感想Part1 ミュージカル「GIRLFRIEND」
2024/6/14~7/3にシアタークリエで上演されていたミュージカル「GIRLFRIEND」。これまでの人生1,2を争う素敵な舞台に出会えた!という冷めやらぬ興奮の元、見たことと感じたことをどうしても忘れたくなくて言葉にすることにしました。(と言いつつも書いているうちにだんだんと記憶はぼんやりとしていきもどかしい思いをしているので、正確ではない部分もあるかもしれません。)
↓観劇した全ペアの感想を書くつもりで目次をつくりましたが長くなりすぎたため、目次もいらない状況ですが一応残します。井澤木原以外の感想はまた後程!(笑)
ミュージカル「GIRLFRIEND」/東宝ミュージカルについて
シアタークリエ ミュージカル『GIRLFRIEND』 (tohostage.com)
ミュージカル「GIRLFRIEND」(以下ガルフレ)は、東宝ミュージカルが手掛ける二人芝居のミュージカルで、東宝初出演となる役者6人がトリプルキャストという形でウィルとマイクという2人の青年を演じていた。
1993年、アメリカ ネブラスカ州の片田舎で高校を卒業したばかりの2人が、音楽を通して惹かれ合っていくストーリー。当時の同性愛の見られ方や貧富の格差なども含めて、観劇前に想像していた以上に社会派なメッセージも込められた作品に感じた。
私は、東宝ミュージカルをガッツリ追いかけるのは初めてで、シアタークリエも5年ぶりくらいに足を踏み入れる劇場で、2人芝居もトリプルキャストもジュークボックスミュージカルも、すべてが真新しい体験でした。記事やラジオなどで、次世代の役者を育てる~という言葉がちらほら語られていましたが、次世代のオタクも育てようとしている気がする……と思いました(笑)「東宝ミュージカル」というと少し敷居が高い・お堅いような印象があったのですが、公開ゲネプロの記事や動画がたくさんあがったり、PVのクオリティがすごく高かったり、インスタの使い方がうまかったり、とにかく広報が強くて(&追いかけているファンからすると有難い情報がたくさんアップされて)開幕前から楽しみな気持ちをお膳立てしていただいている気持ちになりました。それから、東宝ナビザーブを使ったリピチケの取りやすさ!公演期間中かなり助かった。さすが天下の東宝だなと思う瞬間が多数~!
そうして当初より増えたチケット全9枚(本当は、もっと行きたかった……)の感想を、できるだけ書き記したいです。こんなに最高の作品に出会えた夏、忘れたくないね。
井澤・木原ペア
▢6/20夜,29夜,30昼,7/2昼 観劇
客席後方から舞台に上がっていくウィルが、観客に向けて語り掛けるように始まるのがとても好きだった。井澤ウィルの愛らしさもあって、一瞬でウィルに感情を傾けて親しい友人のように感じてしまう。「ふみよむ月日重ねつつ いつしか年もすぎの戸を」という学問の象徴みたいな言葉を読み上げてぽいと投げ捨てる姿が、清々しいのにちょっと痛くて、この人は一体どんな人なんだろうと惹き付けられた。(この言葉、日本人的感覚だと卒業式で蛍の光を歌った……?と思ってしまったけど、きっと違いますよね……??)
