「一度は結婚しないと」なんて、もうよくない? - 結婚しない生き方
「この年まで、いったい何してたの」職場で年上のシングルマザーから、こんなことを言われた。アラフォー・子なし・シングルの私。周囲は子持ちの主婦ばかり。家事も育児もやっていない、お気楽な身分と思われたのだろう。
「仕事と家事と介護ですが、それが何か?」至って冷静に答えたら、相手は黙りこんでしまった。世の中には、結婚したことがあるとか、子持ちであるとかいう事実を盾にマウントをとり、お説教したがる人がいるものだ。「早く結婚しないと子どもが産めなくなるよ」とか「将来、ひとりぼっちでどうするの?」とか。
私には長く闘病中の母親がいたから、婚期を逃したと周囲に思われていると気がついたのは、最近のこと。母を亡くしてから、やたら「結婚しないの?」と言われるようになった。若くして苦労してきた(ように見える)から、幸せになってほしいという。でも私の願望に、結婚したい!があったなら、若い頃から必死で婚活していただろう。
思い返せば、田舎の親戚の家の大広間に一同が勢揃いした時のこと。その年は年長のいとこたちが、次々に結婚、出産ラッシュを迎えた。それまで「早く結婚しろ」とせっつかれていた彼らは、ようやく「これでもう何も言われなくなる!」と喜んでいた。ところが、今度は「赤ちゃんはまだか」と催促され、やっと授かった後は「子どもがひとりではかわいそう」などと、さらに追い込まれるのだった。
おめでたいはずなのに、さらに多くを求められる。当時の私は恐れおののき、周りからの期待には終わりがないことを知った。そして大勢の親戚に囲まれた広間の片隅で、密かに心に誓った。将来、周囲の無責任な言葉に振り回されないようにしよう、と。
他人様の結婚や出産を否定する気は毛頭ない。とても素晴らしいことだと思っている。今までたくさんの方をお祝いしてきて、その都度幸せのおすそわけをもらってきた。友達や年の近いいとこ達は次々結婚して、未婚なのは私だけ。それでも、あちこちから寄せられたお見合いの話はすべて丁重にお断りし、現在に至っている。
かつて「結婚を前提に」とアプローチする男性が現れて、いずれこの人と結婚するのかな?と思ったこともあったけど、彼は結婚がしたいだけで、別に私じゃなくてもよかったらしい。私が仕事や趣味で忙しくしている間に、あっさり他の女性と結婚していった。それを人を介して聞かされた後も、「へー、あの人、結婚したがってたものねぇ」と思っただけだった。
別に結婚しないと頑なに決めている訳じゃない。ただ「結婚していないと不幸せだ」という世間の煽りを受けたくないだけ。結婚しててもしてなくても、子どもがいてもいなくても、幸せの形は人それぞれあっていい。
恵まれた環境で、9時〜17時勤務の派遣社員としてゆとりを持って働く。そして自分の好きな読書や創作に時間とお金を使いたい。私はそんなワガママな人間だ。窮屈な生き方はしたくないし、誰かに振り回されたくない。自分ひとりの時間がないと、とても生きていけない。それが実現している今の毎日は、周囲の心配をよそに幸せだと言えるだろう。
最近ひとつ、技を覚えた。「結婚しないの?」と問われたときに、「しつこい」と返すと言葉が強いし、角がたつ。「もうよくない?」と、返答することにした。周囲は、煙に巻かれた気持ちになるのかも知れないし、何を言っても無駄だと悟ったのかも知れない。はたまた自分の家庭の方が忙しくなって、私への関心が以前より薄れたのかも。それ以上、言われることはなくなった。
かつては、ささくれた気持ちで言い返していた言葉も余裕をもって返せるようになっている。時が解決してくれることもある。案外、年をとるのも悪くない。
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第2回「わたしのノンマリライフ」エッセイ募集コンテストにご応募いただいた方々の中から、fullhouseさんのエッセイをご紹介しました。
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