見出し画像

小説 おかず甲子園 2年目6月

4月第1月曜日 世界の風来坊錦店にて

「杉下さん、おめでとうございます!これで何があっても、来年から校長ですね。あと1年GM兼教頭職をがんばってください」
「高浪さんも、あと1年はSA職は続けてくださいね」

「はい。ところでキャビアは期待に応えそうですね」
「そう思います」
「夏の県大会はキャビア主戦投手でいかがでしょうか?」
「それは私も考えていました」

「ところでビーフカレーの事故はご愁傷さまでした」
「ですね、これが痛い」
「ただ故障個所が肘なので、打撃や守備自体には軽微ですよね。投げることは絶望的に近いけど」
「ファーストで考えていたので、回復具合で使えるかもしれないけど」
「ですね、まだ9月までは時間あります」
「そのハンバーグの後釜ですが、てっちりでもいいんですよ」
「あ、なるほど。てっちりの強肩が宝の持ち腐れになるだけですか」
「そういうことです。てっちりがファーストに回ると、レフトでサイコロステーキを使う手もあります」

「あとはアボカドですか、キャッチャーは最高の選手が控えているんですが」
「まーくん!ですよね。うちの二刀流です」
「活かす方法が一つだけあるんだけどね」
「なんですか?」
キャビアにキャッチャーの特訓をさせるのです
「キャビアは打者としても、捕手としても非凡な才能を持っています。練習させて馴れさせればいいんです」
「なるほど。新1年生によっぽどのキャッチャーが出てこない限り、9月からはキャビアも捕手で、試合はまーくんとバッテリー入れ替えで使います」

高校球児の賞味期限は長くて2年2ヶ月、短いと1年ですね。こんな短い期間で結果を出すなんて、やっぱり凄いことですね」

「しばらくはこのオーダーでやってみます」

2年目4月のオーダー
1 キス天 三
2 アジ一夜干し 右
3 ハンバーグ 一
4 てっちり 左
5 辛子明太子 中
6 キャビア 投
7 アボカド 捕
8 イカ天 遊
9 味噌 二
- 麻婆豆腐(キャプテン) リリーフ投手

「いいと思います」

練習試合 粘里沢学院高校

4月第4日曜日 練習場にて

試合は14対2で倒壊の圧勝でした。
キャビアが7回まで投げて2失点。最後2回はまーくんが投げました。

再びの災い... 転じれそうですが、災難なのは...

5月第2火曜日 倒壊高校にて

あ、ごまだんご監督からLINEが、
「昨日、ショッキングなことを味噌から聞いてしまったので、今日は本職(ごまだんご監督はパート監督)をお休みしています」
「つきましては、お昼休みに伺いたいので、よろしくお願いします」

「ごまだんご監督どうされましたか?」
「昨日、味噌のパフォーマンスが著しく悪いので、本人に聞いたところ、記憶がやや飛んでいるけど、日曜日にこんな経験したって言うんです」

「ハーイ!ソコノ少年ボーイ」
「はい?」
「アナタ、野球ヤッテマスネ?」
「はい、やってますけど」
「オー!ワタシノ目ニ狂イハナカッタデス」
「申シ遅レマシタ。ワタシ、スポーツ医学ノ権威、ケール博士トイイマース」
「スポーツ医学の権威?」
「あ、あの... そんな方が俺に何の用ですか?」
「少年ボーイ、野球ガ上手クナリタクアリマセンカ?」
「は、はい!もちろん」
「デハ、チョットツイテ来ルデス」
  (何だ、この怪しい空間は?)
「ココハワタシノ研究所デース!」
「サア、少年ボーイ、願イヲぷりーず!」
「願い?そうだな...」
「能力がもっと上がりたいです」
「オー!ソレハ危険を伴ウ手術デース」
「危険?(じゃあ嫌だなぁ)」
ここからは完全に思い出せないです。

「うーん、これは故障者リストですなぁ。期待のプロパー2年生だったのにもったいない」
「ですね、どうします?」
「早急にキャビアをキャッチャーとして養成して、アボカドをセカンドにコンバートさせる。高浪SAにも特訓要請してみる」
「アボカドのキャッチャー問題は、今度はセカンド問題になっちゃいましたね」
「味噌くんも災難な男だw」

5月第2火曜日 世界の風来坊錦店にて

「これは災難でした。成功することもあるんですが、失敗することもあるので、リスクを伴うことを考えて、味噌くんのような一軍半か二軍の選手限定ですよね」
「ですね、高浪さん。以下のオーダーでやってみますから、キャビアの件ご協力お願いします」

2年目5月のオーダー
1 キス天 三
2 アジ一夜干し 右
3 ハンバーグ 一
4 てっちり 左
5 辛子明太子 中
6 キャビア 投/捕
7 麻婆豆腐(キャプテン) 捕/投
8 アボカド 二
9 イカ天 遊

「あ、あと2年生でふぐさしと言うピッチャーが倒壊高校に転校したいと言ってまして」

ふぐさし 2年生 投手
危ういポテンシャルを持つ魅惑の長身ピッチャー。待つのは生か死か、吉か凶か。

「メンタルヘルス面で問題抱えているんですけど、うちのてっちりのリトルシニア時代の無二の親友で最大のライバルなんですよ」
「本当に吉か凶ですね」
「結局、てっちりはふぐさしに負けて、打者に本格転向したんですけどね」
「本当に生か死ですね」
「アボカド問題も、ハンバーグ問題も、今年入校の特待生から素晴らしい子が出なかったら、ふぐさしをファーストなりセカンドなりにコンバートさせればいいんです」
「なるほど、獲得しましょう。だし巻き玉子を引退させます」

更に災難...

5月第4水曜日 世界の風来坊車道店

「西ちゃん、色々あるけど... GMめっちゃ面白いです」
「だけど、来年の4月からは、杉ちゃんが校長ですよ」
「GMは誰にやらせよう?」
「燃える男、社会科教師の星野でええんやない?」
「そうですね... って、監督から電話が」

「GM、めっちゃ大変です!今度はしいたけが!」
「しいたけがどうされましたか?」
「練習中にブツッって音が。アキレス腱断裂だって。今、コーチと病院行っています。まずは報告まで」

「西ちゃん、しいたけくんがどうしたの?」
「アキレス腱断裂だってさ」
「...ご愁傷様」

練習試合 肉やさい高校戦

6月第4日曜日 練習場にて

愛知県第一の強豪校との対戦でしたが、もう相手になりませんね。
19対2で倒壊の勝利、キャビアが5回を投げて2失点、ふぐさしが4回投げて無失点。

「あれ、高浪さん、練習試合なのに珍しい」
「いやー、トリプルエース素晴らしい!」
「ですね」
「ところがどっこい、もう一人2年生で一流の二刀流を紹介できるんですが...」
「えー!何でこんなに入校希望者が来るんですか?」
「甲子園で優勝しちゃうというのは、こういうことなんですよ」
「詳しい話は明日手羽先で。誰を引退させるか考えといてください」
「はい」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?