マイクとウィルが同時に曲をセットして再生ボタンを押したと同時に「I've been waiting」が流れ出すスタート、映画魔女宅のOPみたいで大好き!木原マイクは本当に刈りたての芝生みたいな香りを感じる爽やか青年で、確かに学年で1,2を争う人気者なんだろうな!と思わせる登場だった。最高。木原マイクは広く浅くみんなに優しそうで、クラスにいたら軽口を叩かれたりしつつすごくたくさんの人が「私はマイクと仲良し」と思ってそうだな~なんて想像しました。舞台上のセットがシンプルだからこそ、マイクの部屋は明らかに広そうで音質のよさそうなプレイヤーを使っているし電話は子機付きなのに対して、ウィルは狭い部屋でアナログな電話とアナログなカセットプレイヤーを使っている対比が分かりやすかった。1993年ってもうCD全盛期のはずなのになぜカセットテープなんだろう?と不思議だったけど、CDをCDに手軽にコピーできるようになったのはWindows95以降じゃないかと聞いてなるほどなあと思ったり。確かにこの時点でマイクはCDを持っているから、自分が買ったCDアルバムをカセットテープにコピーしてマイクに渡したんだなー。細かい。
曲の中盤で2人の声が重なった瞬間、声の相性の良さに脱帽ー!! 瑠生くんのペアを井澤くんにしてくださった方、本当にありがとうございます。初めての電話のぎこちない雰囲気がとてもリアルで、無事にドライブインに誘えて嬉しそうなマイクと飛び上がって喜ぶウィルの姿がほほえましかった。
マイクに「いつもそんなによく喋るの?」と聞かれるくらいぺらぺらと話し出したウィルは、確かに学校に馴染めていなそう感も感じたけど、彼の中に独特な世界があって、とても魅力的な人物だなーと思った。木原マイク以外のマイクを見るまで気づかなかったけど、木原マイクはめちゃくちゃちゃんと映画を見ていて、ウィルと(この時点では「友達」と?)自分の好きなものを共有出来ることが嬉しいんだろうなと思った。他のマイクは映画よりももっとウィルの方を見ていて、ちょっと下心がある状態でドライブインに誘ったのかなと感じてその違いも面白かった。木原マイクって本当に映画を見ながら「細くて長い腕が好き」と言っているようだったけど、隣を見たら細くて長い腕をしたウィルって人がいるんですけど……という気持ちだった。初めて観劇したとき「お前、俺のガールフレンドに似てる」ってなんてデリカシーのないことを言うんだ~と思っていたけど、その後パンフレットを読んで「木原マイクの彼女実在しない説」として見てみると、「お前、俺(が脳内で作り上げた理想)のガールフレンドに似て(て好意的な印象を受け)る」みたいな含蓄があるのか?と思った。マイク的にはすごく褒めていたのかも……。このあたりの2人の会話は、本当に伝えたい内容を正確に口に出せているわけではなくて、沈黙を避けたい気持ちや緊張もあって思考をうまくコーティングしきれずに出てきている会話のように聞こえるのがとても良かった。リアルだなーと。彼女の意見ということにしていたけど、みんなと同じことをしたり誰が誰のガールフレンドか気にしたりするのは馬鹿らしいって、他でもないマイク自身が思っていたのだろうなあ。
ドライブインから帰って、ウィルから始まる「Reaching Out」も、「I've been waiting」と同じでたまたま2人とも同じ曲を聴いているのだなと分かるのがいい。違うところにいて、リアルタイムで共有しているわけではないけどお互いのことを考えながら「Reaching Out」を聞いて、歌っている。もうこれだけで運命って呼んでいいじゃん。どのペアを見てもReaching Outのハモリ良かったなーと思っていたから、曲としてすごく好きなのかもしれないです。あと僕は死ぬだけ~のところの振りが好き。
次の日にまたまたドライブインに誘われたマイクの「やったー!」が何回みてもかわいい。2回目のドライブインでは、マイクの友達たちの影が見えることで、普段マイクはウィルとは全く違うタイプの人たちと関わっているんだということがはっきりと分かって、「少しだけかがんでもらってもいい?」と言われて少しだけどころか全力で身をかがめる井澤ウィルがいじらしい。。このシーンは、学校内カーストが低いウィルと一緒にいるところを見られるのは気まずいという気持ちから出てきた言葉かと思っていたけど、男2人でドライブインにいるのはおかしい(彼女といちゃつくための場所だから。男複数名でいるならまあともかく。)という価値観も相まってということなのかと数回目で気づいた。何となく、2024年の日本であれば、そもそも男2人でドライブインにいたとしてもすぐに恋愛に結び付けて考える人って少ない気がするので、異性恋愛至上主義を強く感じるシーンだった。
