ビリー・プレストン参加の名曲:Fastball「You're An Ocean」
旧ブログでやろうとしてあまりやれてなかったことの1つが、自分の好きだった90年代名曲について書き残しておくことだった。ぼんやりしているうちに、90年代はもう四半世紀以上前のことになってしまった。時間の流れは信じがたいほど早い。忘却の彼方に追いやられるには惜しい名曲を自分はたくさん覚えている。ニルヴァーナだとかレッチリだとかウィーザーあたりなら、いくらでも語られて確実に後世に残るだろうから、気にする必要はない。もっと、放っておいたら完全に忘れ去られるであろう、リアルタイムで出会わない限りなかなか接する機会もなさそうな曲について、少しでも良さが伝わる文章をネットの片隅に遺しておきたいのである。
いつか取り上げたいと思っていた曲の1つが、ファストボールの「You're An Ocean」である。ファストボール、ご存知だろうか。1998年に「The Way」という曲が世界的にヒットして、日本のラジオでもかかっていた。自分は運転中にこの曲が流れたのを聴いて一発で気に入ってしまい、この曲を収録したアルバム「All The Pain Money Can Buy」のCDをすぐさま手に入れたのである。本国アメリカでは同作収録の「Out Of My Head」の方がよく売れたようで、Billboard Hot 100で20位まで上がったとのこと。
ファストボールは1992年に活動を開始し、現在も根強く活動継続中のようだが、試しにnoteの検索窓に「fastball」「ファストボール」と入れてみても、結果の99.9%は野球関連の記事で埋め尽くされ、わずかに2つぐらいの記事で短く触れられている程度だった。案の定ほとんど後世に残っていない。やはり、書かねばならない。
本題の「You're An Ocean」は、2000年に発表された次作アルバム「The Harsh Light Of Day」に収録されている。イントロから弾けるようなドライブ感抜群のピアノに導かれて軽快に進んでいく、同作の中でも出色の出来。
自分はかなり後になるまで気が付かなかったのだけど、そのピアノを弾いているミュージシャンは、ほかでもないビリー・プレストン。知ったときはびっくりした。60年代前半からレイ・チャールズ、サム・クックの伴奏で存在感を発揮し、末期ビートルズをゲット・バック・セッションの泥沼から救い出し、ストーンズとも深く関わり、ソロで数々のヒットを飛ばした、レジェンド中のレジェンド。日本語版Wikipediaを見ると、ファストボールについての記載はないのだけど、2000年代には若手バンドを含む多くのセッションワークをこなしたそうなので(2006年没)、その中の1つだったのだろう。本当にいかにもビリー・プレストンらしい、素晴らしい演奏。この曲もシングルカットされたものの、1998年ほどの成功は収められず、以後は表だったヒットが出なくなってしまう。しかしこれは、聴いていて心が躍り出さずにはいられない、紛れもない名曲なのである。
同作の中では「Wind Me Up」も大好き。このバンド、メロディの良さをストレートにズバッと押し出してくる曲作りがとても好みだし、ヴォーカルの声が良い。前述のように、ヒットを飛ばしていた時期からは四半世紀が過ぎてしまい、世の中からはほとんど忘れ去られたバンドだろうけど、自分はまだまだ目の黒いうちは忘れない。
……考えてみれば、90年代名曲として書き始めたけど、「The Harsh Light Of Day」は2000年リリースだったなあ。まあいいや。2000年も90年代のうちということにしておこう。
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