『あなたに似た人』収録「プールでひと泳ぎ」奇妙な味とその結末。



ロアルド・ダールの短編集、『あなたに似た人』には11個の短編が収められている。そのなかからオススメを挙げるなら「プールでひと泳ぎ」を選ぶ。

どう読んでいいか掴みかねるこの短編集に、どう向き合えばいいか理解する大きな助けになるからだ。

<奇妙な味>や<ブラックユーモア>なんていわれても、正直よくわからない。今までほとんど触れてこなかった。ブラックユーモアのセンスを持った友人と会話する機会などない(ただの悪口はブラックユーモアではないぞ)し、本屋大賞を獲ったという話も聞かない。阿刀田高と星新一のいくつかと、藤子不二雄の短編集くらいだろうか。

私と同じように<奇妙な味>を持て余す読者には、特に「プールでひと泳ぎ」を薦めたい。

私の目から見て、おそらく多くの読者から見て「こうなるはずだ!」という展開があった。

あの老婆は賭けを嗜むべきだったのだ!

だが、そうはならなかった。そこに話の妙がある。どんでん返しでも意外な結末でもない。おそらくこれが<奇妙な味>なのだろうと私は理解した。


ここから先の文章には「プールでひと泳ぎ」のネタバレを含むので未読の方は注意してほしい。

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