井澤木原の「Winona」がとにかく好きすぎて、この曲の表現が特に美しくて深かったペアだったと思っている。俺はいつも1人だ、あえてそうしている、誰かといるのは好きじゃないと言っていたマイクが、この曲では「このままひとりは嫌だ」「ひとりぼっち……」と歌って、紗幕で隔てられた後ろ姿が本当にぽつんと孤独に見えて、マイクは反抗期なだけの恵まれた子供のように見える瞬間もあったけど、彼が抱えている切実な感情を目の当たりにした気持ちになった。柔らかいところに触れたら壊れてしまいそうな危うさと、彼の本心にはたどり着かせてもらえないのではないかという底知れなさが、小山さんが開幕前に行っていた「狂気的」という言葉と重なってどきりとした。でも、ウィルの持つカメラに映ったマイクは何よりも輝いていてかっこよく見えて、このシーンで、マイクはウィルに出会えて本当に良かったなと思った。
シーンが変わってウィルが「今年の夏はすごく暑い」というたびに心の中で大きくうなずいていた。ネブラスカ州はアメリカの内陸の州だから、きっと海って身近じゃないんじゃなかろうかと内陸県住みの私は思っていて、マイクと一緒に海に行きたいってウィルが思っているのってすっごく2人の距離が縮まった表れのように感じた。「夏の夜、ドライブイン、スポーツカー! まあ、スバルなんだけど」のセリフで、スバル車に乗っている私はマイクとおそろいってこと!?といつも嬉しくなってました。閑話休題。
ウィルがこんなに楽しみにしているセーフウェイってどんなところなんだろうと調べたら本当に普通のスーパーマーケットでびっくりした。でも確かに、相当親しくないとこういうところって逆に行かないかも……。恋人と犬を飼って一緒にドッグフードを買いに行く、みたいな憧れがウィルの中にずっとあったのかな、その気持ちわかるかも。などと思いました。誰でも持っているようなありふれた憧れだけど、ウィルにとってはとてつもなく非現実的な憧れだったのかも。
井澤木原の「Looking At the Sun」って本当に明るくて楽しくて、回を重ねるごとにノリノリになっていくウィルがかわいくて、「マジで俺と逃げたしたいの?ツクツクバンパーン!!」のボイパ?もどんどん過剰になっていって大大大好きでした。30日のアフタートークでこれやってるの木原マイクだけだと聞いて衝撃。この後観劇したら確かに萩谷マイクは指パッチンだった。「歌っているところ、好きだよ」「からかってる」のときに軽くトンとウィルの肩をマイクが押す仕草が、心を許しているがゆえのような気がして好き。
マイクはウィルの家のこととか将来のこととか、どういう風に捉えていたんだろう。ドライブインでの台詞でも、自分が何をやりたいのか分かっている人のように見えていたのかなあ。「壮大な計画」なんてウィルにあるわけなくて、ヨーロッパなんか行けるはずなくて……。でも私はマイクと同じように当たり前に大学進学をする環境にいたから、マイクの気持ちも少し分かるような気がする。ウィルが大学に行かないのは、大学行かないぞー!と自分で決めたわけじゃなくて、何も選択肢がなかったから、選べるものがなかったから消極的な理由で「そうなってしまった」のだけど、マイクからしたらきっと「大学に行かないという選択肢がこいつにはあるんだ」と映るだろうなと思った。だから、大学に行くなんてみんなが当たり前に選ぶつまらない選択肢よりも壮大な計画でもあるのかな?と思ってしまう気持ちも、なんとなく分かる。でもウィルからしたら、自分は周りのみんなと違うということをより一層突きつけられた会話だっただろう。くるしい。
苦しい空気を拭い去るように「さっきの曲歌ってよ」というウィルに、「嫌だ」ってマイクは言うけど、その瞬間からバンドの皆さんが楽器をスタンバイして音を鳴らし始めるのが、みんなで(いや歌えよー!)と言っているようで無性に好きだった。しかも歌いだすとマイクとウィルって息ぴったりだし超楽しそうで、難しいこと考えずにずっとこうやって2人でいられたらいいのになと思って見ていた。途中のカート遊びも楽しかった。ウィルがスローモーションみたいにはけていくのを「おい早くしろ!」って大きな口を開けて笑ってるマイク、いい顔~!! たしか30昼の日に、ウィルがセーフウェイの商品をいっぱいカートにいれていて、マイクが「万引きやめろ!(笑)」みたいなことをマイクオフで言っているのも、等身大の男子高校生な感じで良かった。このシーンは遊びがたくさんあって本当に楽しかった。真ん中の坂道で、2人で静かに「マジで俺と逃げたしたいの?」と近づいていくところは、楽しい中にも秘密の2人だけの世界みたいなものがあって眩しかったなあ……。ダンスも、もっとソウルきかせてみて!も、2人で過ごすときが本当に幸せなんだろうと思わせてくれる時間でした。Looking At the Sun大好きー!
