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バトルスピリッツ クロスオーバーへの待望と失望

これはバトルスピリッツクロスオーバーをプレイして怒りに燃える人間の書いた感想です。
あらかじめ言っておくと、自分は紙のバトスピについては聞きかじり程度の知識しかありません。
バトスピ自体子供の頃にアニメを見ていた程度で、知識のほとんどはクロスオーバー及び前作であるコネクテッドバトラーズが基準になっているのをご了承ください。
バトスピをあまり知らない人にも伝わるように、なるべく専門用語などは少なめにすることを心がけています。


前作、コネクテッドバトラーズについて


2022年4月、約12年振りにバトルスピリッツの家庭用ゲームソフトが復活しました。
先に言わせてもらうと、発売当初のコネクテッドバトラーズ(以下コネバト)の評価は著しく低く、発売日から様々なバグ動画が旧Twitter上にアップロードされていたため、それで購入を避けた人も多いかもしれません。


バグの温床。


バトスピの家庭用ゲーム復活は歓迎されていたものの、効果処理やゲームデザインが複雑なバトスピをデジタルに無理なく落とし込めるのかという不安の声も見当たり、それは大きく的中する形になりました。

まず、カードの効果処理にあまりにもミスが多い。ゲームバランスを崩壊させる派手でわかりやすいものから、バトスピ初心者では気付かない地味なものまで把握しきれないほど存在し、公式サイトの不具合や修正済みの不具合一覧がとてつもない長文になったほどです。
それだけでなく、ストーリー後半は進行不能バグを高い再現性で発動させてくる敵が鬼門になり、なんとかその敵を突破しないと話の続きを読むことすらできないという有様。

そんなコネバトですが、長期のアップデートを経た現在では、いまだ多くのバグや不具合を残しながらも「売り物にしてはいけない」という状態から「一応遊べる」レベルへの改善は行われました。
それでも未完成品を売ってしまい、プレイヤーがデバッガーになってしまったのは事実。DLCのパック追加によってカードプールの拡張が行われる頃には多くのプレイヤーが離れ、オンラインマッチも人口が減少していました。

ここまでだとコネバトが褒める部分のないどうしようもないゲームだと思われてしまいますが、低品質にも程がある対戦部分を除けば、確かに評価できる部分が存在します。
それが、コネバトのストーリーやキャラクターです。

世界の危機や命のやり取りはありません。

リアリティラインは完全に現実準拠で、主な舞台は部活やカードショップ。最終目標は全国大会優勝。過去のアニメ作品である「バトルスピリッツ 覇王」を彷彿とさせつつも、対象年齢をアニメから引き上げたコネバトのストーリーは、今までのバトスピとは全く異なるアプローチで展開されました。

サブイベントによる掘り下げが豊富なこともあり、競技としてのバトスピに向き合うキャラたちの魅力が充分に引き出されていたと思います。
キャラの立ち絵とテキストだけでなく、ストーリーに合わせた1枚絵が結構な頻度で挿入されるのも雰囲気を盛り上げ、後半は操作キャラが主人公の虹宮トーヤからヒロインの白鳥ユウに入れ替わるという予想外の構成にも引き込まれました。

ヒロインだけど最大のライバル。良い。

 
しかしこのゲームに求められていたのは「デジタル化したバトルスピリッツ」であり、そこがおざなりではゲームとしての低評価が覆ることもありません。
本家TCGが2008年から続く長い歴史を持つのに対して、コネバトで使えるのは2020年から2022年初頭まで展開された「転醒編」及び「真・転醒編」のカードのみ。
そこまでカードプールを絞ったコネバトがこの惨状であれば、バトスピの本格的なゲーム化は(今の開発では)難しいという現実を突きつけられたも同然であり、自分はほとんど諦めていました。

まさかの続編「クロスオーバー」への期待

そんな状態から約2年を経て発表されたのが、コネバトと同じFuRyuが提供する正統続編である「バトルスピリッツ クロスオーバー」(以下、公式略称であるバトクロ)

