って「メイクイーン」となったダニに,その性交現場を目撃されて,生贄に選ばれて焼き殺される。村人たちが,生贄となった者たちの苦しみに思いを馳せて泣き叫ぶ中,ダニは一人微笑んで物語は終わる。
ダニは,家族を妹の自殺によって失って,恋人もまた,失う。しかし,恋人はホルガ村に来る前から,もうダニのもとには居なかったも同然であって,ホルガ村が奪ったとはいいにくい気がする。
ペレが「君のためになる」と言って,ダニにもホルガ村に来るよう説得していたが,考えてみれば必要な生贄は4人。子種を残す相手は男,と考えると,別に女性であるダニをも誘う必要はなかったはずなのだ。
ペレは「僕も家族を失ったから気持ちはよくわかる。村は家族だ」みたいなことを言って誘っているところを見ると,完全に孤独になってしまうのが目に見えているダニを村に誘い,村の仲間にすることで,ダニに「新しい家族」を与えようとしたのではないか,と思ってしまう。