本当はおしゃれな服が着たかった
ある日、待ち合わせのためにGUへ行くと、レディース服を抱えた恋人が立っていた。はて?という顔をする私をよそに、「はいまずこれ」と指示されるがままに試着会が始まった。どうやら、代わり映えのない服ばかりである私の、スタイリストを買って出てくれるらしい。しかしながら恥ずかしい。鏡に映った小さなぽっちゃりを、2人で見つめるのが恥ずかしい。
20代後半になった私は、同じ服ばかり着るジョブズスタイルが定着した。夏は白Tシャツに半ズボン(みんな少年と呼んだ)。冬は黒Vネックセーターにチノパン(ジョブズのようなタートルネックは似合わなかった)。選ばないことを選んだことが誇らしく、また、面倒なことから解放されたのが嬉しくもあった。
それでも、お洒落をしたい気持ちは消えていなかった。街中で、SNSで、スタイリッシュな誰かを見かける度に、いいなぁと羨ましく思っている自分に気付いていた。同時に、私は可愛くないし、スタイルもよくないし、お金の余裕もないし、だからこれでいいの、と言い訳をしていたのだけれど。
翌日、大好きな人が選んでくれた服を着て、弾むように家を出た。ぎこちなく揺れるスカートが、私を少し不安にさせた。