前作にトラウマを植え付けられた人は多く、当然ながら「まともに遊べるの?」という不安を誰しもが抱くでしょう。一方で、発売が近付くにつれてバトクロに対する期待の声を挙げる人たちも少なからずいました。コネバトの惨状を見てなぜ?と思うかもしれないので、軽く説明します。

①待望のコラボカード実装


TCGのバトルスピリッツを語る際、避けて通れないのが様々なコンテンツと実施されているコラボです。バトスピのコラボカードは、通常環境でも使用されるほど強力なカードや、汎用性の高いカードが多いというのも1つの特徴になっています。

前作コネバトでも、発売前にそれらの強力なカードが収録されないとアナウンスされて落胆する人が大量発生しました。
コラボカードに関しては紙でも再録が難しいなどの複雑な事情が存在するので仕方ないと割り切るしかないのですが、それでも「あのデッキに○○を使えたら」というもどかしさを感じた機会は数え切れないでしょう。
バトクロでもそこに期待している人は少ないと思われる中、公式Xアカウントが重大発表を行った。

歓喜。

基本的な効果は継承しつつも、イラストや名前を新たにしたゲームオリジナルの「クロスオーバーカード」として、需要の高いコラボカードを多数実装。
膨大な数のコラボカードの全てを収録することは難しいが、様々なデッキに入る余地の存在する強力なカードがピックアップされ、これでクロスオーバーに興味を持った紙のプレイヤーも多いと思います。

そっくりさん達

② コネクテッドバトラーズの世界観やキャラクターを継承した正統続編であること

さきほど書いた通り、コネバトのストーリーモードやキャラクターには惹かれるものもありましたが、主人公が全国大会で優勝という綺麗な終わりを迎えて完結しています。そんなコネバトの続きが見られるという点は嬉しくも予想外でした。
あくまで学生最強である主人公はプロプレイヤーを相手に更なる高みを目指し、前作で主人公に負けたライバル達もリベンジを目指すチャレンジャーとして再登場。
魅力的な世界の続きを見られるという点が、個人的には嬉しかった要素かもしれません。

■プロローグ

高校生最強のカードバトラーを決めるバトスピハイスクールチャンピオンシップを終え、日常に戻ったトーヤはある噂を聞く。
年に一度、その年を代表するカードバトラーを決める大会、「バトスピクロスグランプリ」にトーヤやユウが招待されるかもしれないというものだった。
バトスピのプロたちも参加するバトスピ界の一大イベント、ユウも参加するなら頑張らないと!
高校生最強となったトーヤは、新たな大会に向けて、闘志を燃やす。

最初からレベル100状態。

③キャラクターゲームとしての大幅な進化

前作も対戦時のアバターとして使用可能なオリジナルキャラクターの総数は多かったのですが、ストーリーに関与しないアニメ出典のキャラは当時アニメ展開中でプッシュされていた「バトルスピリッツ サーガブレイヴ」と「バトルスピリッツ 赫命のガレット」から総勢5人のゲスト参戦に留まっていました。
バトクロにおいてはアニメ全作の主人公が使用可能になると発表され、これには多くの人が喜んだと思います。

派手。

キャラを出すだけなら簡単じゃないの?と思うかもしれないが、前作のコネバトを基準にした場合、このゲームはキャラ一人一人のボイス収録量が非常に多い。アルティメットトリガー、煌臨、アクセル、転醒etc…と、挙げきれないほどの固有ワード能力が存在するバトルスピリッツですが、コネバトにおいてはそれらの発動時にも専用ボイスが用意され、対戦を華やかに彩っていました。

当時のアニメキャラが未来のギミックをボイス付きで叫んでくれるのは、子供の頃にアニメが好きだった自分としても熱い要素でした。
更に、コネバト時代のオリジナルキャラクターもボイス新録で続投に加え、新キャラも多数登場。

