人と人は、心と心[Footwork & Network vol.22 No.9]
新たな出会いがテーマのFootwork & Network、略してF&N。
今年の3月2日、ゼミにゲストで鬼丸さんに来ていただき、お話を聞いた。それをきっかけに、鬼丸さんの活動のお手伝いをするようになった。今回は鬼丸食堂の活動との出会いを通して、「コラボレーション」について感じたことを書く。
◯鬼丸食堂ってどんなところ?
鬼丸食堂とは、ざっくり言うと鬼丸さんが不定期で開催している食堂である。お金を払って食事をするのが食堂なのだが、鬼丸食堂はちょっと不思議な食堂だ。不思議というのは、料理に対して値段が決まっていない。お客さん自身が料理や空間に満足した分だけ価格を決めてお支払いするのだ。価格というのはもちろんお金でもいいし、食べ物や飲み物、お花などの”物”でも、歌やダンスなどの”事”でもいい。
なぜこのスタイルになったのか。それは鬼丸さんの、お金以外の価値も大切にしたいという思いにある。何かをする、何かを手に入れる、どんな時にもお金が必要になるが、お金は単に価値を交換するための一つのツールにしか過ぎないと考えている。さらには価値基準も人によって異なる。食べる量、食べ物の好き嫌い、食事に対する満足度もそれぞれ違う。食事を通して、“価値“そのものについて考えるきっかけとなる場として鬼丸食堂がある。
◯出張鬼丸食堂 in三豊
私自身、鬼丸さんの考えや活動に魅力を感じ、鬼丸食堂の手伝いをするようになった。7月5日、香川県三豊市で鬼丸食堂が開催されることになり、私もお手伝いをしに一緒に行った。準備段階からイベント終了後まで鬼丸食堂の一部始終を鬼丸さんと過ごす中で、この活動は人と人との繋がりがベースになっていると感じる出来事があった。
今回は出張鬼丸食堂ということで、買い出しから一緒に同行した。三豊市にある産地直送、精肉店、スーパー、パン屋など10以上の店を廻り、地元のものにこだわって食材を調達した。買い物をしていく中で、どちらがいいか迷ったり、何かわからないことがあったりすると鬼丸さんはすぐにお店の人に聞きに行くのが印象的だった。お店の人との会話を通して、おすすめのものや美味しいものを知り、さらにはその土地の特徴や良さを知ることで、料理の内容やお客さんとの会話の内容に活かされていた。人とのコミュニケーションが料理やイベントのスパイスになっているように感じた。
使用した食材の中には、自分たちで調達したもの以外もあった。三豊市に初めて行った私たちを案内してくださった方が作っているチーズ、鬼丸食堂の開催にあたり場所を提供してくださった方が作っている豆腐、スタッフとしてお手伝いしてくださった方が持ってきてくれたハーブ。それらの食材を料理に入れることで、お世話になった方々への気持ちを表しているように見えた。
次の日にも鬼丸食堂としての鬼丸さんの行動は続いていた。鬼丸食堂に足を運んでくれたお客さんのお店に行ったり、やっている活動についてお話を聞いたりと、様々な場所を廻った。お店の人とお客さんというその日限りの関係で終わらせるのではなく、鬼丸食堂を通しての新たな出会いを大切にして、繋げていこうとする思いが伝わってきた。
◯最後に
鬼丸食堂は、イベントそのものだけではなく、始まる前も終わった後も含まれており、様々なコラボレーションのもとに出来ている。開催した場所、地元の食材、携わってくれた人とのコラボレーションの架け橋として料理がある。そのコラボレーションは、何かと何かをただ掛け合わせるという無機質なものではなく、共に作っていく過程やのちの段階で生まれる気持ちを一つ一つ積み重ねて表現していくことで出来上がるものだと感じた。
今回の出張鬼丸食堂を通して、コラボレーションをして創造的な空間を作ることの根底には、繋がりを大切にした気持ちの表れがあることを発見した。
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