Vol.7 フクロウ
私は羊毛で作った動物をケモノと呼んでいる。毛物で獣だからだ。
完成したケモノを外に連れ出して撮影をすることがある。
草地でアルパカを撮影していると散歩中の犬が何度も不思議そうに振り返る。河川敷へ続く道でシカを撮影していると、怪しい奴がいるぞと大型犬が大回りで避けていく。
私はひとりほくそ笑む。
薄曇りの冬の日、ケモノのシロフクロウと湖に出かけた。
陽は傾きかけている。撮影できる時間は残りわずかだ。どこかにいい撮影スポットがないかと探し右手にスマホ、左肩にシロフクロウをとまらせて歩いていた。
前方から近付いてきた人に声をかけられた。
「フクロウよく慣れていますね!」
私は答えに困った。正直に話せば、これは私が作ったもので生き物ではないと説明することになる。生き物でないと言葉にすることには抵抗感がある。どこか何かが違う。時間もないことだし……
「ええ、おとなしいのです。よく慣れています」と答えた。心に逆らわず、けれどけっして嘘でもない。せいいっぱいの言葉で。
テキスタイルプリント「おもいでの森」のためのドローイングから