キャラクターゲームとしての気合いは確かに感じさせてくれるため、後はゲーム部分がまともならば……。

④前作がハードルとして低すぎる

はっきり言って売り物としてのレベルに至ってなかった前作を下回る方が難しい。ゲーム開発の事情なんて一切知りませんが、買う側としてはそうでないとたまったものではありません。
前作は久しぶりのCSバトスピという手探りであっても、今作はある程度プレイヤーの声が届いている状態からのスタート。流石にFuRyuさんもそこはわかってくれているでしょう。わざわざ続編を出すというのだから、そう考えるのが自然です。

ちなみにバトクロには前作同様、βテストや発売前の体験版も存在しない。結局のところ、実際にプレイしてみないと全容はわかりません。
期待と不安の両方を抱えた今作はいざ発売日を迎えたのですが……

バトルスピリッツ クロスオーバーは想像以上にヤバすぎた

パッケージ特典カードに興奮しつつゲームを起動すると始まったのは、前作のシナリオ振り返り兼チュートリアル。

光ってるカードを見たらテンションが上がる。

チュートリアルの対戦部分はスキップ可能だったのでそこは飛ばして、ゲームオリジナルのスターターデッキを購入したら、ついに対戦開始!

しかしその先に待っていたのは、前作コネバトよりも遥かに酷い地獄でした。

動かないCPU、終わらないバトル


正常に行われない効果処理、発動すらしない効果まみれな時点で前作のトラウマが襲いかかるが、今作はそれに加えて対戦が進行不能に陥る場面が非常に多い。
その理由は、対戦しているCPUが頻繁にフリーズを起こすからです。
○○のカードを使っただけで止まった。何もしてないのに止まった。進行不能に陥った報告や再現性の高いシチュエーションは無数に存在しますが、以下は自分が遭遇した例。

対戦相手が至高兵アーティファクト・ゴレムを召喚。召喚時効果で2枚ドロー&2枚破棄の手札交換を行うはずが、捨てるカードを選んでいるCPUが硬直し、事実上の進行停止。こちらができるのは泣きながら投了を押すことだけ。

対戦相手が自分のスピリットにブレイヴ(遊戯王でいう装備魔法、デュエマでいうクロスギア)であるテッポウナナフシを合体。そのまま合体解除。合体、合体解除。合体、合体解除の無限ループ発生。こちらができるのは泣きながら投了を押すことだけ。

自分のスピリットが相手の最後のライフにアタック。相手は使用できる防御カードがないと宣言するも、その直後に相手が硬直。泣く泣く投了。

ネクサス(遊戯王でいう永続魔法)を配置しただけでフリーズ。投了。

何度も詰まされた個人的なトラウマ。


バグ祭りのコネバトですら少なかった進行不能。それが頻発する様に絶望しながら投了するユーザーたち。こんなものに8000円を出してしまった怒りが膨れ上がっても、それをぶつける先は公式の用意した不具合報告フォームしか存在しません。
自分は対戦するたびに不具合報告しているのでゲームより仕事してる気分になってます。

初期バージョンのコネバトよりも劣る、脅威の低品質

正当続編としてリリースされたバトクロは、有料βや未完成と罵られた初期コネバトを遥かに下回る低品質でした。
「最低限遊べる」という低いハードルすら超えられなかったこのゲームには、既に発売延期済みで後がないという事情もあります。
それを踏まえても、このまま売ろうという判断を下したのはあまりにも酷い。コネバトの悲劇から何も学んでいないどころか、前作を支えてくれたプレイヤーを再びデバッガー扱いして胡座をかこうしているのではないか。
進行不能、投了。進行不能、投了。進行不能、投了。
一応言っておくと、ユーザー側にも、進行不能に対する対策手段はあります。盤面が複雑になりにくく、CPUが壊れる前に決着を付けるシンプルなアグロ(速攻系)デッキを使えばある程度は進行不能対策になります。
しかし、それ以外のデッキが好きな人や、複雑なデッキを選んでしまった人が地獄を味わうのは変わりません。

初期デッキである炎契約は動きがシンプル故にバグが起こりにくく、CPUがフリーズするまでに決着がつけやすかったのでオススメです。


統括すると、バトルスピリッツクロスオーバーはCPUが無限の思考に至らぬ様に気を遣いながら進行しなければ詰む。もはやバトルスピリッツと名乗っている謎のゲームと成り果てました。

