普通を増やすための読書
自分の思い描く普通と違った経験をすると、咄嗟に嫌と拒絶してしまう。
以前、部屋でカレーライスを食べていた際、あとから入ってきた友人に臭いと言われた。カレーの匂いが部屋に充満していたらしい。でも、カレーの匂いは普通に嗅いだら臭いものではないし、お腹が減っている時に嗅いだら食欲が増進されること間違いなしである。しかし、一言目に発したのは「くさっ!」であった。
私自身も同じような経験をしたことがある。家の近くにお菓子の製造工場がある。そのため、近くを歩くとお菓子の甘い匂いが漂うことがある。突然甘い匂いがしてくると「くさっ!」と思ってしまう。冷静になると甘くていい香りなのに、何も臭いが気にならなかったところに、強い臭いが来ると拒絶してしまう。
冷静に考えれば全然変なことではないのに、想像していない強いものが感性を揺さぶると気持ち悪くなってしまう。これは臭いだけに限ったことではないと思う。
今日は静かに飲みたいなと思っていたところで、急にゲームが始まると気持ちが悪くなってしまう。冷静になればゲームはそんなに珍しいことではなく、その場を盛り上げるためのものであるとわかる。でも自分の思い描く飲み会ではないと、嫌な気がしてすぐに陰で物を言う。
今日は誰とも遊ぶ用事がないと思って午前中を過ごしている中、突然友人から今日暇かどうかの連絡が来る。暇ではあるが、思い描いた日を送れなくなるのを恐れて断ってしまう。ゆっくり考えれば、行ってもいいのである。
手を抜いても大丈夫であろうと自分が考えているときに、熱心に取り組んでいる人を見ると「なんだかちがくないか?」と感じてしまう。それは手を抜くのを「普通」と考えている中で熱心は「普通でないもの」として拒絶しているのである。
自分の中の普通を増やせれば、誰に対しても険悪な部分を見せる必要がなくなるのではないか。そのためには自分以外の人がどのような価値観の中で生きているのかをたくさん知ることが必要である。
今年の夏は外に遊びに行くことを控える必要がある。家にいながらたくさんの価値観を知れるのは「読書」だと思う。本を読んで、追体験をしよう。
エッセイ中心の夏になりそうだ。