靴の思い出【昔のこと】
小学生の頃、ミズノ社のRUNBIRD(ランバード)というスニーカーが流行ったことがあります。ダウンタウンとウッチャンナンチャンが売出し中だった当時、両者が集う「夢で逢えたら」を観ていたら何度となくCMが流れていました。そのうちに同級生でもチラホラと履きだす子が現れ始めた。気が付けば体育の時間の足元はランバードだらけになっていたと記憶しています。
流行り物には疎く、子供には贅沢な物は与えない方針だった我が両親。私の足元といえば母が買ってきた何の変哲もない白の運動靴が少し履き汚れた状態で馴染んでいました。皆の踵に輝く「RUNBIRD」の文字を眺めながら、ふと自分の踵も確認してみた私。全体的に白で見えづらかったのですが型押しで何らかの模様と文字が書いてある。よくよく見てみると鳥をかたどった模様と「SUNBIRD」の文字が記されてありました。
”えっ? 僕の靴ってランバードじゃないけどサンバードなの⁉”
子供の頃からお喋りな私は、すぐにそのことを隣のランバードに話す。私の踵を確認して笑うランバード。そして次のランバードにそれを伝える。瞬く間にランバード達の中で私のサンバードが知れ渡りました。
時は秋の運動会前、体育の時間といえばリレーや徒競走の練習ばかり。有難いことに割りと脚の速かった私は白いサンバードで駆け回りました。色とりどりのランバードを蹴散らして追い抜いていくサンバード。私の脚力など無視して「サンバードが速い!」と見ているランバード達が笑い転げている。
そして走り終えた私の元に仲良しランバードが近づいて声をかけた。
「その靴、よく見せてよ。」
マジックテープにてすぐ脱げるサンバードを渡すと手に取った友が一言。
「軽っ!」
作りがしっかりしているランバードに対して、やや皮が薄めのサンバード。母がスーパーの衣料売場で買ったからでしょうか。とにかく薄くて軽い。薄いからこそ軽い…
タイミングよく先生が50m走を測ると言い出したので、軽いサンバードを貸して欲しいとランバード達が集まり始めた。一人目がランバードを脱いでサンバードで走り出す。まさかの自己新記録。二人目もサンバードで自己新。次々と記録が出て大盛り上がりのランバードでは走らないランバード達。脱ぎ捨てられたランバードを横目にサンバードだけが何度も何度も駆け抜けていきました。
とにかくランバードの中で一躍脚光を浴びたその日のサンバード。母が何気なくスーパーで拾い買いした白靴は、あの日あの時、確かに太陽の下で羽ばたいていました。でも、ちゃんと検索すると実在する雀の一種らしい… 速そうではないですが軽そうではあります。
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