むろん、進行不能が発生しなかったところで対戦の内容もまともではありません。
不具合の数があまりにも凄まじく書き切るのは不可能だが、ゲームバランスを容易く破壊する強烈なバグが多数存在しています。
これもキリがないので、触れるのは少しだけ。

本来はお互いに減るライフを1に固定するカードであるカード<オラクルXVIIオーバースター>
バトクロの場合はこれをセットしている間は何があってもお互いのライフが減らないバグが存在するため、山札切れ以外での決着は事実上不可能。
ひと足早くオンライン対戦が可能になったSteam版では、このカードと山札を削るデッキ破壊の組み合わせが猛威を振るう無法地帯となっている。

アタック時、スピリットのレベルと同じ枚数相手のデッキを削る効果である「粉砕」。
ver1.01環境下におけるバトクロの場合、バグによって「粉砕」を持つカード効果は全て「大粉砕」という効果に置きかわっている。大粉砕がデッキを破壊する枚数はなんと粉砕の5倍。 レベル2なら10枚でレベル3なら15枚。バトスピのデッキは40枚なのに、こんなやつらが序盤から襲ってくる。
あまりにも強すぎるため、このバグを利用してCPUがフリーズする前に一瞬で勝負を終わらせてストーリーを楽しむという選択肢まで生まれてしまった。

オンラインの破壊者


バランス崩壊をもたらすものだけでなく、ゲームクリア時に集めたカードが未所持になる最悪のバグも数多く報告されているが、自分は運良く遭遇せずに済みました。
ちなみにカード全消失バグはSteam版のみ修正済み。PS版とSwitch版にも同じ内容の更新データが配布されると思われますが、失われたカードの補填がどうなるかは未定です。


好きなカードが使えない苦しみ

いきなり語らせていただくと、自分が1番好きなデッキは、主人公である虹宮トーヤくんが前作で使用し、過去にはアニメの主人公が使用していたテーマのリメイクでもある【覇皇】デッキです。
【覇皇】の切札として活躍するカード<爆炎の覇王 ロード・ドラゴン・バゼルX>は、バーストカード(遊戯王でいう罠カード)の発動時に再アタックが可能になる効果と、バーストの強制発動効果を合わせ持つため、手札にバーストカードを抱えている分だけ連続アタックが可能になるという突破力の高いカードデザインになっています。

前作で大勢がお世話になったであろうカード。大好き。


2年前が全盛期である【覇皇】は新ギミックによるインフレに取り残されたテーマではありますが、CPU相手ならなんとかなるだろうと考え、余ったポイントを注ぎ込んでパック購入。

今作からは特定の属性のみをピックアップしたパックが登場。ありがたい。


久しぶりに出会った覇皇のカードたちを懐かしく思いつついざ実戦へ赴く。
しかし、勝てない。めちゃくちゃ勝てない。これは覇皇が弱いからではない。
もはやおなじみ、正常な効果処理が行われない不具合でカードが満足な性能を発揮できないからです。
バトクロにおける<爆炎の覇王 ロード・ドラゴン・バゼルX>は、バグによってバーストの再セット効果及び回復効果が誘発せず、連続攻撃が行なえないと判明。様々な対戦相手と検証していたものの、ver.1.01のロードドラゴンは1度しかアタックできないカードに成り果てていました。
これが今作のver.1.01における実質的なテキストです。

弱い……あまりにも……


苦労して作ったデッキがまともに遊べないダメージは流石に大きくて堪えました。


更に失われた信頼

前作から多く、本作にも通じる擁護として、「バトルスピリッツのコア移動処理やカードの挙動が複雑すぎる」というものがあります。自分も前作まではそう思っていました。
しかし前作に関しては、効果処理が正常に行われない不具合がメインであり、一部を除いて対戦自体は問題なく進行していたので最低限ストーリーを進行させることはできるし「発売したら想像以上にバグの温床だった」という見方はできます。
まともにプレイすることすら難しい今作に関しては、もう語るまでもない内容にも関わらず発売を強行し、発売と同時に不具合報告を行う専用フォームを設立。完全に有料βテスト。
いくらバトルスピリッツのデジタル化が困難を極めたとしても、妥協でこんなものを売っていいわけがない。あんな出来だった前作で見放さずに続編を購入してくれた(してしまった)ユーザーをデバッガー扱いする開発は批判されて然るべきであり、同情する余地は一切存在しないと思っています。
そんな惨状に関わらず、前作と同じく、やたら強気な有料追加コンテンツ。

