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いつだって最後の「行ってきます」になり得るので

朝、出社前の夫に怒ってしまった。


風邪気味で体調万全じゃない私。
大した風邪じゃないので日中1人で息子のお世話はできるけど、メンタルはいつもより弱り気味。
夫は「体調どう?」と気にしてはくれているけど、「1人で大丈夫?」とか「テレワークにした方が良い?」とか、そういった類の心遣いはなく。当たり前のように私を残して出社していく。
それがなんとなく不満だった。この国で育児に関して頼れるのは夫しかいないので。


そんな中、ある日の出社前に夫が「明日は晩ごはんいらない」、と。
仕事で出会った他社の人と、急遽食事をすることになったらしい。
食事に行くのは別にいいけど、私が風邪気味なのに勝手に夜の予定を入れられたことに、無性に腹が立った。前日は息子の寝かしつけの時に咳込んでしまって辛くて、夫に早く帰ってきてほしかったから尚更だった。

「なんで決める前に一言聞いてくれないの。昨夜はけっこうしんどかったんだけど。○○くん(夫)は頼りにならない」

しきりに謝る夫。でも、私はプンプンしながら不機嫌モードで見送った。


その日は無事に終わり、20時頃に夫から「帰ります」のラインが来た。
ところが、40分経っても帰ってこない。いつもは20分ほどで帰ってくるのに。

急に不安でいっぱいになった。
どこかで事故に遭ったんだろうか。それとも事件に巻き込まれた?
治安が良い地域とは言え、ここは銃社会のアメリカ。いつ何が起こるかわからない。
みんな車をとばしているので、交通事故も起こりやすい。
何かあったんだろうか。何で帰ってこないの。


そわそわしながら窓から外の通りを見つめていたら、玄関のドアが開いて「ただいま」と夫が帰ってきた。
ガソリンを入れ忘れていたことに気づき、ガソリンスタンドに寄ってきたらしい。
よかった。無事で本当によかった。ホッとして思わず涙が出た。


今朝、私は夫に「頼りにならない」なんてひどい言葉を投げてしまった。
もし、家を出た後に夫が事故に遭い、これが夫にかけた最後の言葉になってしまっていたら。
私は一生自分を責めて激しく後悔していただろう。


人はいつ居なくなるかわからない。
毎日家族が帰ってくることを当たり前のように感じているけど、出先で事故に遭ったり突然倒れたりすることだってあり得るわけで。どんな会話も最後の会話になる可能性がある。


夫婦だからイライラすることもあるし、喧嘩する日もあるかもしれない。
でも、どんなに相手に対して怒りを感じても、「行ってきます」「行ってらっしゃい」の時だけは気持ちよく挨拶するようにしよう。
そんなことを強く感じた日だった。