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外食後は気をつけましょう【昔のこと】

私は他人の長所よりも短所に目が行ってしまいます。特に本人が隠そうとして隠し切れていない短所や無自覚な短所、そういうものばかりが目に飛び込んで来る。私自身を振り返っても嬉しいことを見つけるのが下手で、嫌なことばかりに敏感で困ります。私の良くない性格というか悪い性質だと思っており、それが証明された出来事があります。

15年ほど前になるかと思いますが、知人の誘いでとある技術講習に参加しました。マニュアル在りきの似顔絵作成というかアバターのようなものを作る講習。専用ソフトがあり、目・鼻・口・眉毛・輪郭に髪型と各パーツに対して形状が多種類・色も多種類。サイズや太さは変更可能で実写真を下敷きにしてそれらを当てはめていく。要領的には正月遊びの福笑いを非常に細分化したような作成方法でした。

一通りの操作手順を習った後で、三人のサンプル写真を基にそれぞれの似顔絵を作ってみてくださいと言う。作成能力の適正を検査するテストとのこと。結果は知人が仮合格で、私は不合格。「そうなの?」とやや不服な私。知人よりは似ているという自信があったのですが、自己評価が甘いのかもしれないと講師の寸評を待ちます。

「この二点を改善してもらえると上達する見込みは十分にありますね。後は慣れですので、やる気があれば再挑戦してみてください!」
講師が知人にアドバイス。そして私の寸評番になり顔色が曇りだした。
「あなたはですね、何といったらいいか、全体的に良くないんですよ。似てなくはないんです。でも似てるとは言いたくなくて、そういう似せ方はして欲しくないというか、全部嫌な線ばかり拾っているんです。正直、作成以前の問題で喜ばれる似顔絵ではないですね。」

ショックを受けました。批評は仕方がない。というよりも嫌になるくらいにストンと胸に落ちてきた。そして何よりも苦しかったのは、私が素直な気持ちで作っており本気で良い似顔絵が出来たと思っていたことです。確かにお手本の似顔絵を見ると、少し目が大きかったり、口が小さかったり、鼻がツンっと形良く作られています。

”こういう風には作れないな…”

実物からどこを変えればよいのかが全く判りません。自分の目が捉えている線にしか当てはめることが出来ない。でもそれが全て嫌な線なのだと言われてしまった。身に覚えがあるだけに堪えました。そういう目なんだと、私の目は決して良いものではない…

「君の似顔絵の方が、僕のよりも似てると思ったけどなぁ。」

帰り際、知人が私を気遣ってくれる。ニカッと笑い掛けてくる彼の白い歯に、ゴマが挟まっていた。白ゴマなのに、前歯じゃないのに、ハッキリくっきりと私の目が捉えて離さない…

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