デラックスではなく通常版を買ってよかった。


そして実は、バグや不具合以外にも大きな問題点がある

おそらくこれは、シナリオ後半の強力な相手に敗北し、再戦を挑んだユーザーなら察しているでしょう。

「こいつら、毎回手札の内容同じじゃね?」

デッキに同名カードが3枚しか入らないにも関わらず、何度対戦しても初手で同じカード2枚を使用。デッキの中核となる創界神ネクサスを初手で必ず配置、1枚しかデッキに入れることのできない制限カードを必ず使用など、同じ相手と戦うと恐ろしい再現性を発揮するのである。

必ず2体で襲ってくるトラウマカード。


前提としてバトルスピリッツは、40枚のデッキに対して入れることが可能な同名カードは3枚まで。他のカードゲームでよく見られる山札の中から特定のカードをサーチする効果も存在しません。
現在の環境では初手の1枚を固定する契約というシステムにより初動の再現性は確保されているものの、それでも上振れと下振れの差が激しいゲームデザインになっていると思います。
メタカード、ドローソース、フィニッシャー、防御札。様々な役割のカードとその枚数配分に日々プレイヤーが頭を悩ませる。
そんなバトスピで、毎回最強の手札が与えられているんです。公式チートを使っているに等しいキャラが作中で評価されても、すごく複雑な気分です。

前作でも環境デッキを振りかざすCPUが初心者を絶望させるほど強いという問題点は存在しました。今作の後半でもそれは健在です。
前作の場合は何度もリトライして、相手のデッキが回ってない隙を突いて勝った時も、相手の上振れをこちらが上回って勝った時も、大きな達成感を得られました。
1試合1試合が全く別の内容である一期一会。それは、バトスピだけでなく「運ゲー」要素を持ち合わせたカードゲームそのものの面白さとも言えるでしょう。
しかし今作の場合は、何度リトライしても動きは同じ。デッキテーマだけでなく動きも割れているのだから、ガンメタ構築による対策によって突破できるかもしれませんが……それって面白いですか?
正直、あらゆるバグと違って直る可能性の見込めないこれが1番嫌まであります。バトスピどころかカードゲームを否定してます。


「クロスオーバー」はクソゲーなのか


これに関してはかなり複雑な気持ちです。対戦シミュレーターとしては紛れもなくド級のクソでありながら、良い部分も確かにある。人に勧めるなんてことは絶対にしないし、良ゲーと言ってる人がいたら信じられないけど、世紀のクソゲー扱いされたら嫌な気分になるかもしれません。楽しさと不快さが共存しておかしくなりそうです。
なので、不満点を一通り挙げた後は良い部分やゲームとしての進歩を語らせてもらいます。(一応、ネタバレはあまりないように注意します)
これで興味を持ってもらえるなら嬉しいですが、おそらく買ったら後悔します。

良かった部分

①コネバトの「その後」を描くストーリー

発売前に期待されてる部分でも挙げたことですが、ここは本当に期待通りでしたね。
前作だとバトスピ復帰勢であり実質初心者だった虹宮トーヤが、今作は最初からトップクラスのプレイヤーとして君臨。カードショップの人気者として様々なチャレンジャーに勝負を挑まれるのが前半の主なイベントになります。
前作のポジション補うかのように、今作では新入部員の初心者である入谷ノボルが新登場。序盤は操作キャラが頻繁に交代し、実質的にはダブル主人公で進行していきます。
このノボルが主体となる序盤のティーチングパートは、バトスピ入門書として非常に完成度が高いです。防御札を切るタイミング、アタックのタイミングなど、複雑なバトスピのセオリーをサブイベントで丁寧に説明してくれるため、多少知識を忘れてた自分も助けられました。

