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【余談】設計士よりも信頼の”インスタ先生”


家づくりの打合せに入ると、ほぼ全員と言っていいほどインスタの情報を集めて来てくれます。
「この照明器具にしてください。」「こんな感じの色がいいです。」
時には「インスタは50cmと書いてたのでそうしてください。」と細かい寸法まで指定され、打ち合わせ中に悩んだ時は「待って下さい、インスタ先生に相談します!」と言って検索を始めます。
インテリアコーディネーターとして働き始めた15年前とは、最近の打ち合わせはまるで違うものとなりました。

インスタなどのSNSが普及し、たくさんの知識や写真などが充実したことにより、イメージがしやすくなってお客様にとってはとてもいいことだとは思います。
でも私はとても悲しくなります。目の前に営業(または設計士)とインテリアコーディネーターがいるのに、世の中の誰かもわからない人の声の方が聞きたくて、信頼できるのだと・・・。
それは信頼されないあなたたちがいけないのだ。と言われそうですが、転職でいろいろな会社を見てきましたがほぼ同じ状況でした。
そうなってしまったのは、大きく社会が変化したことと、建築業界にも責任があると思います。

高度経済成長とともに、大量消費大量生産の時代もあり、家をたくさん売ってこそ安くできる時代が今でも続いています。
提供する側もかなり試行錯誤して、努力されているのはわかりますし、時代として求められた当然のこととして肯定も否定もしませんが―。
高額な予算のお客様以外は、自由設計といいながら巧妙に計算された間取りプランと仕様しか対応してくれません。
(でもそれが良いかどうかは別として、耐震性能、省エネ性能、維持管理のことやその他諸々、外観のまとまりや内装のまとまりなど、本当によく考えられているものですが。)

でも決まりきったプランに飽き飽きしたお客様が変化を求め、アプリやソフトを駆使してご自身でプランをしてくるように、またインスタで情報を集めてくるようになったのだと思います。
本来プロであるべき建築業界の営業が(設計士でさえ)”プロ”とは見られなくなり。頼るべきはインスタ先生なのです。。
それは提供する側の努力も足りないといってもいいのだと思うので、建築業界の責任でもあると思います。

また、どの業界でも”プロ”との境界がなくなっていると思います。
昔はTVで見るものに特別感があったけど(いつの時代だ?笑)、家具や雑貨などのディスプレイも今は調べればどこの商品かわかりやすくなりましたし、身近なお店のモノだとすぐわかったり・・・
今は商品にあふれ選択肢も自由度も増えたように思いますが、「これ良いよ!」と拡散することにより受け手は同じものを選択するので、実は一辺倒になっているのではないでしょうか。
インスタ先生に聞いても(検索)、自分の好みのモノが勝手に集められて流れてくるので、情報が偏っているのではないでしょうか。
選択肢が増えたからこそ、何がいいのか判断が難しくて、結局みんなが同じこと、モノを選択しているのではないでしょうか。

建築会社としても、「インスタとか気になるイメージがあればその画像を持ってきてください」と、もうインスタ先生に頼った方が話が早いので、普通のやりとりになってます。笑

ただ、家づくりは情報の寄せ集めではありません。何十年も暮らしていく住まいです。
家族の成長とともに生活スタイルが変わり、自分も年齢を重ねます。
その時に本当に暮らしやすくなっていますか?
どうか目先のことだけに捉われず、決めきらず、これからの変化に対応できる自由度も残した住まいにしてほしいと思います。
そのための打ち合わせです。自分たち家族がどんな暮らしをして、どんなふうに時を過ごしていきたいのか、話し合ってみませんか?

("建築業界"と書いていますが、主に一般住宅を提供している建築会社とその関連業界のことです。
そして私の話は地方の現状です。地域によってもまた全然違うこともあると思いますし、あくまで私見であることをご了承ください。)


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