だからこそ、マイクがようやく「手を繋ぐ」という行動に移そうとした矢先の、「失せろホモ!」はガツンと頭を殴られたような痛みがあった。そんなこと言うなよ……いまいいところだったんだよ……!!2024年現在が同性愛に寛容な社会とは思えないけど、このころよりは少しは進んでいるのかなあ。
ここでガールフレンドの話を出してしまうのが、マイクの青さだなあと思いつつ、「俺は同性愛者とかそういうのじゃないんだけど」と暗に言われているように感じて、ウィルは辛かったのではないかなと思った。しかももうすぐリンカーンに行くとか言い出すし。ウィルかわいそうー!でも、マイクもいっぱいいっぱいで、どうしようもない気持ちだったのだろう。時計の針をぐるぐると反対回しする演出が何を表していたのか、ハッキリした答えが見つからなかったのだけど、せっかく近づいた距離がまた巻き戻ってしまったような感覚になった。
「やあベイビーマイクだよー!!!」←好き
「満足ですかーーィ」←大好き
マイクの鬱屈とした感情とやり場のない怒りが爆発しているシーンだけど、この言い方がかわいくて大大大好き!むしゃくしゃした気持ちのままウィルを夜のドライブに誘って、当然OKされると思っていたのに微妙な返事をされたときの「ええー……!?」もかわいくて大好き……。ウィルからの「ベイビー」で、初めてマイクとウィルの立場が逆転したような、ウィルがマイクを全部受け止めてあげているようなあたたかさがあって、車に乗り込んだ後もいつも以上にウィルが場を盛り上げてくれる、なんかもう、ウィルは最高……(TT)!
表題曲の「GIRLFRIEND」を2人で歌いながら、マイクの顔がどんどん明るくなっていって、これまで負の感情でいっぱいだったはずなのに、逆にそれも相まってなのか爆発するように叫ぶように歌うマイクと、ウィルの姿にいつも泣いていたな。「君を見るまで誰も知らなかった 君に合うまで僕は孤独だった」の歌詞があまりにもこの時の2人にぴったりで、完璧で、パーフェクトだった。2人で顔を合わせながら歌って、ドラムソロ!と全身で感情を出力して、抑圧や日々のままならなさから解放される瞬間が、ウィルとマイク2人でいればあるんだなあと思うといとおしい。この時間がずっと続いてほしいと願わずにはいられない。。この大爆発から一転して、2人きりの静かな星空のシーンへの移り変わりも美しくて見事だった。マイクがいつも1人できていた場所にウィルを連れてきて、Daddy's little princessのくだりはマイクちょっとノンデリすぎ……と思ったりもしたけど、お互いの感情を遠回しに遠回しに確認していくような会話が好きだったなあ。「明日の俺の試合、来る?」「そっか、良かった」(TT)(TT)(TT)
「We're the same」を弾き語る木原マイクの歌声が溶けそうなほどに甘くて、ウィルのことが大好きなんだな~~~ということが何よりも雄弁に伝わってきて、すごく良かった。「ネブラスカに僕みたいなやつ1人しかいない」といっていたウィルと、「俺はいつも1人」と言っていたマイクが、「僕らは同じ」と歌うことのなんと尊いことか、と、涙せずにはいられなかった。ウィルが途中で「baby」と入ってくるところで、マイクがすっごく嬉しそうに顔を輝かせていて、ずっと1人で歌っていた曲に、最高のタイミングで入ってきてくれるパートナーがいることが本当に本当に嬉しかったんだろうなあと思いました。ウィルって最高だって何回も実感したんだろう。最高だよ。マイクのまだたどたどしいギターが、ずっと練習してようやく弾けるようになってきた初心者の手つきで、これもまた愛おしい。
「お前、なんで目閉じてるの?」からのキスまでの流れは、いつも固唾をのんで見守ってしまっていた。近くで目が合ってパッと離れて、でもまたゆっくりと近づいて。この時間がずっと続いてほしい。。(2回目)そして「僕と同じさ」のところでバンドの音が加わってきたときの臨場感ったらない!最高ー!ここに限らず、生バンドの良さをずっと感じていた舞台だった。最高ー!