基礎から難しい処理の話題まで色々


めちゃくちゃわかる。

更に嬉しかったのは、前作でライバルだったキャラクターたちの掘り下げやアフターストーリーが見られる点。
コネバトは日常パートも豊富ではあるものの、出番に関しては部活の仲間たちがメインであり、ストーリー後半に当時するライバルキャラたちはキャラクターの全容が把握しにくいところがありました。しかし今作ではあらゆるキャラにその後のイベントが用意され、サブイベントのボリュームは凄まじいです。

前作ではやさぐれていたラスボスのソウジさん。今作ではガキと漫才を披露するフランクな青年に。

シナリオのネタバレをせずに語るのはなかなか難しいのですが、特筆して褒めたい点としては、今作のラスボスが本当に強い。前作のソウジさんはかなり拍子抜けという評判で自分もあっさり勝てたのですが、今作のラスボスは1番高い壁というポジションにふさわしい強さを発揮しつつ、デッキチョイスにも唸らされます。


②「契約」システムの追加とキャラゲーとしての進化

簡単に説明すれば、契約とは対戦前にカードを提示することで、ゲーム開始時から手札に加えられるカードです。
契約カードは手厚いサポートや強力なコスト踏み倒し手段である「契約煌臨」などの強力なギミックを有しており、バトスピのゲーム性を一変させたカード群とも言えるでしょう。
コネバト知識しかなく、契約環境に初めて触れた身としては、両面カードが主体のコネバト環境よりも、動きや目標がわかりやすくなっているのも助かりました。

ここまではバトクロ独自でなく本家バトスピ由来の良さではあるんですが、契約スピリットはキャラクターゲームとしてのバトクロにも大きな相乗効果を生み出しています。

これは前作コネバトで多くの人が感じていると思う不満点なのですが、キャラクターの多さに対し、成立しているデッキテーマがあまりにも少なすぎたんです。
コネバト収録範囲の転醒編と真・転醒編のみのカードプールでは、各キャラに満足なデッキを与えるのは実質的に不可能。強デッキをぶん回してくるキャラがいる一方で、作中の強さに反して「紙束」と呼ばれるほど完成度の低いデッキを与えられるキャラが存在しました。

主人公の1年先輩であり、作中ではデッキ破壊の使い手として紹介された海田アクト先輩。しかしコネバトではデッキ破壊の代名詞であるキャッスルゴレムなど大量のカードが未実装であるため、彼はあまりの弱さにネタキャラ扱いされています。

弱すぎて逆に癒しだった先輩。


ラスボスの六道ソウジは多色使いと紹介された通りに白紫の混成デッキを使用しますが、とにかく色の合う無難なカードを突っ込んだシナジーの薄い謎デッキとなっています。強力なカードが入ってはいるものの、直前まで環境レベルのデッキを使ってくる全国大会の相手と比較したら拍子抜けにも程がある弱さ。

前作の彼は、色んな意味で黒歴史。



これらの原因は、デッキ選択肢の少なさによるものでした。
バトクロの場合、前作のカードも一部を除いた大多数が収録。同時に、デッキコンセプトの中核になりうる契約スピリットが35種も存在し、様々なキャラに割り振られています。

当時惚れていたカードもリメイクされているが、現在はバグで装甲が機能していない。


残念ながら全てが環境で戦えるほど強力とは言いきれませんが、契約カードにはデザイナーズデッキとしての明確な動きが存在します「このデッキ何がしたいの?」とはならないのです。

そして個人的に1番見ていて楽しかったのが、ゲームオリジナルキャラと契約スピリットの組み合わせ。この組み合わせが相当に練られており、前作から続投したキャラが新しく使用する契約スピリットはどれも、プレイスタイルやキャラクター性にマッチした選出がおこなわれています。

