タイでカシコン銀行口座を開設した話:タイの銀行員さんは意外と適当
タイに住んでいると、銀行口座は必須アイテムだ。タイは日本よりもデジタル化が進んでいる。銀行口座を持っていれば、99%の支払いをデジタルで完結できるのだ。今回はタイで銀行口座を作成した手順をふりかえりたい。
書類の用意
無事に語学学生ビザをゲットした私は、真っ先に銀行口座の開設を始めた。銀行口座は、タイで欠かせないアイテムだ。というのもタイの銀行口座は、持っていると超便利。銀行口座を開設すると「スキャン」と呼ばれるQRコード決済が利用できる。QRコード決済は、日本ではあまり見かけないが、タイではいたる所で利用可能。スーパーやレストラン、道端の屋台までもがQRコード決済で支払いを行える。
一昔前は観光ビザでも口座を開設できた、なんて話も聞く。しかし現在は、何かしらの正規ビザがないと開設はできない。ちなみに私は語学学校で学ぶEDビザ(私立の教育機関)を取得した。ただ私立の教育機関と言っても、実際は週に1・2時間だけレッスンがある超ゆるい学校だ。よって本当にこのビザで口座が開設できるのか心配な気持ちでいた。
語学学校のお兄さんに銀行口座を開設したい旨を伝えると、後日書類を用意してくれた。5枚くらいはあったと思う。ひたすらタイ文字で書かれていたため、何が書かれていたかは不明だ。おそらく在籍証明と、学校の説明等であろう。「この書類とパスポートを持って好きなカシコンバンクに行ってきてね。前に口座を開いた人は、この書類だけで開けたはずだから。」とのことだった。
いざ、MAYAモール支店へ
向かった先は、ショッピングモールのMAYA。Kasikorn Bank(カシコン銀行)の支店が入っている。ちなみにカシコン銀行は、緑で「K」と書かれたロゴが目印の銀行だ。北の農業地帯に強い銀行らしく、チェンマイには至る所にATMがある。アプリも非常に使いやすく、チェンマイ在住者にはおすすめの銀行だ。
いざ、受付の人に口座開設希望の旨を伝える。しかし時刻は16時頃だった。おばさんはすぐに時計を確認した。嫌な予感がした。仕事の関係で、どう頑張ってもこの時間にしか来れないのだが…。そのおばさんは、ジャケットを着ているおじさんに向かって何か話した。そして私は、そのおじさんの前の席へと座ることになった。おじさんは私が持ってきた書類を眺めた。そしていきなり、誰かに電話し始めた。
後で知ったのだが、おじさんは私の語学学校に電話していたらしい。そして私に「ココ、デキナイ。ホカノカシコン。」のようにカタコト英語をぶつけてきた。時計を凝視するおばさんといい、片言英語のおじさんといい、ここは良くも悪くもタイだ…。私はここに歓迎されていないようだった。こうして私はカシコン銀行MAYA支店を後にした。
翌日、語学学校で追加書類をゲット
語学学校のお兄さんに、「よくわからないけど口座作れなかった。助けて。」とメッセージを送った。すると「ちょうど今電話がかかってきたところだったよ。明日別の書類を渡すから、それを持って別の支店に行ってね。」とのことだった。正直何が問題なのかは、わからない。私には、あのおじさんが面倒なことを避けているだけに思えるのだが…。だって語学学校は5枚くらいもよくわからない書類を用意してくれた。前に口座を作った人はこれで作れたと言っていたのに…。いったい他に何が必要だというのだ。
翌日、語学学校へ書類を取りに行った。お兄さんは「タイ人は、とにかく紙が好きなんだよ…。」となんとも日本人っぽい溜息をもらしていた。そういえばビザを入手するためにお兄さんが用意した書類は、厚さ5センチくらいはある紙束であった。また「前のヨーロッパ人はこの書類で大丈夫だったんだけどね。別の支店に行ったのかもしれない。」と、何ともタイらしい回答をくれた。デジタル化が進んでいるタイ。しかし日本並みに紙信仰が強く、お古なシステムが目立つ。タイの意外な一面を見た気がした。
Lotusモール支店へ
気を取り直して、今度は幹線道路沿いにある大型スーパー「Lotus」に入っているカシコン銀行へ行ってみた。ここは若いお姉さんたちと、ジャケットを着た若めのおじさんという顔ぶれ。とても良い雰囲気の場所だった。順番を待ち、書類を見せた。すると「印のついている箇所を記入してくださーい。」といった風に、流暢な英語で案内してくれた。
すべてがスムーズにいった。QRコード決済に必要なスマホアプリも、お姉さんが初期設定を行ってくれた。そして言語設定を英語に変更しくれて無事完了。20分ほどで開設ができたと思う。昨日の悪い思い出は、嘘のようだった。そして同じ銀行でも、支店によってこんなに違うものかと驚いた。
タイ人は、気分によって発言が変わることがある。夕方帰ろうとしている時間帯に話しかけると、帰りたい一心で嘘を言われることだってある。また、存在しているものを「そんなものここにはない。」と言われることだってある。良くも悪くもそれがタイの文化らしい。そんな時はいらいらするだろうが、冷静になる必要がある。近くにいる別の人に同じことを聞いてみたり、翌日もう一回訪れてみると良い。彼らの回答は、変わるのが普通なのだ。だって立派な銀行員だって適当なのだから…。
今回の事例に至っては、追加書類が本当に必要だったのかはわからない。私の見立てでは、おじさんの気まぐれだったのではないかと思う。しかし後日別の支店へ挑戦したことで、突破口を編み出せた。タイでの生活は、日本とは少し違う。良くも悪くも適当な文化に、慣れるまでは大変かもしれない。しかし笑って済ませるようになる時が、いつかきっとくるはずだ。