このあとの暗転で、そういえばこの舞台ほとんど暗転がなかったなと急に気づいた。2人芝居って、きっと見た目以上に体力的にも負担がかかっているのだろうけど、それを全然感じさせないパワフルさですごいな。
「いいぞ、野球ーー!」←超かわいい
そろそろウィルのかわいさが隠し切れなくなってきているよ……と思ってました、かわいいです。2024年の東京だったらウィルはクラスの人気者だったんじゃないかとすら思う井澤ウィルの根の明るさとかわいらしさ。初キスのあとで完全に舞い上がってる2人がかわいくて、ドライブインではかがむように言っていたマイクが、みんながいる打ち上げにウィルを連れて行こうかな?と思っている、この関係性の変化がすごく良かった。
そしてマイクの「世界一好きな場所」って、そこなんだ……(笑) ウィルとの思い出の地だから?エヴァンジェリンが好きだから? 思い切って「これはひどい映画だ!」といったウィルに「…………お前、この映画好きなんだと思ってた」と返すマイクがすごく落ち込んでいて笑ってしまった。めっちゃ溜めるじゃん。ぶんぶん首を振るウィルもかわいい。でも、ええ~という顔しながら、ウィルから出てくるエヴァンジェリンへの批判をマイクは少し嬉しそうに聞いているように見えた。こうやってわいわい言い合える誰かが、ずっと欲しかったのかなあ。エヴァンジェリンのアレンジ、一番原曲とちがっていてエキゾチックな雰囲気で大好き。ウィルが歌いだしたあとに、あ俺がエヴァンジェリン役だな?と気づいてエア髪をばさばささせてエアアクセサリーを装着しているマイク(笑) 「君は奪うの~」のダンディーな歌い方と、「毎晩君に~」からの朗々とした歌い方のギャップも好きだった。エヴァンジェリンは曲調や振り付けが艶めかしいのに、井澤ウィルと木原マイクはなぜかずっと爽やかな気配がしていて不思議だったな。(全力でアクションして飛び跳ねているからかも?)
そんな爽やかなウィルとマイクの「Your sweet voice」なんて劇薬に決まっている。マイクの部屋に入ってすぐ、マイクが香水をつけているのが好意のある相手に対する精一杯の準備という感じで好き。気まずいくらいの沈黙、もうすぐマイクが去ってしまうという非現実感、だけど「音楽のことを強く思ってみよう」というマイクは相変わらずの独自世界観で、うわあマイクってウィルのこういう発言好きなんだろうなあとか思った。
このシーンは、こんなに役者さんの動き上は何もしていないのに、上着を脱がせるという行為と「聞かせてよsweet voice」という歌詞で、この一夜を表現できるのか……!ととてもとても感動した。ノーブルに見えるけど甘い夜、すごすぎる演出だった。瑠生くんと井澤くんの声は静かで囁くようなシーンによく映えると思った。語るような、変化球なく真っすぐなのに饒舌な歌い方、大好きでした。この夜、きっと2人とも、もちろんウィルにとってもすごく幸福な夜で、だからこそウィルは朝起きた時に一気に不安と絶望が襲ってきたのかなと思った。何もない部屋を見て、トワイライトゾーンとか色んなことが頭の中をぐるぐるして、まとまっていない思考をぽつぽつと零す感じが痛々しくて辛かった。ウィルにとって将来って何も見えていなくて、辛い現在から脱出することに必死で、「高校生活が終わった!」ということがまず大事なことだった。でも自分がそうしている間に周囲の人たちは大学を決めていたり就職先を決めていたり、先のことまで考えて行動をしていた。マイクと過ごす中でそのことに気づいて、「大学に行くのは遅すぎると思う?というのは僕のことなんだけど」と必死の思いで聞いたウィルに、マイクはあっさりうんと言ってしまう。マイクからしたらそんなの当たり前のことだから、そりゃそうだろってテンションだったんだろうなあ~……。「お前に大学に生けないって言ったつもりはない」「そんなに難しいことじゃない」ってマイクの言葉はずっと滑ってしまっていたなあ、だってウィルにとっては大学に行くってすごく難しいことで、ネブラスカの州都であるリンカーンの大学にいくマイクのことが突然すごく遠い人みたいに見えたかもしれない。どうせ違う人生なんだって思ったかもしれない。2人の間に横たわる格差が苦しい。「試合に来ないの?」のマイクの不安そうな声、「いけない」と答えたウィルの苦しそうな声。ほんとうにこのあたりの、マイクとウィルの問題の深度が噛み合わない感じが天才的でした。
