東北ひとまわり④
最終三日目 秋田から始まり
とても気持ちのいい朝だった。青空で冷たく心地よい空気。
昨日も思ったが、街がとても整備され道も広く、緑も多く…何と言うか居心地がいい。
私が泊まった宿は繁華街の中にあり、駅から少し離れているのは川沿いということと、竿燈祭りの会場となる通りの近くだった。
今日は秋田県立美術館に行こうと決めていた。藤田嗣治の壁絵を見たい。
荷物をホテルのフロントで自宅に送った後、散歩がてら県立美術館前の公園へ行った。コンビニでコーヒーを買って、ベンチなどで開館時間まで気持ちいい空気の中ゆっくりしてもいいと思っていた。
ところが、公園とは久保田城址公園だった。丘である。私の下調べ不足だが、高台に上がることに苦はないので、逆にワクワクして時間と見合わせ、どこまで上がるかとルートを考えた。
広い階段を上って行くと、街並みが一望できる。なんと清々しい。途中にベンチがあったので、ここで景色を楽しんだ。
この付近に松ぼっくりが落ちていて、2センチ程の小さいものを選んでいくつか拾った。家の観葉植物に置こうと思い、探していたのだ。
松ぼっくりは水を含むと笠を閉じるため、毎日給水しない観葉植物には水時の目安になるらしい。
開館時間が近付いたので、県立美術館まで下りていった。
藤田嗣治の常設展を見た。イメージにある藤田の中でも活気を楽しんで、それを作品に作り上げた情熱が伝わってきて圧倒された。
藤田の戦時絵画を見た衝撃とも似ていた。
藤田は秋田に強力な後援者がいて、藤田美術館を作るために奔走していたらしい。この竿燈祭りの壁絵をメインにし、作品を集めて展示するはずだった。設計図の青刷りもあり着工を待つばかりだったが、後援者の事情で実現しなかった。ということをここで知った。
藤田と後援者の心情を思うと苦しくなり、その時に実現していれば、一堂に作品が並んでいたと想像すると惜しい思いがした。
短い秋田の滞在だったが、非常に印象が良くまた来たい。なんなら移住を考えたいとも思ってしまった。お酒も美味しいし!
平泉 中尊寺金色堂へ
お昼頃の秋田新幹線をえきねっとで予約していたので、駅弁を手に乗り込んだ
途中の盛岡駅で東北新幹線やまびこと連結する。思ったよりも音があり、ガコンという感じだった。興味深い一瞬を見れた!
一ノ関まで新幹線で行き、在来線で平泉に戻る形になる。電車は程良く乗換えができた。しかしバスがよくわからない…。歩いても20分なので、ないなら歩けばいいや!と思っていた。
ちょうど循環バスがあり、乗り込んだ。時間が3時頃だったので、気持ちが焦ってきた。多分入館するものは4時で閉まっていく。
5分ほどで着いたので、さっそく向かう。なんと…とにかく登りだ。鬱蒼とした大きな杉並木の間を登っていく。極めつけの急登には、端に木箱があり滑り止めのしめ縄が置いてあった。雪の日はこれをアイゼン替わりに靴に縛り登り下りするのだろう。
一気に上がったので、景色が素晴らしかった。しかし、私は目的の金色堂を見なければ他は楽しめない。
それからも緩やかに登りは続いていき、やっと辿り着いた。
川瀬巴水の作品が思い浮かんだ。なんとあの道を雪の中何日も通い詰めたのだ…。私としてはこの同じ角度の同じ景色を見れただけで感無量だったが、せっかくなので、絢爛豪華な内部も拝観した。金色堂の御朱印があるとのことで、ありがたく頂いた。
帰りながら、点在するお寺·お土産屋などを横目で見ていき、中尊寺をお参りをして御朱印ももらった。
思いつきで無理やり組んだスケジュールですべては周れてないが、とにかく目的を果たした満足感があった。
帰りのバスがまた良く分からなかったが最終の周遊バスに乗り、景色だけでも観光した。中尊寺入口には、どうもいくつかの路線とそれぞれのバス停があるようだった。
家路へ
えきねっとでやまびこを予約し、最後の指定券を使い果たした。新幹線と特急と在来線を乗り継いだ3日間だった。えきねっとでその場で決めて指定できるのは便利だった。もちろん空いていれば、だけれど。
平泉の駅から一ノ関まで行った。ここで1時間ほど待つことになった。
よし、駅前か駅かでご飯がてら軽く1杯だな!と思っていたが、予想した以上になにもなかった…。マップで検索したが、迷っている時間が惜しい。狙いうちしていった小さな焼き鳥屋は休みだった。
定食屋も見つけられない。駅の方に戻り、スナックのようなお店に入った。
カウンターがあり、とりあえず「地酒はありますか?」と尋ねると、「味見しないと飲めないよね!」とズラッと並べてくれて「ちょっとずつ飲んでみて!」と。いやいや、この量はこれだけでもう十分だ。と思い、「この飲み比べだけで十分です。値段をつけてください。」とお願いした。
主食とつまみとを頼んだつもりが、食べ切れるの?と聞かれたので、半分にしてもらった。両方主食だったのだ。メニューが読み取れず、聞いたことないものを頼む悪い癖が良くなかった。結局食べ切れず、持ち帰りにしてもらった。
新幹線の時間が迫ったので、急いで店を出た。
家からずいぶん遠くにいるのに、旅は終わった。新幹線に乗れば目が醒めた頃に見慣れたいつもの風景に戻る。そしていつもの日常が始まるのだ。
電車に乗り、お酒を飲んで、美術館も行った楽しい3日間だった。