上でデッキ破壊キャラと紹介されていたアクト先輩ですが、バトクロではデッキ破壊戦法を主体に環境で存在感を放ち続ける【造契約】という強デッキ使いに転身。

更に六道ソウジも、環境で大活躍した【獄契約】にデッキを乗り換えています。あらゆる属性を使いこなすテーマで多色使いというプレイスタイルはそのままに、前作ラスボスの名に恥じぬ強さを手に入れています。

ソウジとジャバドは今作で1番解釈一致な組み合わせ


契約との相性の良さを抜きにしても、純粋なキャラゲーとしての完成度には目を見張るものがあります。
前作ではアルティメットと呼ばれるカテゴリのカードが申し訳程度にしか実装されておらず、聞く機会も皆無だったのだが、アルティメットが強くなった今作では頻繁に聞くことになるのが「アルティメットトリガー」
対戦中にアルティメットトリガーと呼ばれる効果を使用した際、キャラクターが「アルティメットトリガー!ロックオン!」というアニメ内の象徴的な台詞を放ち、ヒットやノーヒットという効果の結果までボイスが用意されている。

遊戯王の罠カードに近いと紹介したバーストカードの発動時には、対戦相手がなんだと!?というリアクションを取り、そういったカードを警戒する長考時にも専用の台詞が用意されています。
今作一番の目玉とも言える契約煌臨も各キャラクターが力強く叫んでくれるため、設定した切札を使った時に発生する専用演出との組み合わせが熱い。
このような要素の充実による「キャラクター同士が戦っている」感はこのシリーズの誇っていい部分だと思います。

そして、発売前の期待である②と③を見てもらったらわかるんですけどストーリーやキャラゲー方面に関してはちゃんと期待通りのものを出してくれてるんですよね。
それ以外の期待の裏切り方が強烈だったわけですが。

③やっぱり、手軽に遊べるバトスピはめちゃくちゃ楽しい

身も蓋もないかもしれません。バグまみれでもフリーズしても、バトルスピリッツは面白い。
デッキを作るのが好きな自分は「遊戯王マスターデュエル」「デュエルマスターズ・プレイス」「MTGアリーナ」といった様々なデジタルカードゲームを楽しんでいます。
どれも家で手軽に対戦を楽しめる良いゲームなのですが、バトスピにはバトスピならではの複雑なコスト管理や攻防の駆け引きによる独自性が強く、防御札によって立場が一気に入れ替わる瞬間は唯一無二だと思います。
それだけバトスピが楽しい故に、良い場面での進行不能や機能不全のデッキが多すぎる怒りも大きくなるのですが。
ver.1.01現在、Switch版クロスオーバーではオンライン対戦が行えません。1.02で行えるようになったSteam版も上述のオーバースターなどの不正な挙動が悪用されまくる無法地帯。つまりストーリークリアしたらやることない状態なので、まずはまともにオンラインを遊べる環境を整えてほしいですね。

最後に

こんなゲームをそのまま発売してしまったのは許されないことだと思いますが、一応公式が誠意の見える対応をしていることにも触れておきます。
フットワークの軽いSteam版では発売から4日で既に2度にわたって更新データを配信。致命的すぎる不具合には早い対応が入りました。
DLCが長期にわたってリリースされるし、コネバトも継続的なアップデートは続けていたので、しばらくバグ修正が打ち切られることもないと思います。初期コネバトすら比較にならないヤバさであり、現状では焼け石に水なので、最終的にどれくらいまともになってくれるかはわかりませんが……。

この出来じゃ続きは期待できないなと半ば諦めていたコネバトにまさかの続編。しかし前作を遥かに下回るクオリティ。
クロスオーバーの先がどうなるかは一切読めませんが、不具合のないバトスピのゲームが出たら神ゲーになることはわかりきっているので、DCG路線はまだ諦めてほしくないですね。

今回でFuRyuに対する信用は地の底を貫いてしまいましたが、似たような形式で発売しているヴァンガードの方は好評な意見も見かけることがあり、新作が出るとのことなので完全未履修の身として結構気になってます。
バトクロの酷さに対する怒りを原動力に書いた記事で長文になってしまいたしたが、読んでいただきありがとうございました。

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