ウィルは結局試合に来てくれたけど、マイク宛のラブレターがほかの人たちに見られてしまう。ここでようやく言葉で「愛してる」と伝え合うのがつらいなあ……。マイクからキスをして、「振り返って奴らを見たりなんかしない」って言ってるけど、もしかしたらウィルにはメントリ―たちの反応が見えていたんじゃないのかな、とか思ってしまって、マイクはこの町を去るけどウィルは残るわけで、これからずっと同性愛者だという烙印を押されたままここで生きるかもしれなくて。マイクの気持ちは本物だって分かるけど、残ってくれないし、連れて行ってもくれないし、ウィルが「もう、無理」となる気持ちも痛いくらいに分かった。「You don't love me 」が本当につらくて、千秋楽後ガルフレプレイリストを何周もしている中でこの曲は3回に1回くらいしか聞けていない、辛くなってしまって。。それにしても「You don't love me 」に「Sick of myself」をかぶせてくるアレンジって天才すぎる。「Sick of myself」の「どうして報われない 俺は」「いつも惨めな気持ちだ」という歌詞を歌うマイク、これが、触れたらいけないように見えた木原マイクの内面そのものだったのかなあ。そしてこんな辛いのに「僕を捨てて」のハモリが絶品なのも困ってしまう。叫ぶような歌い方なのに耳に優しい声(心は辛いけど……)なの本当に素敵だった。You don't love meなわけないのに、2人ともまだ好きなのに……(TT)
この美しく儚い夏が終わって、いつの間にか雪がちらつく冬がきて。木原マイクは、黙々と机に向かって勉強をしていて、全く取り乱して見えないところが他のマイクと大きく違っていたなあと思う。全体を通して木原マイクがいちばん好意が分かりづらい気がして、ウィルは不安になることがあるだろうなと思った。仲良くなったと思ったら不意に何を考えているのか分からなくなるような読めなさが、木原マイクには常にあった。「歩き出そう 振り返らず 君は来ない もう二度と」の歌詞も、本当にもうあきらめているように見えて、それが自分の人生への諦めのようにも取れた。(あとこれはどうでもいいですが、正規ペアは「nothing lasts」の最後のstsがきれいに揃っていて気持ちよかった。シャッフルの時はsttとなりがちなように感じました)
だから次のシーン、ウィルがまさかのリンカーンに来ていて、ただの観客である私が飛び跳ねるほど嬉しかった。あんなに悩んでもう無理だと諦めたけど、びっくりするくらい衝動的にリンカーンに来れてしまう、これが若さだなあ!!と妙に納得。でも、「Kマートで聞いた曲を、リンカーンでバンドが生演奏すると聞いてバスに飛び乗った」ウィルがこの過程を踏む間にどれほどマイクの影響があったのかと思わずにはいられない。就職先を見つけたこと、流れていた音楽に耳を傾けたこと、「リンカーン」に行きたいと思ったこと、きっとその瞬間瞬間にウィルの中にはマイクがいて、マイクへの気持ちがウィルの背中を押したんだろうと思った。そしてライブ会場でウィルとマイクは再び出会う。目が合って近づいて、いつかのドライブインでマイクが1フレーズだけ口ずさんだ曲を、一緒に全身で歌う。これだけできっといいんだ。同じ歌が好きで同じ歌が歌えて、そうして君が好きだと思う。これだけで、運命って呼んでいい。「I wanted tell you」というタイトルが、再会した2人にぴったりで最高だ~!ちなみにこのシーン、「この曲さいこー!」とぴょんぴょんするマイクがめちゃくちゃかわいくて好き。あのシルエット、大好き。
マイクがそっと差し出した手をウィルが握って、まっすぐに前を見つめるラストが大好きです。これからの2人にはまだまだ困難があるだろうし、一筋縄ではいかない人生かもしれない。ずっと2人でいられるかも分からない。でもこの瞬間だけは永遠を信じてみたい、2人の未来を願いたいと思わせられる力強いラストでした。どうかウィルとマイクが幸せでありますように。
本当はシャッフルや別ペアの感想もまとめて書きたかったけど、井澤木原だけで1万文字を超えており(大反省)、いったんPart1としてここまでに。
ウィルとマイクの2人に心を傾けた、本当に素敵な公演期間でした。演出脚本音楽ダンスそして役者さん、どれも素晴らしくて、こんなに夢中になれる舞台に出会えたことが幸せです。2024年のウィルとマイクが幸せでいられるように、無関心でいてはいけないなと強く思わされた期間でもありました。レインボープライド月間である6月にこの公演が上演されていたこと、レインボーに輝く「GIRLFRIEND」の文字、きっと意味があったのだろうと思っています。素晴らしい舞台をありがとうございました。
締めのあいさつのようですが感想Part2に続きます。記憶があるうちに書き上げたいです!!!