見出し画像

最近あった「怖かったこと」

リモート生活を送っている横浜の実家から、歩いて15分ほどの場所に天井が高く心地よいカフェがあり、週2回程度通っている。途中、竹林の隣の急な坂道を下り、緑の茂る川沿いを抜けて車道に出る。横浜、と呼ぶのがはばかられるほど、鬱蒼とした緑が生い茂りせせらぎが聞こえる道だ。集中力が途切れがちになる昼過ぎに出かけ、暗くならないうちに戻ることが多いのことが多いのだが、ある時すっかり日が暮れるまで過ごしていた。

何も考えずいつもと同じ道で家に帰ると、川沿いの道が吸い込まれるように暗かった。街灯の灯る車道側に近いところを選んで、少し息を詰めて通り抜けた。橋を渡ると、民家が続く道に入りほっとした。が。私は忘れていた、その後の道にあるものを。橋を渡った先は盆地から上を見上げるような形状になっていて、周りには大きな木々の奥に佇むお屋敷や、畑、こんもりとした緑、小さなアパートが一軒ある。日中のお気に入りの通り道が、夜は全く違って見える。

ざああと風が通り抜け、真っ黒で陰影のない木々がうごめく。アパートには窓明りが灯っているものの、人の気配がない。そしてその先の、急な坂の竹林。私はこの坂を、何事もなく登りきれるのだろうか。お腹の奥がきゅうとし、足がぞわりとした。進みたくない。でも、今来た道を引き返したくもない。スマホを手にして拳を作り、早足でのぼった。

のぼり切れた。遠くからタクシーがやってきて通り過ぎた。