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記憶の片隅で

私達は毎日色々な情報を取り入れ、流して行く。例えば上の模様。何だかお分かりだろうか…?神聖幾何学にも見えるこれは、ドリフの8時だよ全員集合の背景である。美しいねえ。

時々ふと昔の出来事が蘇る時がある。小学生の私は松濤館流空手を習っていた。中学校内に有ったとても古い木造の剣道場で夜に週3回。私達は床を拭くことから始め、瞑想、練習をした。木の窓枠にはまったガラスは風が吹くとカタコト揺れ墨の様に暗い夜が外に広がっていた。練習生は小・中学生から高校生や大人もおり、皆家族の様に仲が良かった。夏は合宿で空手着で波打ち際を走ったりとても楽しい思い出ばかりである。

ある夜。道に面した台所で母が洗い物をしていると外側から窓をガラッと開けられた。私の空手仲間のSさん(18歳)は急な失礼を母に詫びながら私を呼んだ。空手の帰り道、かっこいいリーゼントの優しい高校生のお兄さんだった彼は良く原付の後ろに私を乗せて道場から家まで送ってくれた。静かな暗い夜を走るバイク。背中に羽根が生えた様な感じがした。ロックンロール。自由な夜。3年から6年まで、とても良い時間を過ごした。

ヤンキーだった彼は卒業後に半社会集団の見習いになり、空手の練習にも来なくなった。格好も態度もどんどん変わる彼を町で見かける度に私は心配していた。話を戻そう。その夜。血まみれのヨレヨレボロボロな格好で、でもとてもいい笑顔で、彼はこう言った。「のんちゃん!俺やくざになるの辞めたから!」その瞬間に空気がキラキラし祝福されたのを感じた。まるで映画の1シーンの様な事が本当に有ったのだ。その後彼は立派に成人し、その数年後に最後に会った時彼は自分の車を運転し、「俺も大人になったっぺ。」と言って昔と同じ笑顔で笑った。





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